2023年01月24日

「マイナ保険証」の利用状況・マイナポータルでの健康情報閲覧状況

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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1――はじめに

国が進めているデータヘルス改革や医療DXにおいて、マイナンバーカードを利用する場面は2つある1。1つ目は医療機関や薬局などの受付で保険証(マイナ保険証)として利用することで、カードリーダーにかざして加入資格を確認するとともに、自分のこれまでに受けた特定健診の結果や診療情報、薬剤情報をその医療機関や薬局等で使用することに同意をするために使う。2つ目は自分のパソコンやスマホで、自身の健診結果や予防接種結、医療機関等における診療・薬剤情報を閲覧するためにマイナポータルにアクセスするために使う。

マイナンバーカードの保険証としての利用については、現在は従来の健康保険証が利用できることや、カードリーダーを導入していない医療機関等が多かったことから、まだ利用したことがない人が多いのではないだろうか。

本稿では、国の資料から、マイナンバーカードの保険証としての登録状況や利用状況、医療機関等におけるカードリーダー設置状況等を紹介する。また、ニッセイ基礎研究所が行ったインターネット調査から、マイナンバーカードの保険証としての利用経験と今後の意向等を紹介する。
 
1 村松容子「データヘルス改革による健康・医療データ利活用推進の状況」ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート(2023年1月11日)

2――マイナンバーカードの保険証としての利用状況

2――マイナンバーカードの保険証としての利用状況~国の公表資料から

1|マイナンバーカードやカードリーダーの普及状況
現在、マイナンバーカードの申込数は累計8,350万件であるが、保険証利用登録件数は4,070万件に留まる2。保険証としての利用のメリットがわかりにくいことと、保険証として利用できる医療機関や薬局等がまだ多くないことから積極的には利用していないと考えられる。
図表1 医療機関等におけるオンライン資格確認システムの普及状況 一方、医療機関や薬局等に対しては、「経済財政運営と改革の基本方針2022」で、医療機関や薬局(保険医療機関や保険薬局)等においては、2023年4月からオンライン資格確認のためのカードリーダーを導入することが原則として義務づけている。既に運用を開始している施設は義務化対象施設3全体の43.7%に留まっているが、97.7%の施設が申込を済ませており、いずれ運用が開始されると思われる(図表1)。
 
2 2023年1月9日時点。交付数は、2022年12月末に71,905,789枚。マイナンバーカード申込数・交付数は、総務省「マイナンバーカード交付状況について(https://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/kofujokyo.html)」。保険証利用登録数は、厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用について(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08277.html)」。
3 社会保険診療報酬支払基金に紙媒体でレセプト請求を行っている施設は除かれている。
2|医療機関や薬局等での利用状況
続いて、オンライン資格システムを導入している医療機関や薬局等で、資格確認にマイナンバーカードを利用した件数と、マイナンバー利用率を図表2に示す。利用率=マイナンバーカード利用数/(マイナンバーカード利用数+従来の保険証利用数)で計算した。マイナンバーカードの保険証紐づけが始まった2021年10月は、利用してみた人が多かったが、11月以降は低迷している。マイナンバーカードを使った方が初診料等が高くなることがSNS等で話題になったことが一因と思われる。

2022年10月に、マイナンバーカードを利用した方が初診料等が低くなったことで、利用者が急増したものの、ほとんどが従来の保険証で受診している。
図表2 マイナンバーカードの利用件数(導入している施設)
また、患者が同意をすれば、過去の患者の特定健診等情報や診療・薬剤情報が医療機関で閲覧できるようになっている。オンライン資格確認システムを導入していても、閲覧機能までは運用していない医療機関等もあるが、2022年12月時点の閲覧件数は、薬剤情報が累計で46.3万件、特定健診等情報が19.6万件、診療情報が14.3万件となっている(図表3)。2022年10月に、マイナンバーカードを利用した方が初診料等が低くなったことでマイナンバーカードの利用が増え、閲覧も増加したものと考えられる。図表2のマイナンバーカードの利用数と比べると、半分ぐらいが閲覧している計算となる。
図表3 健診結果情報、診療・薬剤情報の閲覧数
3|マイナポータルを使った特定健診等情報や薬剤/診療情報の閲覧状況
最後に、マイナポータルにアクセスして、自分の健診情報や診療・薬剤情報を閲覧している件数を図表4に示す。

2022年12月の時点で薬剤/診療情報の閲覧が8.0万件、特定健診等情報の閲覧が1.0万件となっている。
図表4 マイナポータルを使った特定健診等情報、薬剤/診療情報の閲覧

