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- AI事業者ガイドライン-総務省・経済産業省のガイドライン
2024年12月03日
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図表13で特に説明が必要なのは、8~11であろう。ここは図表12のイ)共通の指針の対応状況の説明に該当する。EU規則では、高リスクAIシステムに関するEU規則の各種規定への適合性を審査することとされている。具体的には加盟国ごとの被通知団体(=適合性審査機関。上記図表の8.参照)が適合性を審査して、合格した場合に証明書を発行することとなっている。高リスクAIシステムの提供者は当該証明書、及び自らEU規制に適合していることを宣言するEU適合宣言書の写しを登録することとされている。このようにステークホルダーはEUデータベースを参照することで必要な情報を得ることができるようになっている。対して、ガイドラインではこのような適合性の審査制度および開示制度がないことに留意が必要である。
(8) 教育・リテラシー:ガイドラインでは、各主体は、主体内のAIに関わる者が、AIの正しい理解及び社会的に正しい利用ができる知識・リテラシー・倫理感を持つために、必要な教育を行うことが期待される。また、各主体は、AIの複雑性、誤情報といった特性及び意図的な悪用の可能性もあることを勘案して、ステークホルダーに対しても教育を行うことが期待されるとする(図表14)。
(8) 教育・リテラシー:ガイドラインでは、各主体は、主体内のAIに関わる者が、AIの正しい理解及び社会的に正しい利用ができる知識・リテラシー・倫理感を持つために、必要な教育を行うことが期待される。また、各主体は、AIの複雑性、誤情報といった特性及び意図的な悪用の可能性もあることを勘案して、ステークホルダーに対しても教育を行うことが期待されるとする(図表14)。
本項目では、例えば偽情報に関するリテラシーの向上などを目指している。事例としてはAI合成音声による詐欺などが挙げられている。また生成AIが事実と異なることをもっともらしく回答する「ハルシネーション」の被害も存在する13。
EU規則でも、「AIシステムの提供者および配備者は、技術的知識、経験、教育および訓練、ならびにAIシステムが使用される文脈を考慮し、AIシステムを利用する人を考慮し、そのスタッフおよびその代理としてAIシステムの操作および使用に対処するその他の人の十分なAIリテラシーを、最善の範囲で確保するための措置を講じなければならない」(4条)とされている。
13 前掲注2 p15参照
EU規則でも、「AIシステムの提供者および配備者は、技術的知識、経験、教育および訓練、ならびにAIシステムが使用される文脈を考慮し、AIシステムを利用する人を考慮し、そのスタッフおよびその代理としてAIシステムの操作および使用に対処するその他の人の十分なAIリテラシーを、最善の範囲で確保するための措置を講じなければならない」(4条)とされている。
13 前掲注2 p15参照
(9) 公正競争確保:ガイドラインでは、各主体は、AIを活用した新たなビジネス・サービスが創出され、持続的な経済成長の維持及び社会課題の解決策の提示がなされるよう、AIをめぐる公正な競争環境の維持に努めることが期待されるとする。
EU規則では、公正競争の監視が各国の行政当局である市場監視当局の権限とされており、「市場監視当局は、市場監視活動の過程で確認された、競争規則に関するEU法の適用に潜在的な関係を持ちうる情報を、欧州委員会および関連する各国の競争当局に毎年報告しなければならない」(74条2項)とされている。この報告を受けた欧州委員会又は各国競争当局は競争法に照らして、違法かどうか、違法ならばどう是正措置を取るかを検討することになる。
(10) イノベーション:ガイドラインでは、各主体は、社会全体のイノベーションの促進に貢献するよう努めることが期待されるとする。具体的には以下の通り(図表15)。
EU規則では、公正競争の監視が各国の行政当局である市場監視当局の権限とされており、「市場監視当局は、市場監視活動の過程で確認された、競争規則に関するEU法の適用に潜在的な関係を持ちうる情報を、欧州委員会および関連する各国の競争当局に毎年報告しなければならない」(74条2項)とされている。この報告を受けた欧州委員会又は各国競争当局は競争法に照らして、違法かどうか、違法ならばどう是正措置を取るかを検討することになる。
(10) イノベーション:ガイドラインでは、各主体は、社会全体のイノベーションの促進に貢献するよう努めることが期待されるとする。具体的には以下の通り(図表15)。
日本では既に規制のサンドボックスが分野に限らず認められているが、ガイドラインにおけるイノベーションの支援が簡素な記載にとどまっていることが若干気になるところではある。
上記図表17は、主に前述の「共通の指針」をさらに厳格化したものと考えられる(リスク管理措置やインシデントの緩和措置、アカウンタビリティなど)。
他方、EU規則では、高リスクAIシステムとは別に汎用AIモデルについての規定がある(高リスクかつ汎用AIモデルも存在する)。汎用AIモデルとは、人間と同じようなタスクがこなせるAIで、高度な生成AIなどが該当するとされている。ただ、EU規則における汎用AIモデルは、システミック・リスク(大規模に悪影響を及ぼすリスク)を生じさせるものとして特別な規定が適用されるようになっており、ガイドラインの高度なAIシステムの満たすべき要件と同じものかは不明である。さらに規制の具体的な中身も上記図表17とは大きく異なっており、ここではガイドラインとEU規則の汎用AIモデル規制との比較は行わないこととする。
他方、EU規則では、高リスクAIシステムとは別に汎用AIモデルについての規定がある(高リスクかつ汎用AIモデルも存在する)。汎用AIモデルとは、人間と同じようなタスクがこなせるAIで、高度な生成AIなどが該当するとされている。ただ、EU規則における汎用AIモデルは、システミック・リスク(大規模に悪影響を及ぼすリスク)を生じさせるものとして特別な規定が適用されるようになっており、ガイドラインの高度なAIシステムの満たすべき要件と同じものかは不明である。さらに規制の具体的な中身も上記図表17とは大きく異なっており、ここではガイドラインとEU規則の汎用AIモデル規制との比較は行わないこととする。
(2024年12月03日「基礎研レポート」)

03-3512-1866
経歴
- 【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2025年4月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月
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