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- ECB政策理事会-7月の利上げも予告、タカ派姿勢を継続
2023年06月16日
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(金融・通貨環境)
(結論)
(質疑応答(趣旨))
- 我々の金融引き締めは引き続き、無リスク金利や広範囲の金融環境に反映されている
- 銀行の調達環境はタイト化しており、企業や家計向けの信用コストは高まっている
- 4月の貸出金利はここ10年で最も高い水準に達しており、企業向け貸出で4.4%、住宅ローンで3.4%となっている
- これらの高い借入金利、信用供給環境のタイト化、借入需要の低下は、今後の信用動向をさらに弱めるだろう
- 企業向け貸出の成長率は、4月に前年比4.6%となった。
- 前月比成長率は、昨年11月以降の平均でマイナスになっている。
- 家計向け貸出の成長率は、4月に前年比2.5%となり、前月比成長率はごくわずかな伸びである
- 銀行貸出の弱さとユーロシステムのバランスシート削減が広範に通貨成長率を低下させており、4月は前年比1.9%となった
- 前月比成長率は、昨年12月以降の平均でマイナスになっている。
- 我々の金融政策戦略に沿って、理事会は金融政策と金融安定の相互関係について詳細な評価を実施した
- 金融安定の見通しは、前回22年12月の評価以降、引き続き厳しい状況にある
- 金融環境のタイト化は、銀行の資金調達や、貸出残高に対する信用リスクの費用を上昇させている
- 最近の米国の銀行システムの緊張といった要因は、システミックリスクの上昇と短期的な成長への重しになる可能性がある
- その他の金融部門の強靭さへの重しになっている要因は不動産市場の悪化であり、借入コストの上昇と失業率の上昇で、さらに増幅される可能性がある
- 同時にユーロ圏の銀行は強い資本と流動性を有しており、これらの金融安定リスクを軽減させている
- マクロプルーデンス政策は、金融のぜい弱性増加に対抗する最善の手段であり続ける
(結論)
- (声明文冒頭に記載の利上げと、金融政策スタンスへの再言及)
(質疑応答(趣旨))
- 6週間前、あなたはかなり似たガイダンスを声明文で提供した。記者会見では、カバーすべき領域があり立ち止まらない、と述べた。本日、似たガイダンスをするなかで、記者会見でも同じコメントをするつもりがあるか
- はい、カバーすべき領域がある
- ベースライン見通しに重要な変更がなければ、我々は7月も利上げを続ける可能性が高い
- FRBの一時停止(pause)から得られる教訓は何か。ECBは自身の政策があり、FRBを模倣する必要はない。しかし、FRBの一時停止の背景には多くのものがある。金融引き締めの効果を評価する必要がある。そのため、あなたは同じような理由でECBが一時停止をすることを考えているか。過去の見通しの間違いに焦点をあてることが、ECBの政策の間違いにつながるリスクはないか
- 我々は、一時停止については考えていない
- コアインフレ率が実際に低下するなかで、一時停止やスキップ(skip)が9月に実施されるには、何が必要なのか。何が起きる必要があるのか
- 金融市場について。あなたは、強力にタイト化していると述べている。金融環境のタイト化に関して、何をもってもう十分であると考え直すのか
- 我々が注目するのは、インフレ見通し、基調的なインフレ動向、伝達の強さ、の3つの要素である
- 25年のインフレ見通しが上方修正されたことについて、どのように警戒しているのか。これは、少なくとも最近まで一般に予想されていた3.75%のターミナルレート(政策金利ピーク)が十分でないということを意味するのか
- インフレ見通しついて、我々が満足していないことは容易に判断できると思う
- それが今日の決定の理由あり、ベースライン見通しに重大な変更が無ければ7月もまた利上げをするだろうとしている理由である
- ターミナルレートについてはコメントするつもりはない
- 我々が分析・検討する原動力はターミナルレートではなく、2%インフレという究極の目的地である
- 労働市場の強さと賃金がインフレ率に及ぼす影響について。2%のインフレ目標達成は、現在のような低い失業率のまま達成できるのか。それとも上昇する必要があるのか
- 労働市場がインフレの原動力の主要な一要素となっているため、多くの時間を割いた
- 雇用が増え、平均労働時間が増え、賃金が上昇する一方で、生産が停滞しているというのはかなり異常である
- つまり、単位労働コスト(unit labour cost)、換言すれば生産性の問題が明らかにインフレに影響を及ぼしている
- 我々は、引き続き、労働市場という、重要な役割を果たしている謎(enigma)の全体を注視し分析するつもりである
- 特に、我々の経済における大部分の役割を果たしている多くのサービス業は労働集約的であり、賃金は重要な役割を担っている
- コアインフレの修正がかなりの強さで驚いた。その理由について詳しく教えて欲しい。すべて賃金や賃金見通しなのか、他の理由があるのか
- 多くは単位労働コストに起因している
- 残りは、過去の上振れサプライズであり、3月の見通し作成以降に発表されたデータに基づいたスタート地点の変更である
- 本日の決定について。全会一致だったのか、議論の雰囲気をもう少し教えて欲しい
- かなり調和の取れた議論があり、ととても優れた徹底的な経済議論があった
- 非常に幅広いコンセンサス(very, very broad consensus)があった
