2023年05月15日

ロシアの物価状況(23年4月)-前年比で2%台まで低下

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前年比は2%台に低下

5月12日、ロシア連邦統計局は消費者物価指数を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数(23年4月)】
前年同月比は2.31%、市場予想1(2.40%)より下振れ、前月(3.51%)から低下(図表1)
前月比は0.38%、前月(0.37%)からやや加速した

【コア指数2(23年4月)】
前年同月比は1.99%、前月(3.72%)から低下した(図表2)
前月比は0.31%、前月(0.37%)から減速した

(図表1)ロシアの消費者物価上昇率/(図表2)ロシアのインフレ率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 生鮮食品など季節的要因による影響を受ける品目や管理品目を除いた指数。

2.結果の詳細:財・食料品の物価上昇率は前年比でマイナスに

4月のロシアのインフレ率は前年比で2.31%となり、3月の3.51%からさらに低下した。3月もベース効果により2月の10.99%から大幅に低下していたが、4月はさらに伸び率が減速したことになる。

インフレ率を大分類別に見ると、4月の前年比伸び率は食料品が▲0.01%、財(非食料品)が▲0.26%、サービスが9.43%となっている。サービスは9%台の高めの伸び率が維持されている(3月も9.73%)ものの、食料品と財は小幅ながら前年比マイナスとなった。したがってサービスのみが全体の物価を押し上げている構図となっている(図表1)。

4月の前月比伸び率は、総合指数で0.38%、コア指数で0.31%となった。いずれもコロナ禍前のペース程度(例えば2018年の前月比伸び率は平均で総合指数が約0.35%、コア指数が約0.30%)となっており、インフレ圧力は強くないと言える(図表3)。
(図表3)ロシアのインフレ率(前月比)/(図表4)ロシアのインフレ率(前週比)
別途、ロシア連邦統計局が公表している週次のインフレ率(消費者物価上昇率)を見ると、前週比上昇では、最新の5月10日時点の前週比で0.0%となり、過去と比較してもインフレ圧力はそれほど強くない状況が続いている(図表4)。
(図表5)ロシアのインフレ率と家計のインフレ期待 ロシア中央銀行が公表する家計のインフレ期待(1年先中央値、実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある)は、4月に10.4%と10%を超える状況が続いている。前回、前年比インフレ率が2%台だった20年初の期待インフレ率は8%前後であったが、今回は当時ほどの期待インフレ率の低下は見られていない(図表5)。なお、期待インフレ率が実際のインフレ率ほど大幅に低下しない現象は2015年前後の高インフレ時と同じである。
品目別の上昇率を見ると3(図表6)、4月は前年比で海外旅行サービス(33.70%)の伸び率が高い一方、グラニュー糖(▲23.75%)、テレビ(▲21.83%)、穀物・豆(▲14.26%)が大きく下落している。

前月比では、その他サービス(4.41%)、旅客サービス(2.87%)、海外旅行サービス(2.46%)の上昇率が相対的に大きい一方、テレビ(▲2.61%)の下落率が相対的に大きかった。
(図表6)ロシアの品目別インフレ率
各品目の消費ウエイトも考慮して、全体のインフレ率への寄与を品目別に見ると(図表7・8)、前年比上昇率への寄与が大きい品目は住居・公益サービス(1.26%ポイント)、家庭サービス(0.32%ポイント)、通信サービス(0.24%ポイント)、海外旅行サービス(0.22%ポイント)、旅客サービス(0.23%ポイント)となった。一方、青果物(▲0.32%ポイント)、肉(▲0.11%ポイント)、電化製品(▲0.11%ポイント)は前年比でのマイナス寄与が相対的に大きい。
(図表7)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度、抜粋)
(図表8)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度、抜粋)
一方、前月比上昇率の寄与では青果物(約0.07%ポイント)、その他サービス(約0.07%ポイント)、の押し上げ寄与が大きく、電化製品(▲0.01%ポイント)は押し下げ寄与が大きい。

なお、現時点において統計局ウェブサイトで公表されていない品目も含む3月の前年比上昇率寄与を見ると、食料品では青果物や砂糖、財(非食料品)では主に電気製品類が物価を押し下げており、インフレ率を抑制していることが分かる(図表9)。
(図表9)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度)
(図表10)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度)
 
3 大分類である食料品、財(非食料品)、サービスをそれぞれ細目別に分類したもの(中分類)のうち、統計局のウェブサイトで公表しているものを記載。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年05月15日「経済・金融フラッシュ」)

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