2022年05月31日

雇用関連統計22年4月-まん延防止等重点措置の解除を受けて、雇用情勢は大きく改善

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は前月から0.1ポイント低下の2.6%

完全失業率と就業者の推移 総務省が5月31日に公表した労働力調査によると、22年4月の完全失業率は前月から0.1ポイント低下の2.5%(QUICK集計・事前予想:2.6%、当社予想も2.6%)となった。労働力人口が前月から22万人の増加となる中、就業者が前月から27万人増加し、失業者は前月から▲3万人減の176万人(いずれも季節調整値)となった。
労働市場への参加者が増える中で、就業者がそれを上回る増加となったことが失業者の減少につながっている。特に、労働需給に敏感な雇用者数は2月の前月差22万人増、3月の同37万人増に続き、4月は同31万人増と大幅に増えており、内容的にも良い失業率の低下といえる。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
就業者数は前年差24万人増(3月:同▲11万人減)と7ヵ月ぶりに増加した。産業別には、製造業は前年差▲19万人減(3月:同14万人増)と4ヵ月ぶりに減少し、卸売・小売(3月:前年差▲39万人減→4月:同▲31万人減)、生活関連サービス・娯楽(3月:前年差▲10万人減→4月:同▲12万人減)は減少が続いたが、医療・福祉が前年差47万人増(3月:同▲2万人減)の大幅増加となったほか、宿泊・飲食サービスが前年差10万人増(3月:同1万人増)と4ヵ月連続で増加した。

雇用者数(役員を除く)は前年に比べ72万人増(3月:同21万人増)と2ヵ月連続の増加となり、増加幅が急拡大した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差51万人増(3月:同7万人増)と2ヵ月連続で増加し、非正規の職員・従業員数が前年差21万人増(3月:同14万人増)と3ヵ月連続で増加した。正規、非正規ともに前年と比べれば増加しているが、コロナ禍前の19年同月と比べると、正規の職員・従業員が134万人増となっているのに対し、非正規の職員・従業員は▲51万人減となっている。

2.宿泊業の休業率は高止まり

主な産業別休業率 休業者数は190万人となり、前年に比べて▲10万人の減少(3月:同22万人増)となった。

休業率(休業者/就業者)を産業別にみると、飲食店(3月:5.4%→4月:2.7%)、娯楽業(3月:4.1%→4月:2.9%)、宿泊業(3月:6.7%→4月:5.9%)のいずれも前月から低下したが、宿泊業はやや高止まりした(休業率は原数値)。

3.有効求人倍率の改善が続く

有効求人倍率の推移 厚生労働省が5月31日に公表した一般職業紹介状況によると、22年4月の有効求人倍率は前月から0.01ポイント上昇の1.23倍(QUICK集計・事前予想:1.23倍、当社予想も1.23倍)となった。有効求職者数が前月比▲0.1%と3ヵ月連続で減少する一方、有効求人数が同0.9%と2ヵ月連続で増加した

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.03ポイント上昇の2.19倍となった。新規求人数が前月比2.5%の増加となり、新規求職申込件数の伸び(同1.2%)を上回った。
 
まん延防止等重点措置が3/21で終了したことを受け、雇用情勢は大きく改善している。飲食、宿泊などの対面型サービス業は引き続き厳しいが、足もとでは外食、旅行などの需要は持ち直している。行動制限が解除された状態が維持されれば、需要の回復が対面型サービス業の雇用にも好影響を及ぼすことが見込まれる。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2022年05月31日「経済・金融フラッシュ」)

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