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2025年10月03日

雇用関連統計25年8月-失業率、有効求人倍率ともに悪化

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は前月から0.3ポイントの大幅上昇

完全失業率と就業者の推移 総務省が10月3日に公表した労働力調査によると、25年8月の完全失業率は前月から0.3ポイント上昇の2.6%(QUICK集計・事前予想:2.4%、当社予想も2.4%)となった。

労働力人口が前月から4万人の減少となる中、就業者数が前月から21万人減少し、失業者数は前月から15万人増加の179万人(いずれも季節調整値)となった。労働市場から退出した人が増えるもとで、就業者数が減少、失業者数が増加しており、内容的にも悪い。
就業者数は前年差20万人増(7月:同55万人増)と37ヵ月連続で増加したが、増加幅は前月から大きく縮小した。男女別には、男性が前年差13万人減と3ヵ月連続で減少する一方、女性が前年差33万人増と42ヵ月連続で増加した。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
産業別には、医療・福祉(同17万人増)は12ヵ月連続で増加したが、製造業(前年差10万人減)、卸売・小売業(同20万人減)が5ヵ月連続で減少し、宿泊・飲食サービス業(同1万人減)は4カ月ぶりに減少した。

雇用者数(役員を除く)は前年に比べ52人増(7月:同90万人増)と42ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差52万人増(7月:78万人増)と22ヵ連続で増加する一方、非正規の職員・従業員数が前年差16万人減(7月:同14万人増)と8ヵ月ぶりに減少した。

2.有効求人倍率は3年7か月ぶりの低水準

厚生労働省が10月3日に公表した一般職業紹介状況によると、25年8月の有効求人倍率は前月から0.02ポイント低下の1.20倍(QUICK集計・事前予想:1.22倍、当社予想は1.23倍)となった。有効求職者数が前月比0.7%の増加となる一方、有効求人数が同▲1.0%の減少となった。有効求人倍率は22年1月(1.19倍)以来、3年7ヵ月ぶりの低水準となった。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.02ポイント低下の2.15倍となった。新規求人数が前月比▲0.5%の減少、新規求職申込件数が同0.7%の増加となった。

新規求人数(原数値)は前年比▲6.2%(7月:同▲1.2%)と4ヵ月連続で減少した。産業別には、建設業(前年比▲1.3%)、情報通信業(同▲5.6%)が3ヵ月ぶりに減少したほか、卸売・小売業(同▲12.7%)、宿泊・飲食サービス業(同▲10.7%)、生活関連サービス・娯楽業(同▲16.1%)が前年比二桁の大幅減少となった。
有効求人倍率の推移/産業別新規求人数
企業の人手不足感が非常に強いにもかかわらず、有効求人倍率が低迷している理由として、企業の求人がハローワーク以外のチャネルにシフトしていることを背景に、ハローワークにおける求人・求職動向が労働市場全体の需給関係を必ずしも反映しなくなっていることが挙げられる。

ただし、厚生労働省が8/26に公表した「雇用動向調査」によれば、ハローワークを通した入職者の割合は長期的に低下傾向が続いているが、24年は16.4%と前年の13.9%から2.5ポイント上昇した。足もとの有効求人倍率の低迷は労働市場の需給バランスの弱含みを一定程度反映している可能性がある。
 
なお、厚生労働省の「労働経済動向調査」では、欠員率が24年2月調査の3.8%をピークに25年5月調査では3.1%まで低下していたが、欠員率を算出する際に用いられる「常用労働者数」及び「未充足求人数」に関する事項については、25年5月調査をもって調査が終了してしまった。同指標は日銀の展望レポートでも労働需給関連指標のひとつとして用いられていた。労働需給の実態把握が困難となるなかで、これらの項目の調査、公表が終了してしまったことは極めて残念である。
入職経路別の入職者の割合/欠員率の推移

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年10月03日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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