- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 暮らし >
- 消費者行動 >
- 年代別に見たコロナ禍の行動・意識の特徴~買い物手段編-全年代でデジタル利用増、高年齢ほどリアル店舗の利用控え、若者の一部は働き方変容でリアル店舗利用増も
年代別に見たコロナ禍の行動・意識の特徴~買い物手段編-全年代でデジタル利用増、高年齢ほどリアル店舗の利用控え、若者の一部は働き方変容でリアル店舗利用増も

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1――はじめに~コロナ禍における行動・意識の変容、年代別の特徴は?
調査対象全体の結果については、すでに調査結果概要として報告しているが1、本稿から数回に分けて、年代別の傾向について、主な行動変容や意識面の特徴に注目して分析していきたい。なお、主な行動変容等としては、買い物手段や移動手段、食生活、教養娯楽、働き方、感染に関わる不安などがあげられるが、本稿では買い物手段の変容について分析する。
1 ニッセイ基礎研究所「2020年度特別調査 第1回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」 調査結果概要」(2020/7/9)および「2020年度特別調査 第2回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」 調査結果概要」(2020/10/15)
2――コロナ禍における買い物手段の変容
まず、20~69歳全体の状況を概観する。1月頃のビフォーコロナと比べて9月末では、スーパーやドラッグストアなどのリアル店舗の利用では減少が目立つ(増加の割合に対して減少の割合が高い)一方、ネットショッピングやキャッシュレス決済サービスなどのデジタル手段の利用では増加が目立つ(図表1)。なお、リアル店舗の中でも温度差がある。スーパーなどの食料や日用品といった生活必需品を買う店舗では減少の割合は2割前後だが、デパートやショッピングモールなど主に衣料品や贅沢品を購入する店舗では約4割を占める。
よって、リアル店舗の利用は生活必需品のまとめ買いなど必要最低限にとどめる一方、衣料品や定期的に購入する日用品はネットショッピングを利用する機会が増えるなど、リアル店舗の利用の一部がネットショッピングへとシフト(デジタルシフト)している可能性がある。
デジタル利用は全体的に増え若いほど増加、若者の一部ではリアルシフトも。
次に、年代別に買い物手段の利用の増減を見ると、リアル店舗の利用では、20歳代のスーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアの利用を除けば減少が目立ち、高年齢ほど減少の割合は高い傾向がある(図表2(a)~(d))。一方、20歳代では、全てのリアル店舗の利用において増加の割合が全体を+5%pt以上上回る。また、若いほど増加の割合は高い傾向がある。
つまり、新型コロナウイルスによる重症化リスクの高い高年齢ほどリアル店舗の利用を控える一方、20歳代の一部では、スーパーをはじめ生活必需品を購入する店舗の利用がむしろ増える状況がある。
よって、若い就業者の一部では在宅時間が増えたことで、家での食事回数や近隣のスーパーなどへ行く機会も増えたことで、コロナ禍でも生活必需品を買うリアル店舗の利用が増えたのだろう。
なお、若いほどデジタル手段の利用が増加した層が多いが、これは、ビフォーコロナからデジタル手段の利用水準が高く、端末の保有状況やITリテラシーの高さといった土台が整っていたことで、変化が加速しやすかったためだろう。
総務省「2019年通信利用動向調査」によると、過去1年間でインターネットでの商品・サービスの購入・取引のある割合やスマートフォンの保有率は、若いほど高い傾向がある(図表5)。
経済活動が再開されて約1カ月後の6月末と比べて、さらに3カ月が経過した9月末では、感染防止対策が習慣化するなど、消費者のコロナ禍における経験値が上がっている。よって、行動変容の要因も感染不安を土台としたものから、徐々に元の特徴が色濃くあらわれるようになった可能性がある。
なお、図表2において20歳代では、デジタル手段の利用において増加の割合が比較的高い一方、減少の割合も全体を+5%pt以上上回る。そこで、ネットショッピングの利用が減少した層について、スーパーなどのリアル店舗の利用の増減を見ると、20歳代では増加の割合が高い(図表6)。
前述の通り、コロナ禍で在宅勤務が増えるなど生活が変わることで、若い年代ではリアル店舗の利用が増える状況もある。よって、元々ネットショッピングの利用の多かった若者の一部では、ネットショッピングからリアル店舗の利用へとリアルシフトも生じているようだ。
2 久我尚子「感染不安と消費行動のデジタルシフト」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2020/8/18)では、ソーシャルディスタンスを保つことの難しい低年齢児を持つ割合の高い30歳代で感染不安のある割合が比較的高く、デジタルシフト傾向も比較的強くあらわれていた。
3――まとめ~コロナ禍でデジタルシフトが加速、日本のEC化率は低く、ポストコロナでも伸長の余地あり
11月頃から、海外では新型コロナウイルス感染症のワクチン開発において安全性や有効性が確認されたという報道が出ている。行動制限が緩和される日が少しでも早く近づくことを期待したいが、日本で承認が下り、ワクチン接種が普及するまでには、しばらくの時間を要するだろう。よって、少なくとも2021年の上期までは現在のウィズコロナにおける行動変容の状況が続くと見られる。
また、ネットショッピングなどを利用する買い物手段のデジタルシフトは、新型コロナの感染拡大によって新たに登場した動きではなく、ビフォーコロナから見られてきたものだ。コロナ禍を契機に加速したものであり、まだ伸長の余地もある。
(2020年12月08日「基礎研レター」)

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/22 | 家計消費の動向(二人以上世帯:~2025年2月)-物価高の中で模索される生活防衛と暮らしの充足 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2025/04/14 | 「トキ消費」の広がりとこれから-体験が進化、共有が自然な消費スタイル、10年後は? | 久我 尚子 | 研究員の眼 |
2025/04/08 | 2025年の消費動向-節約一服、コスパ消費から推し活・こだわり消費の広がり | 久我 尚子 | 基礎研マンスリー |
2025/04/01 | 「こづかい」が20年で7割減少?-経済不安、キャッシュレスやサブスクなど消費のデジタル化の影響も | 久我 尚子 | 基礎研レター |
新着記事
-
2025年05月01日
日本を米国車が走りまわる日-掃除機は「でかくてがさつ」から脱却- -
2025年05月01日
米個人所得・消費支出(25年3月)-個人消費(前月比)が上振れする一方、PCE価格指数(前月比)は総合、コアともに横這い -
2025年05月01日
米GDP(25年1-3月期)-前期比年率▲0.3%と22年1-3月期以来のマイナス、市場予想も下回る -
2025年05月01日
ユーロ圏GDP(2025年1-3月期)-前期比0.4%に加速 -
2025年04月30日
2025年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【年代別に見たコロナ禍の行動・意識の特徴~買い物手段編-全年代でデジタル利用増、高年齢ほどリアル店舗の利用控え、若者の一部は働き方変容でリアル店舗利用増も】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
年代別に見たコロナ禍の行動・意識の特徴~買い物手段編-全年代でデジタル利用増、高年齢ほどリアル店舗の利用控え、若者の一部は働き方変容でリアル店舗利用増ものレポート Topへ