2024年03月15日

コロナ禍で運動習慣は定着したか?~運動実施・非実施の差が拡大

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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3――成人でも運動実施・非実施が二極化している

以上のとおり、コロナ禍前後で運動実施状況をみた結果、運動をしている人の割合は、コロナ禍で一時的に歯止めがかかったものの、2018年から見ると、2022年に運動実施者の割合は低下していた。その一方で、週5日以上(年251日以上)運動を実施している割合は2020年以降で高くなっており、各年齢群で週5日ペースで運動を実施する人と、運動をしない人の二極化が起きていると考えられた。

子どもについては、従前より、運動時間が週60分(1日8分)未満の子と、週420分(1日60分)以上の子がいて、運動時間や体力が二極化していることが指摘されてきた6。コロナ禍においては、感染拡大抑止のために活動が制限され、体力評価が低い児童や運動が苦手な児童ほど外遊び時間が減っていたことが確認された。体力や運動について全体的な低下とともに二極化傾向が問題視されており、それをコロナ禍が強く助長した可能性が指摘されている。今回紹介とおり、成人においても二極化が起きている可能性があった。

成人においても、運動の好き・嫌いによる影響はあると考えられるが、それ以外に年齢や仕事環境もかかわっている可能性がある。男女とも就労者で「増えた」が高かった。男性就労者は「仕事が忙しくなくなったから」が、女性就労者は「コロナウィルス感染症対策によるスポーツの必要性に対する意識の変化」が高く、2020年は在宅勤務の推奨が行われた結果、通勤時間の削減や、自分で時間をコントロールできるようになり、運動の時間を確保するようになったことが考えられる。また、相対的にコロナ重症化リスクが高いとされる高齢層でコロナ禍を理由に運動が減った人もいた。

コロナ禍による日常生活の変化にともない、比較的若い勤め人等では、運動習慣は定着しつつあると思われる。今回の調査でみたとおり、スポーツの必要性に対する意識の変化や、仕事環境の変化による影響だったと考えられることから、意識の変化や仕事環境の変化によって仕事に忙しい世代でも運動習慣をつけることが可能であることが確認できたとも言える。しかし、全体でみれば、運動習慣をもつ人の割合は2019年より低下している。さらに、コロナ禍を理由に運動を減らしてしまった高齢者がいる。コロナ禍で運動を増やせたのが、自分でコントロールできる時間がある人や体力面で恵まれている人だけだったとすれば、国全体の運動政策としては課題が残るだろう。
 
6 例えば、スポーツ庁Web広報マガジン DEPORTARE(2018年3月27日)「~子供の運動習慣における課題とは~ 「二極化」の改善に取組む「体育」の優良事例をレポート!(https://sports.go.jp/special/case/childrens-habit-of-physical-activity.html、2024年3月8日アクセス)」等
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療、生保市場調査

経歴
  • 【職歴】
     2003年 ニッセイ基礎研究所入社

(2024年03月15日「基礎研レポート」)

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