2023年08月17日

日本の少子化の原因と最近の財源に関する議論について

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

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少子化の原因は?

合計特殊出生率(以下、出生率)の低下が止まらない。2022年の日本の出生率は1.26となり、過去最低だった2005年に並ぶ過去最低の水準となった(図表1)。韓国の0.78よりは高いが、OECD平均1.58(2020年)を大きく下回る数値だ。
図表1日本における合計特殊出生率の推移
なぜ日本では少子化が進んでいるだろうか。最初の原因として考えられるのが「未婚化や晩婚化の進展」だ。日本の場合も韓国と同じく、男女が結婚してから出産をするケースが多い。従って、未婚化や晩婚化が進むと、生まれる子どもの数に影響を与えることになる。25~29歳と30~34歳の男性の未婚率は1960年の46.1%と9.9%から、2020年には72.9%47.4%に上昇した。また、25~29歳と30~34歳の女性の同期間の未婚率も21.7%と9.4%から62.4%と35.2%まで上がっている。国立社会保障・人口問題研究所が公開している『人口統計資料集(2022)』によると、50歳になった時点で一度も結婚したことがない人の割合を示す生涯未婚率は2000年の男性12.6%、女性5.8%から、2020年には男性28.3%、女性17.1%に、男性は約2.2倍、女性は約3.1倍も増加した。平均初婚年齢も夫、妻ともに上昇を続け、晩婚化が進んでいる。1975年に夫27.0歳、妻24.7歳であった平均初婚年齢は2020年には夫31.0歳、妻29.4歳まで上昇した。
図表2男性の年齢階級別未婚率の推移
図表3女性の年齢階級別未婚率の推移
少子化の2つ目の原因としては、若者の結婚及び出産に関する意識が変化していることが挙げられる。国立社会保障・人口問題研究所が5年ごとに実施している「出生動向基本調査」によると、18~34歳の未婚者のうち「いずれ結婚するつもり」と回答した割合は1982年で男性95.9%、女性94.2%から、2021年には男性81.4%、女性84.3%に低下した。また、結婚相手紹介サービスを提供する株式会社オーネットが成人式を迎える新成人を対象に毎年実施している「恋愛・結婚に関する意識調査」でも、「結婚したい」と回答した新成人の割合は、ピークであった1997年の89.5%から2023年には78.6%まで低下していることが明らかになった。
図表4「結婚したい」新成人の割合
さらに、同調査では結婚したら「子供が欲しい」かを聞いているが、「子供が欲しい」と回答した割合は2019年の69.3%から2023年には64.1%に低下している。両調査から若者の結婚及び出産に関する意識が変化していることが分かる。

では、なぜ「結婚したい」若者は減少しているだろうか。国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」では、結婚意思のある未婚者に、現在独身でいる理由をたずねており、その結果をみると、25~34歳では、「適当な相手にまだめぐり会わないから」と回答した割合が男性43.3%、女性48.1%で最も高いという結果が得られた。次いで,「独身の自由さや気楽さを失いたくないから」(男性26.6%、女性31.0%)、「結婚する必要性をまだ感じないから」(男性25.8%、女性29.3%)の順であった。

財務省総合政策研究所が2015年に実施した調査では、「現在交際している人と(あるいは理想的な相手が見つかった場合)一年以内に結婚するとしたら、なにか障害になることがあると思いますか」をたずねており、男性も女性も「結婚資金(挙式や新生活の準備のための費用)」を最大の障害として、「結婚生活のための住居」を第二番目の障害として挙げた。

少子化の3つ目の原因としては、育児に対する経済的負担が大きいことが挙げられる。特に、子どもの教育費が子育ての負担になっている。文部科学省の「平成30年度学校基本統計(学校基本調査報告書)」によると、小学校から大学まで、1人にかかる教育費は、幼稚園から大学まですべて公立校に通った場合は約8百万円、すべて私立校なら約2千3百万円もかかる(文部科学省「結果の概要-令和3年度子供の学習費調査」、「令和3年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」から計算)。

内閣府が2021年に発表した「少子化社会に関する国際意識調査」(調査期間:2020年10月~2021年1月、調査対象:子どもがいる20~49歳の男女))によると、2020年時点で子育てにかかる経済的負担として大きなもの(複数回答)は、「学習塾など学校以外の教育費」(59.2%)、「学習塾以外の習い事費用」(42.8%)、「保育にかかる費用」(39.0%)が上位3位を占めた。特に、「学習塾など学校以外の教育費」と「学習塾以外の習い事費用」と回答した割合は2010年の調査と比べてそれぞれ22.7ポイントと22.9ポイントも増加した。

