2020年04月03日

「名古屋オフィス市場」の現況と見通し(2020年)

金融研究部 主任研究員   吉田 資

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1. はじめに

名古屋のオフィス市場では、事務所の新規開設や拡張移転が活発であった一方、新規供給は限られており、結果として、空室率は過去最低水準まで低下した。一段と逼迫した需給環境を反映し、成約賃料はファンドバブル期のピークを大きく上回った。本稿では、名古屋のオフィス市況を概観した上で、2024年までの賃料予測を行う。但し、本稿では新型肺炎(コロナウィルス)の感染拡大の影響は加味していない。影響を含めた賃料予測は後日報告したい。
 

2. 名古屋オフィス市場の現況

2. 名古屋オフィス市場の現況

2-1. 空室率および賃料の動向
全国主要都市の空室率は、いずれの都市も低下傾向で推移している。三幸エステートによると、名古屋市の空室率(2019年12月時点)は2.6%となり、過去最低水準まで低下した(図表1)。2019年は、事務所の新規開設や拡張移転が活発であった一方、新規供給が限られており、オフィス市場の需給は一段と逼迫した。

名古屋市の空室率を規模別にみると、全ての規模1で低下基調が続いている。特に、大規模ビルの空室率は、足元で一段と改善が進んでおり、1.0%まで低下した。(図表2)。
図表-1 主要都市のオフィス空室率/図表-2 名古屋オフィスの規模別空室率
名古屋市の成約賃料は、空室率の改善を背景に上昇が続いている。2019 年下期の成約賃料の上昇率は前期比+4.4%、前年同期比+4.8%となった。成約賃料は直近のボトム(2012年下期)から+61.6%の上昇となり、ファンドバブル期のピーク(2008年下期)を大きく上回っている(図表3)。
図表-3 主要都市のオフィス成約賃料(オフィスレント・インデックス)
2019年の空室率と成約賃料の変化を主要都市で比較すると、名古屋市では、空室率の改善幅が最も大きかった一方、賃料の上昇率は中位に留まった。(図表4)。

賃料と空室率の関係を表した名古屋市の賃料サイクル2は、2013年上期を起点に「空室率低下・賃料上昇」局面が継続している。2015年から2017年にかけて大量供給があったものの、需給バランスが崩れることなく、空室率低下、賃料上昇の局面が長期間にわたり続いている(図表5)。
図表-4 2019年の主要都市のオフィス市況変化/図表-5 名古屋オフィス市場の賃料サイクル
 
1 三幸エステートの定義による。大規模ビルは基準階面積200坪以上、大型は同100~200坪未満、中型は同50~100坪未満、小型は同20~50坪未満。
2 賃料サイクルとは、縦軸に賃料、横軸に空室率をプロットした循環図。通常、(1)空室率低下・賃料上昇→(2)空室率上昇・賃料上昇→(3)空室率上昇・賃料下落→(4)空室率低下・賃料下落、と時計周りに動く。
2-2. オフィス市場の需給動向
三鬼商事によると、名古屋ビジネス地区では、総ストックを表す賃貸可能面積は、新規供給量が限定的であったことに加え、「中日ビル」をはじめとして、再開発および建て替えに伴うビルの取り壊し(滅失)が進んだことで、99.4万坪(2018年末)から97.5万坪(2019年末)へと1.9万坪減少した。また、テナントによる賃貸面積は、2010年から9年連続で増加していたが、昨年は96.7万坪(2018年末)から95.6万坪(2019年末)へと1.1万坪減少した(図表6、図表7)。

この結果、2019年末の名古屋ビジネス地区の空室面積は1.9万坪(前年比▲0.8万坪)となり、ファンドバブル期のボトムである5.6万坪(2007年末)の約1/3の水準まで減少している。
図表-6 名古屋ビジネス地区の賃貸可能面積・賃貸面積・空室面積
図表-7 名古屋ビジネス地区の賃貸可能面積・賃貸面積・空室面積の増減
また、2019年4月に「働き方改革関連法案」が施行され、2020年4月から中小企業も適用対象となる等、「働き方改革」への取り組みは重要度を増しており、オフィス需要にも影響を与えている。

帝国データバンクの「働き方改革に対する愛知県企業の意識調査(2019年12月時点)」によれば、「働き方に取り組んでいる」との回答が約6割を占め、前回調査(2018年8月時点)の約4割から増加した(図表8)。また、「取り組んでいる具体的な内容(業務改善)」について、「業務の集約化やプロセスの見直し・改善」との回答が4割弱を占めた(図表9)。こうした業務の集約化等の取り組みがオフィスの移転・拡張需要を押し上げている。

一方、「サテライトオフィスやテレワークの導入」との回答は6%に留まった(図表9)。ただし、「今後、新たに取り組む予定のある項目」では、「人事評価制度・賃金制度の変更、改善」に次いで回答が多かった(図表10)。名古屋でも、働く場所に関して多様な選択肢を用意し、従業員の働きやすい環境を整備する動きが進展しつつある。東京都心部と同様に3、サードプレイスオフィス市場の拡大がオフィス需要の新たな担い手となる可能性もあり、今後の市場動向を注視したい。
図表-8 働き方改革への取り組み状況
図表-9 取り組んでいる具体的内容(業務改善)/図表-10 今後、新たに取り組む予定のある項目(上位10項目)
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

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