2024年11月13日

インド消費者物価(24年10月)~大雨による作物被害と食用油の国際価格上昇により昨年8月以来の高水準に

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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インド統計・計画実施省が11月12日に公表した消費者物価指数(以下、CPI)によると、2024年10月のCPI上昇率は前年同月比6.2%と、前月の同5.5%から上昇し(図表1)、事前の市場予想1(同5.9%)を上回る結果となった。

地域別のCPI上昇率をみると、都市部が前年同月比5.6%(前月:同5.0%)、農村部が同6.7%(前月:同5.9%)となり、それぞれ3カ月連続で上昇した。

10月のCPIの内訳をみると、主に野菜や食用油といった食品価格の上昇が全体を押し上げた。

まず食品は前年同月比10.9%となり、前月の同9.2%から更に上昇した(図表2)。

食品のうち、野菜(同42.2%)が大幅に上昇、9月から10月にかけて大雨が降り農作物の収穫や輸送に悪影響が出ており、特に傷みやすく長期保存に向かないトマト(同161.3%)の価格が高騰した。また食用油(同9.5%)が国際商品市況を反映して大きく伸びたほか、果物(同8.4%)や豆類(同7.4%)、穀物製品(同6.9%)も高めの伸びが続いた。また他方、肉・魚(同3.2%)や牛乳・乳製品(同3.0%)、加工食品(同3.7%)は落ち着いた伸びが続いており、香辛料(前年同月比▲7.0%)は引き続き減少した。

燃料・電力は前年同月比▲1.6%となり、14ヵ月連続でマイナス圏での推移となった。

コアCPI(食品、燃料を除く総合)は前年同月比3.7%と落ち着いた伸びが続いているものの、前月の同3.5%から小幅に上昇した。カテゴリー別にみると、教育(同4.0%)や住宅(同2.8%)、輸送・通信(同2.7%)、衣服・靴(同2.7%)、家庭用品・サービス(同2.7%)、娯楽(同2.5%)は落ち着いた伸びが続いたものの、パーソナルケア(同11.0%)が二桁増となった。
(図表1)消費者物価上昇率/(図表2)食品価格指数の要因分解
(図表3)消費者物価上昇とインフレ目標 インフレ率(CPI上昇率)は、今年7-8月にインド準備銀行(RBI)の物価目標の中央値である+4%を下回るまで低下した後、再び上昇して10月は物価目標の上限である+6%を上回った(図表3)。インフレ率が上下に振れる形となっているのはベース効果による影響が大きいが、物価上昇の主因は野菜価格の高止まりと食用油の国際商品市況の上昇である。特に野菜価格は日持ちしないため一時的な価格高騰が起こりやすい。当面は野菜価格を中心にインフレが高止まりする可能性があるが、ベース効果と食品供給量の回復により低下傾向で推移するものとみられる。RBIは10月の金融政策委員会(MPC)で足元の食品価格の上昇にもかかわらず、今年度のインフレ予測を4.5%に据え置き、金融政策のスタンスを「緩和策の撤回(引き締め的)」から「中立」に変更している。今回の10月のCPI上昇により、12月の会合では金融政策の据え置きが濃厚となったが、今後数カ月でインフレ率が鈍化傾向を辿れば、来年2月の会合で政策金利の引き下げを開始する道が開けるだろう。
 
1 Bloomberg集計の中央値。
 
 

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(2024年11月13日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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