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- 鉱工業生産22年5月-予想外の大幅減産、中国のロックダウンの影響が幅広い業種に及ぶ
2022年06月30日
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1.5月の生産は事前予想を大きく上回る減産幅に
経済産業省が6月30日に公表した鉱工業指数によると、22年5月の鉱工業生産指数は前月比▲7.2%(4月:同▲1.5%)と2ヵ月連続で低下し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲0.3%、当社予想は同▲0.9%)を大きく下回る結果となった。出荷指数は前月比▲4.3%と2ヵ月連続の低下、在庫指数は前月比▲0.1%と3ヵ月連続の低下となった。5月の減産幅は、最初の緊急事態宣言下において2ヵ月連続で前月比二桁のマイナスを記録した20年5月(前月比▲10.5%)以来の大きさとなった。5月の生産を業種別に見ると、半導体等の部品不足や中国のロックダウンの影響で自動車が前月比▲8.0%(4月:同▲0.7%)と大きく落ち込んだほか、電気・情報通信機械(前月比▲11.3%)、生産用機械(同▲5.1%)、汎用・業務用機械(同▲5.2%)などが、軒並み大幅減産となった。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は22年1-3月期の前期比0.0%の後、4月が前月比1.9%、5月が同▲4.4%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は22年1-3月期の前期比▲0.1%の後、4月が前月比3.3%、5月が同▲2.0%となった。22年4、5月の平均を22年1-3月期と比較すると、資本財(除く輸送機械)は▲0.9%低いが、建設財は3.4%高い水準となっている。GDP統計の設備投資は、21年10-12月期が前期比0.1%、22年1-3月期が同▲0.7%と低迷が続いている。部品不足などの供給制約が設備投資を抑制しているが、高水準の企業収益を背景に基調としては持ち直しの動きが続いていると判断される。22年4-6月期の設備投資は2四半期ぶりに増加する可能性が高い。
消費財出荷指数は22年1-3月期の前期比▲1.0%の後、4月が前月比0.7%、5月が同▲5.4%となった。5月は耐久消費財が前月比▲15.0%(4月:同▲0.6%)、非耐久消費財が前月比▲0.9%(4月:同2.0%)となった。
GDP統計の民間消費は22年1-3月期に前期比0.1%の低い伸びにとどまった。供給制約の影響で自動車販売は低迷しているが、まん延防止等重点措置の終了を受けて、外食、宿泊などの対面型サービスが回復しているため、4-6月期の民間消費は伸びを大きく高める可能性が高い。
2.4-6月期は3四半期ぶりの減産へ
製造工業生産予測指数は、22年6月が前月比12.0%、7月が同2.5%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(5月)、予測修正率(6月)はそれぞれ▲9.5%、▲6.9%であった。5月の実現率のマイナス幅は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が最初に発令された20年4月(▲11.4%)以来の大きさとなった。輸送機械(▲12.6%)に加え、電気・情報通信機械(▲19.0%)、生産用機械(▲15.3%)、汎用・業務用機械(▲10.3%)など、軒並み二桁のマイナスとなっており、中国のロックダウンの影響が幅広い業種に及んでいることがうかがえる。
予測指数を業種別にみると、22年入り後低迷が続く輸送機械は、6月が前月比11.1%、7月が同13.2%の大幅増産計画となっているが、実際の生産は大きく下振れる可能性が高い。
自動車は、半導体不足や新型コロナウイルス感染拡大による供給制約によって、一部工場の稼働停止が続いてきたが、中国のロックダウンが加わったことで、稼働停止の工場がさらに増えている。
予測指数を業種別にみると、22年入り後低迷が続く輸送機械は、6月が前月比11.1%、7月が同13.2%の大幅増産計画となっているが、実際の生産は大きく下振れる可能性が高い。
自動車は、半導体不足や新型コロナウイルス感染拡大による供給制約によって、一部工場の稼働停止が続いてきたが、中国のロックダウンが加わったことで、稼働停止の工場がさらに増えている。
22年5月の生産指数を6月の予測指数で先延ばしすると、22年4-6月期の生産は前期比▲1.7%となり、3四半期ぶりの減産となることがほぼ確実となった。
中国のロックダウンは6月に解除されていること、まん延防止等重点措置の解除を受けて国内需要は個人消費を中心に回復していることを考慮すれば、先行きの生産は持ち直しに向かうことが予想される。ただし、中国経済の正常化、供給制約の解消までには時間を要することから、そのペースは当面緩やかにとどまる可能性が高い。
中国のロックダウンは6月に解除されていること、まん延防止等重点措置の解除を受けて国内需要は個人消費を中心に回復していることを考慮すれば、先行きの生産は持ち直しに向かうことが予想される。ただし、中国経済の正常化、供給制約の解消までには時間を要することから、そのペースは当面緩やかにとどまる可能性が高い。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年06月30日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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