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コロナ禍の家計消費の推移-増えた巣ごもり消費と激減した外出型消費の現状は?

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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- 個人消費は新型コロナウイルスの感染拡大によって大幅に落ち込んだが、経済活動の再開を受けて6月に大幅に改善した。7月以降は全国的に感染が再拡大したことを背景に回復基調は足踏みが続いているが、「GoToキャンペーン」などにより、「巣ごもり」傾向の強かった消費生活において、外へ向かう動きも一部で活発化している 。
- 総務省「家計調査」にて3~9月の二人以上世帯の消費支出の内訳を見ると、全体的に4・5月をピークに6月以降は傾向が転じ、コロナ禍で需要が増したものは増加率が下がり、需要が減ったものは回復基調を示している。落ち込み幅が比較的大きかった項目では、巣ごもり生活の始まった3月と比べて状況が改善したものもある。
- 外食は回復基調にあるが、昼間と比べて夜間の戻りは鈍いようだ。「GoToイート」に期待したいが、感染が収まらない中では約半数の消費者には利用意向がないため、効果は限定的なものにとどまるだろう。外食需要の一部はテイクアウトやデリバリーなどの中食需要へシフトするとともに、中食需要自体も一層増しているようだ。
- 旅行も回復基調にあるが、交通費を含むパック旅行費と比べて、自家用車で近場へ出かけて宿泊施設だけを利用する「マイクロツーリズム」によって、宿泊料の回復基調が強い。今後とも「GoToトラベル」に期待したいが、イート同様、約半数に利用意向はないため、効果は一部の利用積極層によるものにとどまるだろう。
- 巣ごもり生活で需要の増したパソコンの支出額は緊急事態宣言が発出された4・5月のほか、在宅勤務の定着化が一層進む中で、給付金や夏の賞与の影響により7月にもピークがある。ゲーム機の支出額は全国一斉休校の3月や、感染再拡大の中で帰省が自粛された夏休みの8月に増えており、子どもの生活と連動している。
- 今後の個人消費は、感染再拡大による外出自粛や収入減少により消費が控えられる懸念がある。すでに飲食業等の非正規雇用者では雇い止めなどの影響が出ており、家計収入全体で見ても世帯主の勤め先収入は6月以降、前年より減少している。生活困窮世帯に対して、各自の事情に合わせた手厚い支援策が継続的に求められる。
■目次
1――個人消費全体の推移~6月に大幅に改善したが7月以降は足踏み状態
2――消費内訳の変化
~6月以降、巣ごもり消費はピークアウト、外出型消費は回復基調だが利用控えも
1|食費の推移
~外食は回復基調にあるが一部中食需要へシフト、GoToに期待したいが効果は限定的か
2|交通費の推移
~公共交通機関は回復基調にあるが利用控えが続く、一部セルフ手段へのシフトも
3|教養娯楽費の推移
~旅行はGoToトラベル効果もあり回復基調だが、やはり感染再拡大が懸念
4|その他
~スーツやメイクアップ用品は夏頃に二番底、スーツは働き方変容でポストコロナでも厳しいか
3――今後の個人消費
~雇用環境の悪化による収入減少で消費控えの懸念、生活困窮世帯の支援必要
(2020年11月12日「基礎研レポート」)

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
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