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温室効果ガスの削減目標であるSBTとその目標設定について~温室効果ガス削減イニシアティブSBTi~

総合政策研究部 研究員 土居 優
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Scope3についてはWB2℃水準または1.5℃水準で削減することが求められる(図表5)。Scope3がScope1~3の 合計の40%を超えない場合は、目標設定は求められない。一方で、Scope3がScope1~3の 合計の40%を超える場合は、目標設定が必要17となり、Scope3排出量全体の2/3(67%)以上をカバーすることが求められている。Scope3排出量全体の100%ではなく2/3(67%)以上とするのは、Scope3が企業の管理範囲を超える排出源であるため、全体の把握が困難であるということを考慮した措置であると考えられる。具体的にはGHGプロトコルの企業バリューチェーン算定報告基準に基づき、Scope3の15カテゴリー(図表3)それぞれで設定される最小バウンダリ18を対象に、それらの合計値が2/3(67%)以上になるよう目標範囲を設定する。
また、Scope3ではACAやSDAのほかに、前年対比で7%の削減を目指す経済的原単位削減19や物理的原単位削減20、その他にサプライヤーや顧客に対し、気候科学に基づく目標設定を求めるサプライヤー/顧客エンゲージメント目標21も認められており、これらのいずれか、もしくは併用して目標設定する必要がある(図表5)。
17 化石燃料の販売や流通に関連する場合は、Scope3の排出比率に関わらず販売した製品由来のScope3の目標設定が必要になる。
18 最小バウンダリは「Corporate Value Chain (Scope 3) Accounting and Reporting Standard」Table [5.4] Description and boundaries of scope 3 categoriesで分類されるMinimum boundaryのこと。
19 経済的原単位削減は付加価値あたりの排出量を前年比で少なくとも7%削減すること。
20 物理的原単位削減は部門別脱炭素アプローチ(SDA)の関連する部門削減経路に沿った原単位削減。もしくは、総排出量の増加につながらず、物量あたりの排出量の前年比で少なくとも7%削減すること。
21 サプライヤー/顧客エンゲージメント目標はサプライヤーまたは顧客に気候科学に基づく削減目標の設定を勧める目標。
5――中小企業向け削減目標について
6――おわりに
しかし、Scope3の排出削減は、排出源がサプライチェーン全体に広がるため、管理や把握が難しいという課題がある。このため、Scope3については条件が緩和され、柔軟な目標設定が可能となっている。また、中小企業向けSBTの制度でも、Scope3が対象外となっており、中小企業でも取り組みやすい仕組みが用意されている。
SBTを通じた削減目標の設定により、国際社会と歩調を合わせたGHG排出量の削減が可能になる。2050年のカーボンニュートラル実現という国際的な目標に向け、SBTへの参加が一層広がり、持続可能な社会の実現に向けた動きが加速することを期待したい。
(2025年02月27日「研究員の眼」)
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03-3512-1839
- 【職歴】
2016年 日本生命保険相互会社入社
(資産運用部門にて資金繰り、クレジット審査、ベンチャー投資業務に従事)
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