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- インドネシア経済:22年10-12月期の成長率は前年同期比+5.01%~輸出の好調で2022年は9年ぶりの高成長に
2023年02月06日
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インドネシアの2022年10-12月期の実質GDP成長率1は前年同期比(原系列)5.01%増(前期:同5.72%増)と低下したものの、市場予想2(同+4.96%)を上回る結果となった。
なお、2022 年通年の成長率は前年比5.31%増(2021年:同3.70%増)と上昇した。
なお、2022 年通年の成長率は前年比5.31%増(2021年:同3.70%増)と上昇した。
10-12月期の実質GDPを需要項目別に見ると、輸出の好調が成長の牽引役となった(図表1)。
民間消費(対家計民間非営利団体含む)は前年同期比4.50%増(前期:同5.40%増)と低下した。費目別に見ると、輸送・通信(同8.05%増)とホテル・レストラン(同6.41%増)が堅調に拡大した一方、食料・飲料(同3.38%増)や住宅設備(同2.37%増)、保健・教育(同2.28%増)が伸び悩んだ。
政府消費は前年同期比4.77%減(前期:同2.55%減)となり、4四半期連続で減少した。
総固定資本形成は前年同期比3.33%増(前期:同4.98%増)と鈍化した。機械・設備(同13.86%増)が7四半期連続で二桁増となる一方、建設投資(同0.11%増)が停滞した。
純輸出は成長率寄与度が+2.17%ポイントと、前期の▲0.22%ポイントから大きく拡大してプラス寄与となった。まず財・サービス輸出は前年同期比14.93%増(前期:同19.41%増)と大幅な伸びが続いた。輸出の内訳を見ると、財輸出(同12.73%増)とサービス輸出(同56.40%増)がそれぞれ好調だった。また財・サービス輸入も同6.25%増(前期:同25.377%増)と内需の鈍化に伴い輸出を大幅に下回る伸びとなった。
供給項目別に見ると、引き続き第三次産業の拡大が成長の牽引役となった(図表2)。
第三次産業は前年同期比6.88%増(前期:同7.76%増)となり、堅調な伸びを維持した。内訳を見ると、ホテル・レストラン(同17.83%増)や運輸・倉庫(同11.57%増)、ビジネスサービス(同10.64%増)の二桁成長が続き、また構成割合の大きい卸売・小売(同7.96%増)や情報・通信(同8.75%増)も堅調に拡大した。一方、教育サービス(同0.43%増)や行政・国防(同1.88%増)、保健衛生・社会事業(同2.58%増)、金融・不動産(同2.07%増)は伸び悩んだ。
第二次産業は前年同期比4.56%増(前期:同3.54%増)とやや持ち直した。内訳を見ると、建設業(同1.26%増)と電気・ガス・水供給業(同2.35%増)が伸び悩んだものの、構成割合の大きい製造業(同5.63%増)と鉱業(同6.46%増)の増勢が加速した。
第一次産業は前年同期比4.83%増(前期:同1.96%増)と上昇した。
1 2023年2月6日、インドネシア統計局(BPS)が2022年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査
第三次産業は前年同期比6.88%増(前期:同7.76%増)となり、堅調な伸びを維持した。内訳を見ると、ホテル・レストラン(同17.83%増)や運輸・倉庫(同11.57%増)、ビジネスサービス(同10.64%増)の二桁成長が続き、また構成割合の大きい卸売・小売(同7.96%増)や情報・通信(同8.75%増)も堅調に拡大した。一方、教育サービス(同0.43%増)や行政・国防(同1.88%増)、保健衛生・社会事業(同2.58%増)、金融・不動産(同2.07%増)は伸び悩んだ。
第二次産業は前年同期比4.56%増(前期:同3.54%増)とやや持ち直した。内訳を見ると、建設業(同1.26%増)と電気・ガス・水供給業(同2.35%増)が伸び悩んだものの、構成割合の大きい製造業(同5.63%増)と鉱業(同6.46%増)の増勢が加速した。
第一次産業は前年同期比4.83%増(前期:同1.96%増)と上昇した。
1 2023年2月6日、インドネシア統計局(BPS)が2022年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査
10-12月期GDPの評価と先行きのポイント
インドネシア経済はコロナ禍からの経済活動の再開によりプラス成長が続いており、2022年の成長率は前年比+5.31%(2021年:同3.70%増)と上昇し、9年ぶりの高成長を記録した。四半期ベースでみると、10-12月期の成長率は前年同期比+5.01%となり、7-9月期の同+5.72%から鈍化したものの、順調な成長が続いていることが明らかとなった。
