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- 英国金融政策(2月MPC公表)-4会合連続で政策金利据え置きを決定
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1.結果の概要:4会合連続で政策金利据え置きを決定
【金融政策決定内容】
・政策金利を5.25%で据え置き(6対2対1で2名は0.25%ポイント引き上げ、1名は0.25%の引き下げを支持)
【議事要旨等(趣旨)】
・成長率見通しは23年0.25%、24年0.25%、25年0.75%、26年1.00%(概ね上方修正)
・CPI上昇率見通しは、23年4.25%、24年2.75%、25年2.50%、26年2.00%(10-12月期の前年比、短期的には下方修正、中期的には上方修正)
・インフレ見通しに対するリスクは、短期的には地政学的な要因により、予測期間前半については上方に傾いているが、国内物価と賃金の上昇圧力はより均衡している
・委員会は政策金利をどの程度の期間、現在の水準で維持するかの検討を続ける
2.金融政策の評価:ハト派色は強まるが、市場の利下げ期待は行き過ぎであることを示唆
声明文も、インフレリスクに関して、短期的な地政学的リスクを踏まえた物価の上振れを警戒しつつも、国内の価格と賃金の上昇圧力という観点ではリスク評価をより均衡しているとの判断に修正した(これまでは上方に傾いているとの判断だった)。また、「仮により永続的なインフレ圧力があるのであれば、より引き締め的な金融政策が必要となる」との表現が削除され、「委員会は政策金利をどの程度の期間、現在の水準で維持するかの検討を続ける」との表現となり、利上げと利下げの双方を意識した表現に変更された。
今回は会合に合わせて金融政策報告書が公表され、成長率見通しとインフレ見通しが更新された。インフレ見通しについては、短期的には足もとのインフレ率の実績データが11月より下振れ、また先々のエネルギー価格の低下が予想されることから、24年4-6月期に一時的に2%目標を下回る見通しとなっているが、春にインフレ率が目標に戻れば仕事が完了する訳でないと補足されている。中期的には、見通しの前提である市場観測の政策金利経路が11月時点よりも大幅に低下していることから、インフレ圧力が再び強まるとされている。つまり、市場の利下げ観測が楽観的であることが示唆された形となっている。
総じて言えば、これまでのタカ派姿勢から、利下げが視野に入った姿勢に修正されてはいるが、市場の利下げ期待はやや行き過ぎであるとし、データを慎重に確認していくとの慎重な見方が強調された内容だったと言える。
3.金融政策の方針
- MPCは、金融政策を2%のインフレ目標として設定し、持続的な経済成長と雇用を支援する
- 委員会は政策金利(バンクレート)を据え置き、5.25%とする(6対2対1で決定1)、2名は0.25%ポイント引き上げ5.50%とすることを主張した、1名は0.25%ポイント引き下げ5.00%とすることを主張した
- 委員会は、2月の金融政策報告書の一部として経済活動とインフレの見通しを更新した
- これらは、見通し期間末に政策金利が5.25%から3.25%まで低下するとした、11月の報告書より平均して1%ポイント低い市場観測の政策金利経路を前提としている
- 前回のMPC以降、世界GDP成長率は引き続き停滞しているが、米国の経済活動はさらに強固になった
- インフレ圧力はユーロ圏と米国で弱まった
- 卸売エネルギー価格は著しく減少した
- 中東での出来事や紅海の輸送に関する混乱といった重大なリスクが引き続き残っている
- 足もとの弱さの後、GDP成長率は、過去の政策金利の上昇により成長率鈍化の影響が軽減することを反映して、予測期間にわたって次第に上向くと見られる
- 企業景況感調査は、短期的な活動の改善見通しと整合的である
- 労働市場は引き続き緩和を続けたが、過去の標準よりもひっ迫している
- 2月報告書の見通しでは、需要の相対的な弱さが継続するため、過去の標準よりも供給伸び率は停滞するものの、見通しの前半は経済の弛み(slack)が見られるとしている
- 失業率は将来にかけて、いくらか上昇すると見られる
