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- 低下する独仏経済の牽引力-政治の分断がブレーキに-
低下する独仏経済の牽引力-政治の分断がブレーキに-

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり
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- ユーロ圏の景気減速懸念が強まっている。国別にはドイツの停滞が目立ってきたが、フランスにも失速の兆候が見られるようになってきた。
- これまでの独仏間の成長格差は主に個人消費によるもので、フランスの方が実質可処分所得の伸びが高く、購買力の回復局面に転じるのも早かった。
- 輸出のパフォーマンスもフランスの方が良好だった。ドイツは「産業立地としての競争力」が低下、主力輸出製品が軒並み沈み、サービス輸出も財関連の足取りが重い。
- 投資は、EUが目指すグリーン移行、デジタル移行、循環型経済への移行、産業の戦略的自律性の向上のために不可欠だが、独仏ともに減少傾向にある。エネルギーコストの高騰、賃金コスト、税負担、官僚主義的負担の増大で、特にドイツの産業立地としての競争力が低下し、産業空洞化懸念が強まっている。
- 議会が3つに割れたフランスでは、政治・政策の不確実性が経済活動のブレーキとなる可能性がある。ドイツのショルツ政権は分裂含みで、立地競争力の回復のための一貫性のある大胆な行動は期待し辛い。解散総選挙でも問題は解消しない。
- これまでEUの統合を牽引してきた独仏が、国内における合意形成により多くの政治的資源を割り当てざるを得なくなることは、EUレベルの競争力強化のために必要な改革や政策の協調も進み辛いことを示唆する
・減速傾向を強めるユーロ圏
・停滞が続くドイツ経済、フランス経済にも鈍化の兆し
・この間の独仏間の成長格差の主な要因は個人消費
・財輸出の不振がドイツ停滞の原因。サービス輸出も財に関わるサービスが伸び悩む
・立地競争力の低下でドイツの主力輸出製品は医薬品を除いて総崩れ
・景気停滞下でドイツは大幅な経常黒字を維持、フランスの経常収支はほぼ均衡
・固定資本形成は独仏ともに減少傾向、投資計画も慎重化
・何が投資を阻んでいるのか?
・フランスでも不確実性の高まりは投資手控えの要因
・政治の分断が経済活動のブレーキとなる可能性
・一貫性のある大胆な行動を求める独産業界、専門家
・ショルツ政権は分裂含み。経済相と財務相が経済対策を巡り対立
・独政権が交代しても一貫性のない踏み込み不足の立地競争力の危機対策が続くおそれ
・独仏の政治の分断は、ドラギ報告書が指摘したEUレベルの改革や政策協調も阻害
(2024年11月07日「Weekly エコノミスト・レター」)

03-3512-1832
- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
伊藤 さゆりのレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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2025/04/18 | トランプ関税へのアプローチ-日EUの相違点・共通点 | 伊藤 さゆり | Weekly エコノミスト・レター |
2025/03/28 | トランプ2.0でEUは変わるか? | 伊藤 さゆり | 研究員の眼 |
2025/03/17 | 欧州経済見通し-緩慢な回復、取り巻く不確実性は大きい | 伊藤 さゆり | Weekly エコノミスト・レター |
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