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- 「気になるけれど始めない」躊躇する潜在投資家-NISA“意向”者への理解を深める
2025年05月23日
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4――NISA意向者の資産運用に対する考え方
次に、同じく弊所が実施した調査における[資産運用に関する考え方]の回答結果(図表1)をみると、NISA意向者で「資産運用について関心がある」(71.6%)や「よい商品・サービスがあればこれまで取引経験のない金融機関でも取引を考えたい」(50.1%)がNISA利用者と同程度に高く、NISAへの意向が資産運用への関心の高さに裏付けられていることが改めて確認できる。
一方、[リスク志向]をみると、「少しでも元本割れの可能性があれば、たとえ高収益が期待できるとしても預け入れ・投資を考えない方である」(49.2%)が高いことや「多少のリスクがあっても、収益性の高い貯蓄・投資商品を利用したい」(24.5%)がNISA利用者ほどは高くないことから、リスクに対しては保守的な姿勢が伺える。
また、[資産運用プロセス]の項目をみると「資産運用はじっくり人と相談しながら考えたい」(63.8%)や「ある程度以上の資産ができたら、資産の総合的な運用や管理は専門家に委託したい」(39.3%)が他の層に比べ特徴的に高くなっており、先の金融知識に関する自己評価の低さが慎重さや他者への依存という形で資産運用プロセスにも影響していることがわかる。
一方、[リスク志向]をみると、「少しでも元本割れの可能性があれば、たとえ高収益が期待できるとしても預け入れ・投資を考えない方である」(49.2%)が高いことや「多少のリスクがあっても、収益性の高い貯蓄・投資商品を利用したい」(24.5%)がNISA利用者ほどは高くないことから、リスクに対しては保守的な姿勢が伺える。
また、[資産運用プロセス]の項目をみると「資産運用はじっくり人と相談しながら考えたい」(63.8%)や「ある程度以上の資産ができたら、資産の総合的な運用や管理は専門家に委託したい」(39.3%)が他の層に比べ特徴的に高くなっており、先の金融知識に関する自己評価の低さが慎重さや他者への依存という形で資産運用プロセスにも影響していることがわかる。
5――NISA意向者の浮動性~保険にするか投資にするか
6――まとめ
本稿で「躊躇する潜在投資家」と表現したNISA意向者ついては、ここまでの分析から以下のことがわかった。
NISAを取り扱う金融機関からすれば、この「躊躇する潜在投資家」は、資産運用への関心や情報ニーズの高さをみても、将来的な顧客化が十分に期待できる層といえる。
そして顧客化を実現するためには、分析から明らかになった決定力・行動力の乏しさや金融資産の保有傾向を踏まえ、適切なサポートと心理的なハードルに寄り添ったアプロ―チが重要と考えられる。具体的には、正しい顧客像の想定、そして「安心感」「わかりやすさ」「自分ごと化」を重視したコミュニケーション設計を行うことが効果的な施策となると考えられる。
「躊躇する潜在投資家」への理解を深め、そして戦略的な語り掛けを行うことが、金融機関の顧客との信頼関係の構築、ひいては個人による資産形成の推進につながると期待される。
- 女性/若年現役層(20~40代)/中間収入層(300~700万円)に多く、NISA利用者やNISA未認知者等とは属性的特徴が異なる。
- リスクへの許容度は低く、資産運用時の意思決定では慎重かつ他者依存的な姿勢を持つ。
- 「投資の方法がよくわからない」を理由に躊躇しているが、金融リテラシーが低いわけではなく、自身の金融知識に対する自己評価が低い。その背景には、知識の吸収に対する前向きな意識と後ろ向きな行動の矛盾感があると考えられる。
- 保険商品へのニーズと信頼感が高く、加入率も比較的高いことが、躊躇を助長している可能性がある。
NISAを取り扱う金融機関からすれば、この「躊躇する潜在投資家」は、資産運用への関心や情報ニーズの高さをみても、将来的な顧客化が十分に期待できる層といえる。
そして顧客化を実現するためには、分析から明らかになった決定力・行動力の乏しさや金融資産の保有傾向を踏まえ、適切なサポートと心理的なハードルに寄り添ったアプロ―チが重要と考えられる。具体的には、正しい顧客像の想定、そして「安心感」「わかりやすさ」「自分ごと化」を重視したコミュニケーション設計を行うことが効果的な施策となると考えられる。
「躊躇する潜在投資家」への理解を深め、そして戦略的な語り掛けを行うことが、金融機関の顧客との信頼関係の構築、ひいては個人による資産形成の推進につながると期待される。
(2025年05月23日「基礎研レポート」)
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03-3512-1795
経歴
- 【経歴】
2018年 日本証券業協会 入職
2024年 株式会社ニッセイ基礎研究所 入社
【加入団体等】
・日本マーケティング・サイエンス学会
西久保 瑛浩のレポート
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