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日経平均の見通し-2022年末3万2,000円を予想
金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト 井出 真吾
1――終わってみれば3万円回復ならず
早期の3万円回復が難しいことは、『日経平均3万円回復は来年以降に持ち越しか』(2021年10月19日付け)で指摘したが、それどころか、図表1からは日経平均の上値が徐々に切り下がったようにも見える。
米FRB(連邦準備制度理事会)の利上げ前倒し観測が強まったことやオミクロン株が海外で流行していることもマイナス材料だが、最大の理由は日本株の魅力が薄れたことだろう。米国などと比べて見劣りする成長戦略、相変わらず分配重視の日本の政治に海外投資家だけでなく国内投資家も呆れているように見える。
2――日本企業の増益基調は続く見通し
景気拡大の影響は日本企業の業績見通しにも表れている。東証1部の1,058社について業績見通しを集計したところ、今期の純利益は会社予想31.5兆円の前期実績比52%増、市場予想(アナリスト予想)の33.2兆円はさらに5%ほど高い水準だ。会社予想が保守的なことを考えると21年度の業績は市場予想に近づくと想定される。
さらに来期の市場予想は36.4兆円で今期予想より10%ほど高い。原材料費や物流費の高騰によるコストの増加は気掛かりだが、仮に来期の増益率が市場予想の半分の5%程度に下がったとしても、業績改善は株価の実力水準を押し上げる要因になる。
3――米FRBは利上げを急がない可能性も
だが、22年春頃には21年の物価高騰から1年が経過するため、物価上昇率が下がってくる可能性もある。消費者物価などの上昇率を「前年同月比」で測る数字のマジックだ。
足元の米CPI(消費者物価指数)上昇率は過去30年間でみても極めて高い水準にある。ただ、3%を超えるインフレが続いたのは過去に3回あったが、最長でも14ヶ月で、いずれも1年程度で落ち着いた。
そもそも冷静に考えれば、物価高騰の主な理由は供給制約であり、それを金融政策でコントロールすることには無理がある。利上げで需要を抑えることはできても、原材料や労働力などの供給を拡大することはできないからだ。
FRBは21年12月のFOMC(公開市場委員会)で22年中の3回利上げを示唆したが、先述のように物価上昇率が落ち着いてくれば、市場では「利上げを急ぐ必要はない(急いでも無意味)」という雰囲気が広がるのではないか。
米国では株価上昇による資産効果が消費を支えている面もあり、11月に実施される米中間選挙の直前に株価急落を招くことはFRBもバイデン政権も絶対に避けたいはずだ。このように考えると、もし22年前半にFRBが利上げしなければ、22年中の利上げは1回(12月)にとどまる可能性が出てくる。その場合、株式市場では安心感が広がるだろう。
4――徐々に下値を切り上げる展開か
23年3月期の業績予想が出揃う22年5月には日経平均EPS(1株あたり純利益)が切り上がると想定される。仮に会社予想が市場予想に届かなければ「増益幅が物足りない」として市場は一時的に株価下落で応じるかもしれないが、失望売りが一巡すると業績改善を素直に織り込み、株価は徐々に下値を切り上げるだろう。
5――自動車産業に期待されるけん引役
こうした動きを受けてアナリストによる自動車関連企業の業績見通し引き上げが相次いだ。集計対象21社の経常利益合計額は来期21%増える見込みで、社数ベースでは約9割の企業が増益予想(今期予想比)となっている。今期の需要が先送りされた分のリベンジ生産が来期の業績予想に反映され始めたのだろう。
あくまで現時点ではアナリストの予想に過ぎないが、年明け以降、会社側から業績に関する好材料が出てくると、自動車産業のほかにも素材、機械など幅広い業種に恩恵が及ぶことが想定される。
仮に「ねじれ国会」になれば政治の停滞を招きかねない。象徴的なのは国会同意人事で、2007年の参院選後の「ねじれ国会」では日銀総裁が戦後初の空席となった。皮肉にも黒田総裁の任期満了は23年4月8日に控えている。
株式市場はコロナショック後の未曾有の金融緩和に支えられてきただけに、要人発言などに振らされやすい。日経平均は短期的な乱高下を繰り返しつつ、実体経済の回復を徐々に織り込む形で22年末に3万2000円程度を目指す展開を想定する。
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03-3512-1852
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
2023年より現職
【加入団体等】
・日本ファイナンス学会理事
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト
(2021年12月29日「基礎研レポート」)
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