- ECBはラグ効果を認識しているか。何が経済への伝達を遅らせているのか。何を注視しているのか
- ラグがあることは認識している。
- ラグの時間は、教科書的な標準では18から24か月の間、もしかしたら、それよりかかるとされているが、それほどではない
- 今回は前例がなく、例外的な状況なので非常に注意深く監視する必要がある
- 目標について。見通しによれば、今後3年ではインフレ目標を達成しない見込みである。何人かのエコノミストはこの目標はもはや妥当でなく、3%が新しい2%になると提案している。これに対する意見は
- 我々は2%に到達するつもりである
- 我々は目標に到達し、目標に留まることを確信したい
- この二つの要素が金融政策の原動力となる
- カナダ銀行が利上げを再開し、その理由として中立金利の想定が以前より上昇したからだとした。同じような考えを持っているか。これは、利上げを継続し、さらなる利上げについて示唆する理由となるか
- 我々は、ある意味、中立金利がどこかを考える必要はない
- 我々は、目標を達成するための場所にはいない
- ECBは、利上げの一時停止を行う際には特定の会合にする、例えばFRBが昨日一時停止したように、見通しを公表する際に行う、といったことを考えているか
- 一時停止、スキップについては、まったく議論しておらず、やるべきことがあるために考え始めてもいない
- 本日、あなたは必要な限り制限的な水準に維持することを繰り返し確認した。インフレ率が25年でも2%を超えているなら、制限的な金利は長期化すると見られる。同時に、理事会は、経済活動を不必要に害すること避けたいとすることについて、どの程度懸念しているのか。政策の結果、どの程度成長が弱まると見ているのか
- (明確な回答なし)
- 我々は目的地に到達する確信を得られるまで、必要な限り制限的にするつもりである
- 25年に2.2%という数値は、満足のいくものではなく、速やか(timely)でもない
- 6月について。TLTROの4770億ユーロの返済が予定されており、ECBのバランスシートの1日の削減としては最も大きく、歴史的な月である。6月はAPPの償還再投資が実施される最後の月でもある。これらの2つの前例のない事象はECBの金融・通貨環境のタイト化にどの程度の影響を及ぼすのか
- 返済はそれより巨額になるはずだったが、我々は1兆ユーロを超える巨額の返済による崖効果を回避するための措置を講じた
- 銀行はこの状況に対応するための調達計画を作成している
- 万一に備えて、MROやLTROといった通常手段が、必要な場合は利用可能である
- APPの部分的な再投資を数か月経験しており、市場ではよく吸収されている
- 金額に鑑みれば、円滑に吸収されると信じるに足る理由がある
- もちろん最新の注意を払うつもりである
- あなたは、賃上げの問題に触れた。欧州議会での演説では、企業利益の問題に触れた。これら双方を考慮した時に、特に両者がすでに金利が高すぎると批判を始めるなかで、両者がより穏健になりはじめることについて、どれほど確信を持っているか
- 企業と労働者は、インフレを助長しより強力な金融政策を求めることにならないような合意を見出せる、というのが我々の想定である
- コアインフレ率の深刻さと持続性について少し困惑している。理事会はこの強い持続性をどこに見出しているのか教えて欲しい
- 単位労働コストに大きく関係している
- 我々はサービスが引き続き強く成長率と信じているため、今後数か月はインフレの高い数値が続くと見られる
- 賃金についてかなり強いメッセージを発信しており、少し怯えている。3月以降、インフレスパイラルのリスクは上昇しているのか
- 賃金について、2次的効果(second round effects)は見られていない
- インフレに対応して企業と労働者がともに完全な補償を求める、いわゆるしっぺ返し(tit-for-tat)は避けなければならず、これは明らかに2次的効果をもたらす可能性がある
- 見通しについて。25年が受け入れられないのであれば、速やかに(timely manner)というには24年にインフレ率の2%が見られる必要があるのか。何が、速やかに、となるのか
- 2%に戻るタイミングは早ければ早いほど良い
- また、私たちは現実的でなければならず、行うことには慎重でなければならないが、決意をもって粘り強く行う必要がある
- 賃金がインフレ率に大きな影響を及ぼすと言う一方で、賃金と物価のスパイラルはないと言っている。明確には理解しがたい。どうしてこうした結論になるのか教えて欲しい
- 単位労働コストがコアインフレ見通しの修正の原因になっており、そうした予測を立てているのと同時に、我々が非常に懸念している、2次的効果を引き起こすような賃金と物価のスパイラルは見られていない
- 金融市場はバランスシートの削減の影響を感じていないと言及した。7月以降、さらに削減を加速させる余地はあるのか
- 6月末にはTLTROの償還がある
- APPは償還再投資を停止する
- これが決定したすべてである
- 例えば、PEPPは24年まで再投資を続け、必要であれば柔軟性を適用する
- これを変更する予定はない
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(2023年06月16日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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