2023年09月13日

企業物価指数2023年8月~前年比では8ヵ月連続で伸びが鈍化~

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1. 国内企業物価指数(前年比)は引き続き伸びが鈍化

企業物価指数の推移 日本銀行が9月13日に発表した企業物価指数によると、2023年8月の国内企業物価の前年比は3.2%(7月:同3.4%)と8ヵ月連続で伸びが鈍化した。

内訳をみると23類別中、20類別が上昇し、3類別が低下した。石油・石炭製品は前年比7.5%(7月:同1.8%)と大きく伸びを高めた。政府が6月以降、燃料油価格への補助金を段階的に縮小していることが上昇の主因である。非鉄金属は同6.7%(7月:同5.6%)と前月から伸びを高めた。一方、電力・都市ガス・水道が前年比▲10.9%(7月:同▲3.6%)とマイナス幅が大きく拡大し、化学製品が同▲2.8%(7月:同▲3.9)と引き続きマイナスとなったことが全体を押し下げた。
国内企業物価の前月比は8月に0.3%(7月:同0.1%)と2ヵ月連続でプラスとなり、夏季電力料金引き上げの影響を除くと4ヵ月ぶりにプラスに転じた。内訳をみると23類別中、14類別が上昇し、7類別が低下、2類別で横ばいとなった。電力・都市ガス・水道が前月比▲3.9%(7月:同▲2.0)と4ヵ月連続でマイナスとなった。一方、石油・石炭製品は前月比5.2%(7月:同2.0%)と前月から伸びを高め、化学製品が同0.6%(7月:同▲0.3)と6ヵ月ぶりにプラスに転じたことが、全体のプラスに寄与した。
国内企業物価指数の推移/国内企業物価指数の前月比寄与度分解

2. 輸入物価(契約通貨ベース)は下落が続く

輸入物価変化率の要因分解(契約通貨ベース) 2023年8月の輸入物価は、契約通貨ベースでは前月比▲0.9%(7月:同▲0.6%)と11ヵ月連続のマイナスとなった。また、2023年8月の円相場(対ドル)は前月比2.5%とプラスとなったことで、円ベースでは同0.9%(7月:同▲0.6%)と3ヵ月ぶりにプラスに転じた。円ベースの前年比は▲11.8%(7月:▲14.4%)と3ヵ月連続で二桁のマイナスとなった。

契約通貨ベースで輸入物価の内訳をみると、10類別中4類別でプラス、1類別で横ばい、5類別でマイナスとなった。繊維品は前月比0.4%(7月:同▲0.7%)と2ヵ月ぶりにプラスに転じた。一方、石油・石炭製品は前月比▲2.8%(7月:同▲0.8%)11ヵ月連続でマイナスとなったほか、金属・同製品は同▲0.9.%(7月:同▲0.8%)と3ヵ月連続のマイナスとなった。輸入物価は引き続き前年比では大幅なマイナスとなるが、足もとの原油価格の上昇と円安の進行を受けて、前月比ではプラスを維持するだろう。

3. 今後も国内企業物価指数(前年比)は縮小

国内企業物価指数の前年比寄与度分解 国内企業物価指数(前年比)は8ヵ月連続で伸びが鈍化し、3%台の伸びが続いている。資源高の一服により、輸入物価(前年比)は11ヵ月連続のマイナスとなった。ただし、足もとでは原油価格が上昇し、円安が進行しているため、輸入物価の下落に歯止めがかかる可能性が高い。

物価上昇圧力は依然として残っているが、国内企業物価(前年比)の先行きは前年の高い伸びの裏がでることもあり、さらに縮小するだろう。
 
 

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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

(2023年09月13日「経済・金融フラッシュ」)

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