少子化の4つ目の原因としては、依然として男女別賃金格差が存在していることが挙げられる。2021年の男性の賃金水準は女性と比べて22.1%高く、2021年の男性の賃金水準は女性と比べて31.1%高く、OECD平均12.0%を大きく上回っている(図表5)。
図表5 OECD加盟国の男女別賃金格差(男性の賃金が女性よりどのぐらい高いのか)
統計的差別や賃金格差がなくなり、女性が男性と同等に労働市場に参加することになると女性は男性に経済的に頼らなくなり、性別役割分担意識もなくなる。統計的差別とは、差別を行う意図がなくても、過去の統計データに基づいた合理的判断から結果的に生じる差別をいう。つまり、まだ一部の企業は、「〇割の女性が出産を機に仕事を辞める」、「女性の〇割は専業主婦になることを望んでいる」といった統計データに基づいて採用を行っており、その結果統計的差別が発生している。そして、子育てに対する経済的負担が減り一人でも子育てができるという自信ができ、出産を肯定的に考えることになるだろう。

少子化の5つ目の原因としては、育児や家事に対する女性の負担が大きい点が挙げられる。OECDが2020年にまとめた生活時間の国際比較データ(15~64歳の男女を対象)1によると、男性の1日あたりの有償労働時間(市場で労働力を提供して対価を得る時間)は日本が452分で最もながいことに比べて、無償労働時間(家事、育児、介護、育児、買い物、ボランティア活動など対価を要求しない労働時間)は41分で最も低いことが明らかになった。日本の男性の家事・育児時間は、主要先進国と比較するとまだ少なく、女性に家事や育児への負担が偏っていることがうかがえる。

さらに、日本では男性の育児休業取得率も低い。厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、2021年における民間企業に勤める日本の男性の育児休業取得率は13.97%で過去最高を更新したものの、女性の85.1%とはまだ大きな差を見せている。

日本政府は男性の育児休業取得率を2025年までに30%に引き上げるという目標を掲げており、それを達成するために、2021年6月、男性の育児休業取得促進を含む育児・介護休業法等改正法案を衆議院本会議において全会一致で可決・成立させた。その結果、2022年10月には「出生時育児休業(産後パパ育休)」が新たに創設されることになった。

「出生時育児休業(産後パパ育休)」とは、男性労働者が子どもの出生後8週間以内に4週間までの休業を取得できる制度であり、原則として休業2週間前までの申し出により休暇取得が可能になった(既存の育休制度では原則1ヵ月前までの申し出が必要)。

また、育児休業4週間を分割して2回取得することと、労使協定を締結している場合に限り、労働者と事業主で事前に調整して合意した範囲内で就業することもできるようになった。既存の制度では原則禁止とされていた育休中の就業が認められることになったのは当制度の大きな特徴だと言える。

一方、育児休業期間中に支給される育児休業給付は、育児休業開始から最初の6カ月間は休業前賃金の67%を上限(育児休業の開始から6カ月経過後は50%)としている。専門家の間では育児休業給付の引き上げを主張する声もあったそうだが実現までは至らなかった。

日本政府が男性の育児休業取得率30%の目標を実現するためには、もしかすると韓国で実施されている「パパ育児休業ボーナス制度」2と「3+3親育児休業制度」3が参考になるかも知れない。経済状況の改善や賃金の大幅引き上げの実現がなかなか難しい現状を考慮すると、育児休業中の所得確保は子育て家庭においてとても大事な部分であるからだ。

上記の原因以外にも育児政策が子育て世代に偏っていること、結婚に対する経済的負担が大きいこと、社会保障制度や税制において、二人の親とその子どもで構成される家族以外の同性婚や事実婚など家族の多様性が前提となっておらず、十分な恩恵が受けられないことが少子化の原因として考えられる。
 
1 OECD(2020)「Balancing paid work, unpaid work and leisure」
2 「パパ育児休業ボーナス制度」は、同じ子どもを対象に2回目に育児休業を取得する親に、最初の3カ月間について育児休業給付金として通常賃金の100%を支給する制度である。1回目の育児休業は母親、2回目は父親が取得することが多い(90%)ので、通称「パパ育児休業ボーナス制度」と呼ばれている。
3 韓国政府は2022年から、育児休業制度の特例として「3+3親育児休業制度」を施行した。「3+3親育児休業制度」とは、育児休業を取得する親の中でも、生まれてから12カ月以内の子供を養育するために同時に育児休業を取得した父母に対して、最初の3カ月間について育児休業給付金として父母両方に通常賃金の100%を支給する制度だ。
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生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
労働経済学、社会保障論、日・韓における社会政策や経済の比較分析

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