コラム
2023年04月07日

米国株式ブーム、収束?~2023年3月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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外国株式ファンドへの資金流入が倍増

2023年3月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、3月は主に国内債券を投資対象とするもの以外すべての資産クラスのファンドに資金流入があった【図表1】。ファンド全体でみると6,500億円の資金流入と2月の4,100億円から2,400億円増加した。ただし、SMA専用ファンド(紺棒)に限ると国内債券ものを中心に2021年2月以来、約2年ぶりに流出超過となった。
 
3月は外国株式ファンドの販売が特に好調で、外国株式ファンドに4,200億円の資金流入があり、2月の1,900億円から倍以上増加した。タイプ別に外国株式ファンドをみると、SMA専用ファンドには100億円の資金流入と2月から横ばいであったが、インデックス型に3,500億円の資金流入と2月の2,000億円から1,500億円に増加した。また、アクティブ型も2月に2020年6月以来の久々に純流出となっていたが、3月はインデックス型と比べて少額ではあるものの600億円の純流入に転じた。
【図表1】 2023年3月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入

外国株式ファンドは米国株式以外がけん引

インデックス型の外国株式ファンドへの流入額3,500億円は、過去最大であった2022年12月の3,700億円に迫る規模であった。12月は年末で元々、資金流入が膨らみやすいことを考慮すると、この3月はインデックス型の外国株式ファンドが過去一売れたといっても問題ないだろう。
 
インデックス型の外国株式ファンドの中では、米国株式のもの(青棒)に1,700億円台半ばの資金流入があり、2月の1,100億円から600億円増加した【図表2】。さらに3月は米国株式以外のインデックス型の外国株式ファンド(黄棒)にも1,700億円台半ばの資金流入があり、これまで最大であった2022年12月(赤囲い)の1,600億円を上回り、過去最大であった。2月の900億円からの急増であり、資金流入の増加金額はインデックス型の米国株式ものよりも、その他のインデックス型外国株式ファンドの方が実は200億円ほど大きかった。その資金流入のほとんどが、全世界株式指数や先進国株式指数に連動するファンドへの流入である。
【図表2】 インデックス型の外国株式ファンドの資金流出入
また、3月はアクティブ型の外国株式ファンド全体でも資金流入に転じたが、米国株式のもの(青棒)に限ると売却超過であった【図表3】。アクティブ型の米国株式ファンドからは流出額は小さいが3カ月連続(赤囲い)の純流出となり、しかも2月よりも流出額が大きかった。
【図表3】 アクティブ型の外国株式ファンドの資金流出入
このように3月に外国株式ファンドがタイプによらず2月よりも売れたのは、月中旬にかけて欧米の金融システム不安によって株価が下落する中、値ごろ感から購入する投資家が多かったためだと推察される。ただ、以前はこのような局面だとアクティブ型、インデックス型問わず米国株式のものが特に売れ、資金流入が膨らむ傾向があった。それが3月はインデックス型では米国株式ものが売れたが米国株式以外のものもよく売れ、アクティブ型では米国株式ものの売却が止まらなかった。やはり2021年あたりから始まった米国株式ブームが、2023年に入って落ち着いてきているのかもしれない。

根強い人気の毎月分配型が新NISAでは買付不可に?

なお、3月に資金流入が大きかったアクティブ型の外国株式ファンド(赤太字)は毎月分配型のものばかりであった【図表4】。相変わらず根強い人気がある毎月分配型であるが、2024年から始まる新しいNISAでは毎月分配型のファンドが完全に買付不可になる見込みである。現行制度では、つみたてNISAでは買付することができなかったが、一般NISAであれば普通に買付けることができてきた。
 
そもそも毎月分配型は複利効果が得られにくくなるため、現役世代を中心とした資産形成層には向かない商品である。そのため資産形成層の長期投資を促す制度であるつみたてNISAやそれを踏襲する新しいNISAの年間120万円までの「つみたて投資枠」で買付不可なのは妥当だと思われる。ただし、現状では毎月分配型を購入しているのは資産形成層ではなく、高齢者を中心とした資産取り崩し層である。そのため、新しいNISAで一般NISAを踏襲する年間240万円までの「成長投資枠」でも毎月分配型を買付不可にするのは、いささか厳しすぎるのではないかと筆者は考えている。
【図表4】 2023年3月の推計純流入ランキング

限定追加型の外国債券ファンドが引き続き売れる

3月は外国株式ファンド以外にバランス型ファンド、外国REITファンド、国内株式ファンドでも2月から資金流入が増加した。特にバランス型ファンドは2023年に入って1月、2月とやや販売が低迷していたが、3月に1,000億円の資金流入と2月の400億円から600億円も増えた。国内株式ファンドについてはあくまでもSMA専用ファンドの影響が大きかったが、バランス型ファンドと外国REITファンドについては外国株式ファンドと同様に値ごろ感から2月よりも買いが入ったのかもしれない。

また、外国債券ファンドは1,000億円の資金流入と2月の1,700億円から減少した。ただ、資金流入の鈍化はSMA専用ファンドの影響であり、一般向けの外国債券ファンドの販売は引き続き堅調だった様子である【図表4】。3月も2月と同様に新設された限定追加型のもの(青太字)を中心に資金流入があった。さらに、国内株式ファンドでも資金を集めた新設された限定追加型のもの(緑太字)があった。3月は値ごろ感から一部のリスク性資産のファンドが売れる一方で、先行きの不透明感が強く、引き続き安定運用のニーズも高かったことがうかがえる。

金関連ファンドが高パフォーマンスに

3月に高パフォーマンスであったファンドをみると、欧米の金融システム不安を受けて金価格が上昇したことを受けて、金関連ファンド(赤太字、青太字)が総じて好調であった【図表5】。3月は為替市場で1ドル136円台から133円台にと約3円も円高が進行したため、為替ヘッジをしている金関連ファンド(赤太字)が特に高パフォーマンスだった。
【図表5】 2023年3月の高パフォーマンス・ランキング
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2023年04月07日「研究員の眼」)

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