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「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(5)―2018年婚姻届全件分析(再婚女性&総括編)―
 
                                                生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子
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はじめに
これまでの4回のレポートについては、大きな反響をいただいた。
特に、統計的に示される結婚ピーク年齢と、多くの人々が平均初婚年齢を根拠に思い描く結婚適齢期との間には看過しがたい差があり、社会における「過大な晩婚化イメージ」が浮き彫りになったことについては、筆者にとっても重要な発見であった。
第3弾で初婚女性の成婚年齢について詳説したが、一般に晩婚化の象徴として知られている「平均初婚年齢」の上昇は、結婚ピーク年齢の上昇というよりも、高齢化によってこれまで成婚が発生していなかったような高年齢層での婚姻によって引き上げられていた。1件1件は統計的には極めて少ない発生頻度での高年齢者の成婚が、60代以降の男女でも各歳において発生しており、これによって平均結婚年齢が実際の結婚最頻値年齢よりも3歳以上押し上げられ、あたかも結婚適齢期が30歳近くまで大きく上昇したかのような錯覚を人々にもたらしていることを解説した。
初婚同士の成婚において、初婚男性の成婚ピークは27歳、初婚女性の成婚ピークは26歳であり、成婚発生時期がそのピーク年齢を挟んだ前後の極めて短期に集中している、という結果は、分析を行った当事者である筆者にとっても衝撃的なデータであった。
レポートの第4弾の最後においては、初婚男女の成婚の年齢別発生件数の棒グラフが描き出す成婚ピーク年齢を頂点とした「鋭角の山」が動く可能性はあるのか、についても解説した。初婚の男女では、ピーク年齢後に成婚件数が急激に減少していく理由が異なることについて、同じ年齢における未婚者割合(ならびに数)の男女の違い(男性の方が圧倒的に多い)や、成婚に向けた活動傾向の男女差から解説した。
最終回の第5弾では、再婚女性の結婚年齢の分析結果を解説するとともに、第1回から第5回までの全組み合わせの結婚適齢期のまとめを最後に掲載することとしたい。
今回もデータソースには、厚生労働省「人口動態調査」に掲載されている、2018年における婚姻届の集計結果を用いているため、ニッポンの結婚、についての全数分析1の結果である。
1 全数分析=単純にその年に役所に提出された届のすべてではない。ある条件の下で、集計対象となる届についての分析であるが、提出件数すべてと勘違いしてしまう読者もいるようなので、注意喚起しておきたい。
1――相手の婚歴は初婚:再婚=4:6
そのうち初婚男性との婚姻は3万1312件で43%、再婚男性との婚姻は4万2004件で57%である(図表1)。
再婚女性の成婚相手の婚歴状況と比べると、再婚男性は相手の初婚・再婚の割合が、51%・49%(ほぼ5:5)となっている3ことから、女性の方が再婚の場合でも相手の婚歴に関してこだわりが薄い、もしくは男性の方が女性よりも初婚相手を好む傾向があることが示されている4。
第4弾で解説したように、あくまでも初婚相手がよいといったこだわりを持ってしまうと、成婚ピーク年齢を過ぎた後のパートナー探しはより困難なものとなっていく5、ということを再度注意喚起しておきたい。
2 国のデータにおいて各歳集計の対象となる婚姻件数は、単に入籍するだけでなく、同年内に生活を共にする、もしくは挙式を行っている、という生活実態も伴っているであろうと思われる成婚のみとなる。ただし、実態を伴ってはいるものの年度をまたいで入籍、挙式の順となったケースなどは欠落する。ただ、全体の規模から考えて適齢期分析に影響する条件とまではいえない。
3 シリーズ第2弾参照。
4 ちなみに初婚男性の相手の婚歴は初婚:再婚=92%:8%、初婚女性の相手の婚歴は初婚:再婚89%:11%であり、初婚再婚どちらのケースでも、男性は女性よりも初婚相手を好む傾向がみられる。
5 年齢上昇とともに既婚・離別・死別割合が高まるため、相手の初婚ステータスにこだわったまま自らの年齢が上昇することは、より成婚相手探しを困難にする。これは男性がいくつになっても20代の女性を好む(未婚者が多い)という傾向/ニッセイ基礎研究所・エウレカ共同調査「日本の未婚化要因分析のためのアンケート調査」(2020年8月)とリンクしているともいえるかもしれない。
2――再婚女性の初婚男性との成婚ピーク年齢は33歳
初婚女性の婚姻届が5割に到達する年齢は27歳である6が、同じ27歳時に再婚女性の初婚男性との成婚数が年間1000件を超え始める(図表2)。そして初婚女性の初婚男性との成婚が8割に到達する年齢が32歳であり、再婚女性の成婚ピーク33歳となっている、という関係性がみえてくる。
初婚女性の約8割が32歳までにほぼ初婚男性との結婚をし終えていることから、それ以前(初婚女性の適齢期あたり)から、初婚女性の離婚件数が蓄積し、30代前半になると、これらの比較的若くして離婚した女性が初婚男性との再婚をし始める、といった状況がデータからは推測できる。
初婚女性と再婚女性の「初婚男性」との成婚年齢データの比較からは、初婚女性は33歳以降になると、主に20代で離婚した女性が再婚にむけて市場に参入し、これが初婚男性との成婚を従来以上に難しくする要因の1つではないかと考えられる7。
6 「ニッポンの結婚適齢期」シリーズ第2弾 初婚女性その1を参照。
7 結婚支援の現場からは、婚歴のある男女はITマッチングにおいては条件検索ではじかれ易いことから不利な傾向にあるものの、異性とのコミニューケーションにおいては婚歴のある男女の方が長けている傾向が強いことから、結婚支援イベントなど対面においては、初婚相手へのPR力が初婚男女よりも強い傾向がある、という報告があがっている。
3――再婚男性との成婚ピーク年齢は38歳
再婚男性との成婚ピーク(最頻値)年齢は、38歳の1582件である。婚姻届の過半数に到達する年齢が41歳、7割が48歳、8割が52歳であるので、ピーク年齢から急激に成婚数が落ちるというよりも、50歳あたりまでは緩やかに減少する、という成婚状況となっている。再婚女性が再婚男性との成婚を目指すケースでは、初婚男性との成婚に比べて8割到達年齢で10年の差(52歳-42歳)があり、かなり長い期間のモラトリアムがある、ということが示されている。