10-12月期はロシア・ウクライナ戦争を背景としたコモディティブームにより、財貨輸出(+12.73%)の好調が続き、景気の牽引役となった。国際商品市況は昨年前半に頭打ちした後も高止まりしており、資源輸出国であるインドネシアの交易条件は改善、貿易を通じて海外からの所得流入が進み、国内の企業収益の改善や家計所得の向上を通じて内需の下支えとなっている。またサービス輸出(同+56.40%)の大幅な増加も続いた。インドネシアでは昨年3月以降、入国規制が大きく緩和されており、12月の外国人旅行者数は90万人(2019年平均の67%)まで回復している(図表3)。
GDPの半分以上を占める民間消費(同+4.50%)は高インフレが重石となったが、コロナ禍が収束に向かうなかで旅行関連支出が拡大するなど底堅く推移している。インドネシア政府は昨年5月に新型コロナ対策の活動制限(PPKM)についてジャカルタ首都圏のリスク区分を最も低い「レベル1」に引き下げ、エッセンシャル分野以外の企業でもオフィスへの出社率が100%まで認められるようになった。その後もマスク着用義務が撤廃されるなど一連の行動制限の緩和によりコロナ前の生活に近づいていくなか、22月8月の失業率は5.86%となり、21年8月から0.63%ポイント低下、同じく8月の労働者の平均賃金(月額)は前年比+13.5%と大きく上昇した。こうした雇用所得環境の改善が消費の拡大に繋がったとみられる。
このように10-12月期は順調な成長が続いたものの、足元では世界的な景気減速やインフレの高止まりなどから景気の勢いは弱まっていることも確かだ。またインドネシア中銀の積極的な利上げ(昨年8月から累計+2.25%ポイント)により国内金利が上昇しており(図表4)、借入れコストの増加を通じて企業の投資や家計の消費が抑えられ、経済成長に逆風となっている。1月の消費者物価上昇率は前年同月比+5.28%と鈍化傾向が明確になってきており、今後の利上げは見送られる可能性が高まったものの、消費が冷え込み始めた兆しとも読み取れる。しかしながら、インドネシアは資源高により経常収支が黒字化し、また2023年度国家予算では財政赤字(対GDP比)を▲2.84%と政府目標の3%以下に抑えるなどマクロ経済のファンダメンタルズが改善している。対外ショックに対する耐性が高まると海外から投資資金が流入し、民間設備投資の拡大が期待できる。従って、今後は消費の鈍化により景気は減速するだろうが、投資が持ち直して底堅い成長が保たれると予想する。
10-12月期はロシア・ウクライナ戦争を背景としたコモディティブームにより、財貨輸出(+12.73%)の好調が続き、景気の牽引役となった。国際商品市況は昨年前半に頭打ちした後も高止まりしており、資源輸出国であるインドネシアの交易条件は改善、貿易を通じて海外からの所得流入が進み、国内の企業収益の改善や家計所得の向上を通じて内需の下支えとなっている。またサービス輸出(同+56.40%)の大幅な増加も続いた。インドネシアでは昨年3月以降、入国規制が大きく緩和されており、12月の外国人旅行者数は90万人(2019年平均の67%)まで回復している(図表3)。
GDPの半分以上を占める民間消費(同+4.50%)は高インフレが重石となったが、コロナ禍が収束に向かうなかで旅行関連支出が拡大するなど底堅く推移している。インドネシア政府は昨年5月に新型コロナ対策の活動制限(PPKM)についてジャカルタ首都圏のリスク区分を最も低い「レベル1」に引き下げ、エッセンシャル分野以外の企業でもオフィスへの出社率が100%まで認められるようになった。その後もマスク着用義務が撤廃されるなど一連の行動制限の緩和によりコロナ前の生活に近づいていくなか、22月8月の失業率は5.86%となり、21年8月から0.63%ポイント低下、同じく8月の労働者の平均賃金(月額)は前年比+13.5%と大きく上昇した。こうした雇用所得環境の改善が消費の拡大に繋がったとみられる。
このように10-12月期は順調な成長が続いたものの、足元では世界的な景気減速やインフレの高止まりなどから景気の勢いは弱まっていることも確かだ。またインドネシア中銀の積極的な利上げ(昨年8月から累計+2.25%ポイント)により国内金利が上昇しており(図表4)、借入れコストの増加を通じて企業の投資や家計の消費が抑えられ、経済成長に逆風となっている。1月の消費者物価上昇率は前年同月比+5.28%と鈍化傾向が明確になってきており、今後の利上げは見送られる可能性が高まったものの、消費が冷え込み始めた兆しとも読み取れる。しかしながら、インドネシアは資源高により経常収支が黒字化し、また2023年度国家予算では財政赤字(対GDP比)を▲2.84%と政府目標の3%以下に抑えるなどマクロ経済のファンダメンタルズが改善している。対外ショックに対する耐性が高まると海外から投資資金が流入し、民間設備投資の拡大が期待できる。従って、今後は消費の鈍化により景気は減速するだろうが、投資が持ち直して底堅い成長が保たれると予想する。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年02月06日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
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