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J-REIT市場の動向と収益見通し。借入金利上昇を背景に今後5年間で▲5%減益を見込む~シナリオ別の分配金レンジは「▲18%~+7%」となる見通し~

金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人
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1――J-REIT市場は年初から▲6%下落。金利の先高観やJリート投信からの資金流出が重しに
もっとも、投資口価格が下落する一方で、J-REIT市場のファンダメンタルズは堅調である。市場全体の1口当たりNAV(Net Asset Value、解散価値)は、保有不動産の価格上昇を反映し前年比+2%増加し、予想1口当たり分配金(Distributions Per Unit、以下DPU)についてもホテル収益の本格回復や不動産売却益の計上が寄与し前年比+5%増加している(図表―2)。
こうした市場価格とファンダメンタルズのかい離は、いずれ修正に向かうと考えられるが、その前提となるJ-REIT市場の業績回復はどの程度期待できるだろうか。
そこで、本稿では最初に、現在のJ-REIT市場の収益環境を確認する。次に、各種シナリオ(オフィス賃料見通し、物件取得要件、金利見通しなど)を設定し、今後5年間の分配金の見通しを試算したい。
2――保有不動産は約4,600棟、金額にして26.8兆円。予想1口当たり分配金は過去最高水準に
まず、2023年12月末時点のJ-REITの保有不動産は全体で約4,600棟、金額にして約26.8兆円の規模となっている(図表―3)。アセットタイプ別では、オフィス(10.2兆円、38%)、物流施設(5.7兆円、21%)、住宅(4.2兆円、16%)、商業施設(3.5兆円、13%)、ホテル(2.0兆円、7%)、底地など(1.2兆円、5%)の順に多い。過去5年間の物件取得額(6.4兆円)の内訳をみると、物流施設の比率が31%を占めて、オフィスに次ぐ第2のセクターとして存在感を高めている。
3――各種シナリオを設定し、今後5年間のDPU成長率を試算する
三鬼商事によると、東京都心5区のオフィス空室率(24年2月)は5.86%(前年比▲0.29%)となり、2022年9月(6.49%)をピークに改善基調にある。また、平均募集賃料についても前月比プラスに転換するなど足もとで底打ち感がみられる。地方都市では新規供給の増加を受けて空室率が上昇している都市もあるが、募集賃料は前年比プラスで推移している1。このように、コロナ禍を契機に悪化したオフィス市場は空室率の上昇が概ね一巡し、調整局面を脱しつつあると言える。一方、J-REITが保有するオフィスビルの収益は減少が続いている。継続比較可能な保有ビルを対象に賃貸事業収益(NOI)の推移(前年比増減率)を確認すると、2021年からマイナスに転じ、2023年上期は前年同期比▲4.3%、下期は▲1.4%となった。2020年まではオフィスセクターの『内部成長』が市場全体のDPU成長を牽引してきたが、コロナ禍以降、マイナスに寄与している(図表―6)。
ニッセイ基礎研究所は国内6都市(東京・大阪・名古屋・札幌・仙台・福岡)のオフィス賃料予測を公表した2。今後5年間(2023年~2028年)の賃料変動率は、標準シナリオで東京が+2%、大阪が▲12%、名古屋が▲7%、札幌が▲9%、仙台が▲4%、福岡が▲13%となっている(図表―7)。このうち、東京については「新規供給が高水準で推移する一方、オフィス環境整備に向けた需要は底堅いことから、空室率の上昇は限定的で、成約賃料は概ね横ばいで推移する見通し」である。
この賃料予測並びに一定の前提条件(稿末に記載)に、保有オフィスビルのNOI成長率(今後5年間)を計算した。結果は、標準シナリオで▲1%、楽観シナリオで+4%、悲観シナリオで▲6%となった(図表―8)。
(2024年03月15日「基礎研レポート」)
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03-3512-1858
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
2005年 ニッセイ基礎研究所
2019年4月より現職
【加入団体等】
・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
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