- CPI上昇率の前年比は12月に4.0%と11月報告書の見通しを下回った
- この下振れは燃料価格、コア財、コアサービスと広範囲にわたる
- 賃金上昇率は依然として高いものの、様々な指標で軟化しており、さらに数四半期も低下が続くと見られる
- CPIインフレ率は24年4-6月期には一時的に2%目標を下回ると見られるが、7-9月期、10-12月期にはもう一度上昇する見込みである
- この下半期のインフレ経路は、前年比のエネルギー価格上昇率のマイナス寄与が縮小するという直接的な影響による
- MPCの最新の市場観測政策金利を前提にした最も起こりそうな、最頻値見通しではCPIインフレ率は年末にかけ2.75%付近となる
- そして、予測期間の残りもおおよそ目標を上回り続ける
- これは、国内インフレ圧力が、経済の弛みが増加するにもかかわらず、残るためである
- CPIインフレ率は2年後に2.3%、3年後に1.9%となると予想される。
- 委員会は最頻値のCPIインフレ率が、地政学的な要因により、予測期間前半については、上方に傾いていると判断している
- 国内の価格と賃金の上昇圧力は、これまでの見通しと異なり、より均衡していると判断し、2年および3年の期間においては、最頻値見通しと平均見通しに違いはない
- 政策金利を5.25%で据え置くとする代替の前提では、CPIインフレ率は、政策金利が低下するとした市場観測の経路を前提とした委員会の最頻値見通しよりも、著しく低くなり、25年10-12月期以降は2%目標を下回る
- MPCの責務が、英国の金融政策枠組みにおける物価安定の優位(primacy)を反映して、常にインフレ目標の達成であることは明らかである
- この枠組みでは、ショックや混乱の結果、物価が目標から乖離する場合があることを認識する
- 金融政策により、CPIインフレ率が中期的に2%目標に安定して戻るようにする
- 今回の会合で、委員会は政策金利を5.25%に維持することを決めた
- ヘッドラインのCPIインフレ率は相対的には急低下する
- 制限的な金融政策姿勢は実体経済の重しとなり、労働市場を緩和させている
- 委員会の2月見通しでは、インフレのリスクをより均衡していると見ている
- サービスインフレと賃金上昇は予想よりも幾分大きく低下しているが、インフレの持続性に関する主要な指標は高止まりしたままである
- その結果、金融政策は、MPCの責務であるインフレ率を中期的な2%目標に安定的に戻すため、引き続き十分な期間(sufficiently long)、制限的にする必要がある
- 委員会は昨年秋以降、インフレ率が2%目標を超えて定着するリスクが消失するまで、十分な期間にわたり(for an extended period of time)、制限的にされる必要があると判断してきた
- (「十分に制限的」から、「十分に」を削除(sufficiently restrictiveからsufficientlyを削除))
- MPCは引き続き、2%目標に安定的に戻すために金融政策姿勢を経済状況に応じて調整する用意がある
- そのため、引き続き、基調的な労働市場のひっ迫感を示す一連の指標、賃金上昇率、サービス物価インフレの動向といった、経済全体におけるインフレ圧力の持続性と回復力について、引き続き注視する
- 金融政策は、委員会の責務にもとづき、インフレ率を中期的な2%目標に安定的に戻すため、十分な期間にわたり十分に制限的にされる必要がある
- この点に基づき、委員会は政策金利をどの程度の期間、現在の水準で維持するかの検討を続ける
- (「仮により永続的なインフレ圧力があるのであれば、より引き締め的な金融政策が必要となる」との表現は削除)
1 今回反対票を投じたのは、グリーン委員、ハスケル委員で0.25%の利上げを主張した。またディングラ委員が0.25%の利下げを主張した。前回はグリーン委員、ハスケル委員、マン委員の3名は0.25%の利上げを主張し、利下げの主張はなかった。
(2024年02月02日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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