2023年05月17日

QE速報:1-3月期の実質GDPは前期比0.4%(年率1.6%)-内需主導で3四半期ぶりのプラス成長

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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● 1-3月期は前期比年率1.6%と3四半期ぶりのプラス成長

本日(5/17)発表された2023年1-3月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比0.4%(前期比年率1.6%)と3四半期ぶりのプラス成長となった(当研究所予測4月28日:前期比0.1%、年率0.3%)。

海外経済の減速を背景に輸出が前期比▲4.2%の減少となり、外需が成長率を押し下げた(前期比・寄与度▲0.3%、年率▲1.3%)が、民間消費(前期比0.6%)、設備投資(同0.9%)、住宅投資(同0.2%)の国内民間需要がいずれも増加したことから、内需主導で3四半期ぶりのプラス成長となった。
 
名目GDPは前期比1.7%(前期比年率7.1%)と2四半期連続の増加となり、実質の伸びを大きく上回った。GDPデフレーターは前期比1.3%(10-12月期:同1.1%)、前年比2.0%(10-12月期:同1.2%)となった。輸入物価の上昇を国内に価格転嫁する動きが広がり、国内需要デフレーターが前期比0.6%の上昇(10-12月期:同0.7%)となったことに加え、原油価格の下落や円安の一服を反映し、輸入デフレーターが前期比▲5.0%の低下となり、輸出デフレーターの伸び(前期比▲2.8%)を下回ったことがGDPデフレーターを押し上げた。
 
2023年1-3月期の1次速報と同時に、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから過去の成長率が遡及改定された。2022年10-12月期の実質GDP成長率は、民間消費、設備投資の下方修正などから、前期比年率0.1%のプラス成長から同▲0.1%のマイナス成長へと下方修正された。

この結果、2022年度の実質GDP成長率は1.2%(2022年度は2.6%)、名目GDP成長率は1.9%(2021年度は2.4%)といずれも2年連続のプラスとなった。名目GDPは2019年度の水準を上回ったが、実質GDPは2019年度に届いていない。
<需要項目別結果>
<需要項目別の動き>
民間消費は前期比0.6%と4四半期連続の増加となり2012年10-12月期(同0.2%)から伸びを高めた。物価高による下押し圧力は続いているが、高水準の貯蓄や全国旅行支援による下支えもあって、消費は回復基調を強めている。

実質家計消費の内訳を形態別にみると、物価高の影響から、被服・履物、家具などの半耐久財が前期比▲2.6%の減少となったが、供給制約の緩和を受けて自動車などの耐久財が同5.9%の高い伸びとなったほか、食料品などの非耐久財が同0.7%、交通、外食、旅行、宿泊などのサービスが同0.8%の増加となった。

雇用者報酬は、名目・前年比1.2%となり、10-12月期の同2.5%から伸びが大きく鈍化した。家計消費デフレーターの高い伸びが続いたことから、実質では前年比▲2.3%(10-12月期:同▲1.8%)と6四半期連続で減少し、前期から減少幅が拡大した。
 
住宅投資は前期比0.2%と2四半期連続で増加した。住宅投資は、資材価格の高騰に伴う住宅価格の上昇を背景に低迷が続いてきたが、住宅投資デフレーターがピークアウト(2022年10-12月期:前期比▲0.1%、2023年1-3月期:同▲0.5%)したことが実質の伸びを押し上げた。

設備投資は前期比0.9%と2四半期ぶりに増加したが、10-12月期(同▲0.7%)と均して見れば、横ばい圏の動きとなっている。設備投資は、高水準の企業収益を背景に基調としては持ち直しの動きが続いていると判断されるが、輸出、生産活動の停滞を受けて2022年度後半は足踏み状態となった。

公的固定資本形成は補正予算の効果などから、前期比2.4%と4四半期連続で増加した。
 
外需寄与度は前期比▲0.3%(前期比年率▲1.3%)と2四半期ぶりのマイナスとなった。海外経済の減速を背景に財貨・サービスの輸出が前期比▲4.2%と5四半期ぶりに減少した。水際対策の緩和に伴うインバウンド需要の増加からサービス輸出が前期比5.6%の増加となったが、財輸出の落ち込み(前期比▲6.5%)をカバーするには至らなかった。財貨・サービスの輸入は前期比▲2.3%と2四半期連続で減少したが、輸出の落ち込みが大きかったため、外需は成長率の押し下げ要因となった。
20234-6月期は年率1%台のプラス成長を予想)
2023年1-3月期の実質GDPは事前予想を上回る高い伸びとなったが、2022年10-12月期がプラス成長からマイナス成長へと下方修正されたため、プラス成長は3四半期ぶりとなった。日本経済が安定的な成長軌道に復帰したとは言い難い。また、2023年1-3月期の実質GDPは、コロナ禍前(2019年10-12月期)の水準を1.3%上回ったが、消費税率引き上げ前のピーク(2019年7-9月期)を▲1.5%下回っている。経済の正常化にはまだ距離がある。

2023年4-6月期は、海外経済の減速を背景に輸出の低迷が続く一方、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴う経済社会活動の正常化によって、民間消費を中心に国内需要の増加が続くことから、現時点では前期比年率1%台のプラス成長を予想している。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2023年05月17日「Weekly エコノミスト・レター」)

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