2025年01月15日

インド消費者物価(24年12月)~12月のCPI上昇率が2カ月連続で低下、食品インフレ和らぐ

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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インド統計・計画実施省が1月13日に公表した消費者物価指数(以下、CPI)によると、2024年12月のCPI上昇率は前年同月比5.2%と、前月の同5.5%から低下し(図表1)、事前の市場予想(同5.3%)1を若干下回った。
 

地域別のCPI上昇率をみると、都市部が前年同月比4.6%(前月:同4.9%)、農村部が同5.8%(前月:同6.0%)となり、それぞれ2カ月連続で低下した。

12月のCPIの内訳をみると、主に食品価格の緩和により低下したことが分かる。

まず食品は前年同月比8.4%となり、前月の同9.0%から低下した(図表2)。食品のうち、まず野菜が同26.6%(前月:同29.4%)と生鮮食品の入荷が進んで価格高騰が緩和された。特にインドで日常的に必須な野菜とされるトマトは前月比▲16.1%、タマネギは同▲11.8%、ジャガイモは同▲4.9%と揃って下落した。また食用油(前年同月比14.6%)は昨年9月の輸入税率の引上げで価格上昇が続いており、果物(同8.5%)や穀物製品(同6.5%)も高めの伸びが続いている。他方、牛乳・乳製品(同2.8%)や豆類(同3.8%)、加工食品(同4.0%)、肉・魚(同5.3%)は落ち着いた伸びとなり、香辛料(前年同月比▲7.4%)は引き続き減少した。

燃料・電力は前年同月比▲1.4%となり、16ヵ月連続でマイナス圏での推移となった。

コアCPI(食品、燃料を除く総合)は前年同月比3.6%となり前月から横ばいだった。カテゴリー別にみると、教育(同3.9%)や住宅(同2.7%)、輸送・通信(同2.6%)、衣服・靴(同2.7%)、家庭用品・サービス(同2.8%)、娯楽(同2.7%)は落ち着いた伸びが続いたものの、パーソナルケア(同9.7%)の上昇が顕著だった。

(図表1)消費者物価上昇率/(図表2)食品価格指数の要因分解
(図表3)インフレ率と政策金利、通貨の推移 インフレ率(CPI上昇率)は昨年12月が前年同月比5.2%となり、2ヵ月連続でインド準備銀行(RBI)の物価目標圏内(+2%~6%)に収まった(図表3)。昨年高騰した食品価格は雨季作の豊作と乾季作の作付面積の拡大により軟化し始めており、先行きの食品インフレのリスクは後退している。また7-9 月期の実質GDP 成長率は前年同期比5.4%(4-6 月期:同6.7%)と大きく鈍化するなど景気下支え策が求められており、2月の金融政策委員会(MPC)でRBIは利下げに踏み切る展開が予想される。

もっともRBIが金融緩和に踏み切ると、通貨ルピーの減価が加速して輸入インフレのリスクが高まる恐れがある。昨年10月以降の海外への資金流出や足元の原油価格の上昇により通貨ルピーは減価傾向にある。昨年12 月にRBI総裁がダス氏からマルホトラ氏に交代して以降、ルピーの過大評価を是正すべく、為替市場に介入する姿勢が弱まったことも影響しているようだ。RBIが景気減速懸念よりも通貨安に伴うインフレ懸念を警戒する場合、利下げ開始は通貨動向が安定化するまで見送られることとなりそうだ。
 
1 Bloomberg集計の中央値。
 
 

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(2025年01月15日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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