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「マイナ保険証」の利用状況・マイナポータルでの健康情報閲覧状況
保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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1――はじめに
マイナンバーカードの保険証としての利用については、現在は従来の健康保険証が利用できることや、カードリーダーを導入していない医療機関等が多かったことから、まだ利用したことがない人が多いのではないだろうか。
本稿では、国の資料から、マイナンバーカードの保険証としての登録状況や利用状況、医療機関等におけるカードリーダー設置状況等を紹介する。また、ニッセイ基礎研究所が行ったインターネット調査から、マイナンバーカードの保険証としての利用経験と今後の意向等を紹介する。
1 村松容子「データヘルス改革による健康・医療データ利活用推進の状況」ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート(2023年1月11日)
2――マイナンバーカードの保険証としての利用状況~国の公表資料から
現在、マイナンバーカードの申込数は累計8,350万件であるが、保険証利用登録件数は4,070万件に留まる2。保険証としての利用のメリットがわかりにくいことと、保険証として利用できる医療機関や薬局等がまだ多くないことから積極的には利用していないと考えられる。
一方、医療機関や薬局等に対しては、「経済財政運営と改革の基本方針2022」で、医療機関や薬局(保険医療機関や保険薬局)等においては、2023年4月からオンライン資格確認のためのカードリーダーを導入することが原則として義務づけている。既に運用を開始している施設は義務化対象施設3全体の43.7%に留まっているが、97.7%の施設が申込を済ませており、いずれ運用が開始されると思われる(図表1)。
2 2023年1月9日時点。交付数は、2022年12月末に71,905,789枚。マイナンバーカード申込数・交付数は、総務省「マイナンバーカード交付状況について(https://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/kofujokyo.html)」。保険証利用登録数は、厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用について(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08277.html)」。
3 社会保険診療報酬支払基金に紙媒体でレセプト請求を行っている施設は除かれている。
続いて、オンライン資格システムを導入している医療機関や薬局等で、資格確認にマイナンバーカードを利用した件数と、マイナンバー利用率を図表2に示す。利用率=マイナンバーカード利用数/(マイナンバーカード利用数+従来の保険証利用数)で計算した。マイナンバーカードの保険証紐づけが始まった2021年10月は、利用してみた人が多かったが、11月以降は低迷している。マイナンバーカードを使った方が初診料等が高くなることがSNS等で話題になったことが一因と思われる。
2022年10月に、マイナンバーカードを利用した方が初診料等が低くなったことで、利用者が急増したものの、ほとんどが従来の保険証で受診している。
3――マイナンバーカードの利用経験と利用意向~インターネット調査から
使用したのはニッセイ基礎研究所による「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」の第10回(2022年9月27日から10月3日)調査と第11回(2022年12月21日~27日)調査の結果である。調査は全国の20~74歳の男女を対象に行ったインターネット調査で、有効回答数はそれぞれ2557件と2582件である4。
4 詳細は、ニッセイ基礎研究所「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」を参照のこと。
また、第10回調査のマイナンバーカード使用状況については、村松容子「マイナンバーカード取得状況と使途・今後利用したいサービス」ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート(2022年11月16日)を参照のこと。
最後に、マイナンバーカードを取得している人に対して、マイナポータルを通じて、自分の受診歴、予防接種歴の確認や、健康診断結果を閲覧した経験を尋ねたところ、第10回調査では2.8%が利用経験があったのに対し、第11回調査では3.4%と、大きな差はなかった(図表7)。今後の利用意向について、今後マイナンバーカードの取得を予定している人も含めて尋ねたところ、10.5%から12.0%とやや上昇していた。
しかし、今後の利用意向は、上昇はしているものの、既にカードを取得している人、または今後取得予定の人を対象としているにも関わらず、1割強にとどまり、患者や消費者の期待は高くはない。
4――おわりに
ニッセイ基礎研究所によるインターネット調査でも、マイナンバーカードの保険証としての利用意向やマイナポータルを通じて、受診歴、予防接種の確認や、健康診断結果の閲覧をすることについての利用意向はやや上昇していた。
今後、さらに利用を進めるためには、マイナンバーカードを保険証として利用すること、過去の特定健診の結果や診療・薬剤情報を利用すること、自分の健診結果や受診歴、予防接種歴を閲覧すること、それぞれについて、どういったメリットがあるか具体的に示していくことが必要となるだろう。
マイナポータルの利用方法についての周知も必要と思われる。2022年以降は、年間の医療費(保険診療分)が取得でき5、マイナポータルを通じて確定申告をする場合は、自動入力が可能となった。このように、マイナポータルの機能は拡充しているが、一般に広くは周知されていない。また、マイナポータルは、スマホからでもパソコンからでもアクセスできるが、パソコンを利用する場合はカードリーダーが必要となる。サイトへのアクセス方法の周知やサイトの見やすさも周知する必要があるのではないだろうか。
5 2021年9月以降、保険診療による医療費が取得できるようになった。
(2023年01月24日「保険・年金フォーカス」)
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- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
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