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- QE速報:10-12月期の実質GDPは前期比▲0.1%(年率▲0.4%)-消費、設備の低迷が続き、2四半期連続のマイナス成長
2024年02月15日
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● 10-12月期は前期比年率▲0.4%と2四半期連続のマイナス成長
本日(2/15)発表された2023年10-12月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比▲0.1%(前期比年率▲0.4%)と2四半期連続のマイナス成長となった(当研究所予測1月31日:前期比0.2%、年率0.9%)。
民間消費(前期比▲0.2%)、住宅投資(同▲1.0%)、設備投資(同▲0.1%)の国内民間需要が揃って減少したことがマイナス成長の主因である。サービス輸出の高い伸びを主因として財貨・サービスの輸出が前期比2.6%となり、財貨・サービスの輸入(同1.7%)を上回ったことから、外需が前期比・寄与度0.2%(年率0.7%)と成長率を押し上げたが、内需の落ち込みをカバーするには至らなかった。
名目GDPは前期比0.3%(前期比年率1.2%)と2四半期ぶりの増加となり、実質の伸びを上回った。GDPデフレーターは前期比0.4%(7-9月期:同0.8%)、前年比3.8%(7-9月期:同5.2%)となった。財価格の上昇に加え、人件費の増加を背景にサービス価格も上昇していることから、国内需要デフレーターが前期比0.4%(7-9月期:同0.4%)と12四半期連続で上昇した。
民間消費(前期比▲0.2%)、住宅投資(同▲1.0%)、設備投資(同▲0.1%)の国内民間需要が揃って減少したことがマイナス成長の主因である。サービス輸出の高い伸びを主因として財貨・サービスの輸出が前期比2.6%となり、財貨・サービスの輸入(同1.7%)を上回ったことから、外需が前期比・寄与度0.2%(年率0.7%)と成長率を押し上げたが、内需の落ち込みをカバーするには至らなかった。
名目GDPは前期比0.3%(前期比年率1.2%)と2四半期ぶりの増加となり、実質の伸びを上回った。GDPデフレーターは前期比0.4%(7-9月期:同0.8%)、前年比3.8%(7-9月期:同5.2%)となった。財価格の上昇に加え、人件費の増加を背景にサービス価格も上昇していることから、国内需要デフレーターが前期比0.4%(7-9月期:同0.4%)と12四半期連続で上昇した。
2023年10-12月期の1次速報と同時に、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから過去の成長率が遡及改定された。実質GDP成長率は、2023年7-9月期が前期比年率▲2.9%から同▲3.3%へ、2023年1-3月期が前期比年率5.0%から同4.4%へ下方修正される一方、2023年4-6月期は前期比年率3.6%から同4.0%へと上方修正された。

この結果、2023年(暦年)の実質GDPは前年比1.9%(2022年は1.0%)、名目GDPは前年比5.7%(2022年は1.3%)といずれも3年連続のプラス成長となった。名目GDP成長率は1991年(6.5%)1以来32年ぶりの高さとなった。
1 「2015年基準支出側GDP系列簡易遡及」による
<需要項目別の動き>
民間消費は前期比▲0.2%と3四半期連続の減少となった。新型コロナウイルス感染症は2023年5月に感染症法上の位置付けが5類に変更され、社会経済活動の正常化が進んでいる。しかし、民間消費は2023年度入り後低迷が続き、いわゆる「リベンジ消費」は顕在化していない。物価高の悪影響が続いていることに加え、コロナ禍で高水準となっていた家計貯蓄率がほぼゼロ%まで低下し(2023年1-3月期:0.3%、4-6月期:0.1%、7-9月期:▲0.2%)、貯蓄率の引き下げによる押し上げ効果が一巡したことも消費の停滞につながっている。
実質家計消費の内訳を形態別にみると、自動車、家電などの耐久財は前期比6.4%と増加したが、交通、外食、旅行、宿泊などのサービスが前期比▲0.6%と7四半期ぶりに減少したほか、被服・履物、家具などの半耐久財(同▲1.7%)食料品などの非耐久財(同▲0.3%)も減少した。
雇用者報酬は、名目・前年比1.4%となり、7-9月期の同1.5%から伸びが鈍化した。7-9月期の一人当たり名目賃金の伸びは前年比1.0%と、春闘賃上げ率が30年ぶりの高さとなったことを考慮すれば、低い伸びにとどまっている。相対的に賃金水準の低いパートタイム労働者比率の上昇が一人当たり賃金の伸びを押し下げている。また、実質雇用者報酬は、家計消費デフレーターの高い伸びが続いたことから、前年比▲1.9%(7-9月期:同▲2.3%)と9四半期連続で減少した。
住宅投資は前期比▲1.0%と2四半期連続で減少した。新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化した2020年度入り後に80万戸程度まで減少した後、80万戸台後半まで持ち直したが、住宅価格上昇の影響などから弱い動きとなり、足もとでは80万戸前後まで水準を切り下げている。