3――マイナンバーカードの利用経験と利用意向

3――マイナンバーカードの利用経験と利用意向~インターネット調査から

以上のとおり、国が公表している利用実績をみると、医療機関や薬局等では、まだ従来の保険証を利用する人が大多数であるが、2022年10月を境に大きく増加していた。9月末から、消費者の意識は変わったのか、一般消費者を対象とするアンケートを使って、マイナンバーカード利用実績や今後の利用意向について、9月と12月の結果を比較する。

使用したのはニッセイ基礎研究所による「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」の第10回(2022年9月27日から10月3日)調査と第11回(2022年12月21日~27日)調査の結果である。調査は全国の20~74歳の男女を対象に行ったインターネット調査で、有効回答数はそれぞれ2557件と2582件である4
 
4 詳細は、ニッセイ基礎研究所「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」を参照のこと。
   また、第10回調査のマイナンバーカード使用状況については、村松容子「マイナンバーカード取得状況と使途・今後利用したいサービス」ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート(2022年11月16日)を参照のこと。
1|マイナンバーカードの保険証としての利用経験と今後の意向
マイナンバーカードを取得している人に対して、健康保険証として医療機関や薬局で使用した経験を尋ねたところ、第10回調査では5.4%が利用経験があったのに対し、第11回調査では6.4%と、大きな差はなかった(図表5)。今後の利用意向について、今後マイナンバーカードの取得を予定している人も含めて尋ねたところ、30.8%から34.3%と3.5ポイント上昇していた。
図表5 マイナンバーカードを医療機関や薬局において健康保険証として利用することについての経験と今後の意向
2|医療機関や薬局等で過去の健診結果等情報を提供するか
次に、医療機関を受診する際、医療機関が、これまでの健康診断の結果を利用することに同意するか尋ねた結果、「同意する」と回答した割合は、第10回調査では55.9%だったのに足して、第11回調査では57.1%と、大きな差はなかった(図表6)。
図表6 医療機関を受診する際、医療機関が、これまでの健康診断の結果を利用することに同意するか
3|マイナポータルを使った特定健診等情報や薬剤/診療情報の閲覧経験と今後の意向
最後に、マイナンバーカードを取得している人に対して、マイナポータルを通じて、自分の受診歴、予防接種歴の確認や、健康診断結果を閲覧した経験を尋ねたところ、第10回調査では2.8%が利用経験があったのに対し、第11回調査では3.4%と、大きな差はなかった(図表7)。今後の利用意向について、今後マイナンバーカードの取得を予定している人も含めて尋ねたところ、10.5%から12.0%とやや上昇していた。

しかし、今後の利用意向は、上昇はしているものの、既にカードを取得している人、または今後取得予定の人を対象としているにも関わらず、1割強にとどまり、患者や消費者の期待は高くはない。
図表7 マイナポータルを通じて、受診歴、予防接種歴の確認や、健康診断結果の閲覧することについての経験と今後の意向

4――おわりに

4――おわりに

以上のとおり、医療機関等におけるカードリーダーの導入については、97.7%が既に申込みをしており、いずれほとんどの医療機関に設置されるようになると思われる。国が公表している利用実績をみると、医療機関や薬局等でのマイナンバーカードの保険証としての利用は、まだ従来の保険証を利用する人が大多数であるが、2022年10月を境に増加していた。また、過去の特定健診結果や診療・薬剤情報等の閲覧数も2022年10月を境に増加していた。マイナポータルを使った特定健診等情報、薬剤/診療情報の閲覧もまだ数は少ないものの少しずつ増加しているようだった。

ニッセイ基礎研究所によるインターネット調査でも、マイナンバーカードの保険証としての利用意向やマイナポータルを通じて、受診歴、予防接種の確認や、健康診断結果の閲覧をすることについての利用意向はやや上昇していた。

今後、さらに利用を進めるためには、マイナンバーカードを保険証として利用すること、過去の特定健診の結果や診療・薬剤情報を利用すること、自分の健診結果や受診歴、予防接種歴を閲覧すること、それぞれについて、どういったメリットがあるか具体的に示していくことが必要となるだろう。

マイナポータルの利用方法についての周知も必要と思われる。2022年以降は、年間の医療費(保険診療分)が取得でき5、マイナポータルを通じて確定申告をする場合は、自動入力が可能となった。このように、マイナポータルの機能は拡充しているが、一般に広くは周知されていない。また、マイナポータルは、スマホからでもパソコンからでもアクセスできるが、パソコンを利用する場合はカードリーダーが必要となる。サイトへのアクセス方法の周知やサイトの見やすさも周知する必要があるのではないだろうか。
 
5 2021年9月以降、保険診療による医療費が取得できるようになった。
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療、生保市場調査

経歴
  • 【職歴】
     2003年 ニッセイ基礎研究所入社

(2023年01月24日「保険・年金フォーカス」)

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