2022年04月26日

雇用関連統計22年3月-まん延防止等重点措置の解除を受けて、雇用関連指標が改善

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は前月から0.1ポイント低下の2.6%

完全失業率と就業者の推移 総務省が4月26日に公表した労働力調査によると、22年3月の完全失業率は前月から0.1ポイント低下の2.6%(QUICK集計・事前予想:2.7%、当社予想も2.7%)となった。労働力人口が前月から13万人の増加となる中、就業者が前月から18万人増加し、失業者は前月から▲9万人減の179万人(いずれも季節調整値)となった。
労働市場への参加者が増える中で、就業者がそれを上回る増加となったことが失業者の減少につながっている。特に、労働需給に敏感な雇用者数は2月の前月差22万人増に続き、3月は同37万人増と大幅に増えており、内容的にも良い失業率の低下といえる。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
就業者数は前年差▲11万人減(2月:同▲35万人減)と6ヵ月連続で減少した。産業別には、製造業は前年差14万人増(2月:同3万人増)と3ヵ月連続で増加したが、卸売・小売が前年差▲39万人減(2月:同▲46万人減)と大幅な減少が続いたほか、生活関連サービス・娯楽が前年差▲10万人減(2月:同▲7万人減)と10ヵ月連続で減少した。宿泊・飲食サービスは前年差1万人増(2月:同10万人増)と3ヵ月連続で増加したが、コロナ前の19年3月と比べると▲52万人の大幅減少となっている。

雇用者数(役員を除く)は前年に比べ21万人増(2月:同▲2万人減)と3ヵ月ぶりの増加となった。雇用形態別にみると、非正規の職員・従業員数が前年差14万人増(2月:同10万人増)と2ヵ月連続で増加し、正規の職員・従業員数が前年差7万人増(2月:同▲12万人減)と3ヵ月ぶりに増加した。

2.宿泊業の休業率は高止まり

主な産業別休業率 休業者数は243万人となり、前年に比べて22万人の増加(2月:同12万人増)となった。休業率(休業者/就業者)を産業別にみると、飲食店(2月:9.5%→3月:5.4%)、娯楽業(2月:5.3%→3月:4.1%)は低下したが、宿泊業(2月:6.1%→3月:6.7%)は高止まりした(休業率は原数値)。

まん延防止等重点措置は3/21に解除され、飲食業の多くが通常営業に戻る一方、宿泊業では事業の再開が遅れていることがうかがえる。

3.有効求人倍率の改善が続く

有効求人倍率の推移 厚生労働省が4月26日に公表した一般職業紹介状況によると、22年3月の有効求人倍率は前月から0.01ポイント上昇の1.22倍(QUICK集計・事前予想:1.22倍、当社予想も1.22倍)となった。有効求職者数が前月比▲0.6%と2ヵ月ぶりに減少する一方、有効求人数が同0.2%と2ヵ月ぶりに増加した。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.05ポイント低下の2.16倍となった。新規求人数は前月比3.9%の増加となったが、新規求職申込件数が同4.6%と新規求人数の増加幅を上回った。
 
まん延防止等重点措置が3/21で終了したことを受け、3月の雇用関連指標は改善した。なお、労働力調査は、毎月の末日に終わる1週間の就業状態を調査しているため、まん延防止等重点措置解除後の労働市場の状態が反映されている。

飲食、宿泊などの対面型サービス業は引き続き厳しいが、足もとでは外食、旅行などの需要は持ち直している。行動制限が解除された状態が維持されれば、需要の回復が対面型サービス業の雇用にも好影響を及ぼすことが見込まれる。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2022年04月26日「経済・金融フラッシュ」)

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