設備投資は前期比▲0.1%と3四半期連続で減少した。日銀短観(2023年12月調査)における2023年度の設備投資計画(全規模・全産業、含むソフトウェア・研究開発投資額、除く土地投資額)は前年度比12.6%の高い伸びとなっているが、建設コストの高騰や人手不足の深刻化などから、投資計画の先送りや工事進捗の遅れが生じている可能性が考えられる。
公的固定資本形成は、国土強靭化関連工事や補正予算の執行一巡などから、前期比▲0.7%と2四半期連続で減少した。
外需寄与度は前期比0.2%(前期比年率0.7%)と2四半期ぶりのプラスとなった。輸出が前期比2.6%の増加となり、輸入の伸び(同1.7%)を上回った。EU向け、アジア向けを中心に財輸出は前期比0.2%と低迷したが、インバウンド需要の好調や知的財産権等使用料の大幅増加から、サービス輸出が同11.3%の高い伸びとなったことが財貨・サービスの輸出を押し上げた。
民間消費は前期比▲0.2%と3四半期連続の減少となった。新型コロナウイルス感染症は2023年5月に感染症法上の位置付けが5類に変更され、社会経済活動の正常化が進んでいる。しかし、民間消費は2023年度入り後低迷が続き、いわゆる「リベンジ消費」は顕在化していない。物価高の悪影響が続いていることに加え、コロナ禍で高水準となっていた家計貯蓄率がほぼゼロ%まで低下し(2023年1-3月期:0.3%、4-6月期:0.1%、7-9月期:▲0.2%)、貯蓄率の引き下げによる押し上げ効果が一巡したことも消費の停滞につながっている。
実質家計消費の内訳を形態別にみると、自動車、家電などの耐久財は前期比6.4%と増加したが、交通、外食、旅行、宿泊などのサービスが前期比▲0.6%と7四半期ぶりに減少したほか、被服・履物、家具などの半耐久財(同▲1.7%)食料品などの非耐久財(同▲0.3%)も減少した。
雇用者報酬は、名目・前年比1.4%となり、7-9月期の同1.5%から伸びが鈍化した。7-9月期の一人当たり名目賃金の伸びは前年比1.0%と、春闘賃上げ率が30年ぶりの高さとなったことを考慮すれば、低い伸びにとどまっている。相対的に賃金水準の低いパートタイム労働者比率の上昇が一人当たり賃金の伸びを押し下げている。また、実質雇用者報酬は、家計消費デフレーターの高い伸びが続いたことから、前年比▲1.9%(7-9月期:同▲2.3%)と9四半期連続で減少した。
住宅投資は前期比▲1.0%と2四半期連続で減少した。新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化した2020年度入り後に80万戸程度まで減少した後、80万戸台後半まで持ち直したが、住宅価格上昇の影響などから弱い動きとなり、足もとでは80万戸前後まで水準を切り下げている。
設備投資は前期比▲0.1%と3四半期連続で減少した。日銀短観(2023年12月調査)における2023年度の設備投資計画(全規模・全産業、含むソフトウェア・研究開発投資額、除く土地投資額)は前年度比12.6%の高い伸びとなっているが、建設コストの高騰や人手不足の深刻化などから、投資計画の先送りや工事進捗の遅れが生じている可能性が考えられる。
公的固定資本形成は、国土強靭化関連工事や補正予算の執行一巡などから、前期比▲0.7%と2四半期連続で減少した。
外需寄与度は前期比0.2%(前期比年率0.7%)と2四半期ぶりのプラスとなった。輸出が前期比2.6%の増加となり、輸入の伸び(同1.7%)を上回った。EU向け、アジア向けを中心に財輸出は前期比0.2%と低迷したが、インバウンド需要の好調や知的財産権等使用料の大幅増加から、サービス輸出が同11.3%の高い伸びとなったことが財貨・サービスの輸出を押し上げた。
(2024年1-3月期はほぼゼロ成長を予想)
2023年10-12月期は2四半期連続のマイナス成長となった。新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い社会経済活動の正常化が進む中で、国内需要の柱である民間消費、設備投資が2023年4-6月期から3四半期連続で減少していることは深刻である。
2024年1-3月期は、サービス輸出の反動減などから、財貨・サービスの輸出が低迷すること、民間消費、設備投資などの国内民間需要も低い伸びにとどまることから、現時点ではほぼゼロ成長になると予想している。
2023年10-12月期は2四半期連続のマイナス成長となった。新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い社会経済活動の正常化が進む中で、国内需要の柱である民間消費、設備投資が2023年4-6月期から3四半期連続で減少していることは深刻である。
2024年1-3月期は、サービス輸出の反動減などから、財貨・サービスの輸出が低迷すること、民間消費、設備投資などの国内民間需要も低い伸びにとどまることから、現時点ではほぼゼロ成長になると予想している。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年02月15日「Weekly エコノミスト・レター」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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