また、相手の男性の婚歴別の成婚年齢を比較したグラフを見ると、再婚女性が初婚男性と成婚するケースは、女性の年齢が30代前半を中心とした比較的鋭角な山となる一方、再婚男性と成婚するケースは30代前半から50代前半にかけて緩やかに下がる台形のような形となっている(図表4)。
(2021年01月18日「基礎研レポート」)
関連レポート
- 「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(4)―2018年婚姻届全件分析(初婚女性その2)―
- 「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(3)―2018年婚姻届全件分析(初婚女性その1)―
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- 「年の差婚」の希望と現実-未婚化・少子化社会データ検証-データが示す「年の差」希望の叶い方
- 初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(上)-未婚少子化データ考- 平成ニッポンの夫婦の姿
- 初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(下)-未婚少子化データ考-変わり行く2人のカタチ
 
                                        03-3512-1878
- プロフィール
 1995年:日本生命保険相互会社 入社
 1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向
 【委員歴/ご依頼順(現職優先)】
 1.政府
 ・【総務省統計局】
 「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
 ・【こども家庭庁】
 「若い世代視点からのライフデザインに関する検討会」構成員(2025年度)
 「若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ」構成員(2024~2025年度)
 「令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員」(2023年度)
 ・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】
 「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
 「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
 ・【内閣府男女共同参画局】
 「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
 ・【内閣府】
 「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
 「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~2018年)
 「地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
 2.自治体
 ・【富山県】
 「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
 「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
 「富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員」(2022年)
 ・【高知県】
 「元気な未来創造戦略推進委員会 委員」(2024年度~)
 「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年度)
 ・【三重県】
 「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年度~)
 ・【愛知県豊田市】
 「豊田市総合計画推進会議 有識者委員」(2025年度~)
 ・【石川県】
 「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
 ・【長野県伊那市】
 「伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般」(2020年~2021年)
 ・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】
 「子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー」(2021年)
 ・【愛媛県松山市】
 「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会・結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
 3.民間団体
 ・【東京商工会議所】
 東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
 ・【愛媛県法人会連合会】
 えひめ結婚支援センターアドバイザー委員(2016年度~)
 ・【公益財団法人東北活性化研究センター】
 「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
 「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)
 ・【中外製薬株式会社】
 「ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会(通称:研究倫理委員会) 委員」(2020年~)
 ・【主宰研究会】
 地方女性活性化研究会(2020年~)
 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
 日本労務学会 会員
 日本性差医学・医療学会 会員
 日本保険学会 会員
 性差医療情報ネットワーク 会員
 JADPメンタル心理カウンセラー
 JADP上級心理カウンセラー
天野 馨南子のレポート
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| 2025/10/20 | 縮小を続ける夫婦の年齢差-平均3歳差は「第二次世界大戦直後」という事実 | 天野 馨南子 | 研究員の眼 | 
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