2021年02月15日

QE速報:10-12月期の実質GDPは前期比3.0%(年率12.7%)-2四半期連続で年率二桁の高成長も、1-3月期はマイナス成長が不可避

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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●10-12月期は前期比年率12.7%の大幅プラス成長

本日(2/15)発表された2020年10-12月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比3.0%(前期比年率12.7%)と2四半期連続で年率二桁の大幅プラス成長となった(当研究所予測1月29日:前期比2.1%、年率8.5%)。

世界的な経済活動の持ち直しを背景に輸出が前期比11.1%の高い伸びとなり、外需寄与度が前期比1.0%(前期比年率4.3%)と成長率を大きく押し上げた。経済活動の制約が緩和される中でGo Toキャンペーン事業による後押しもあって、民間消費が前期比2.2%と2四半期連続で増加し、コロナ禍で大きく落ち込んでいた設備投資が同4.5%と3四半期ぶりに増加したことなどから、国内民間需要も堅調に推移した。さらに、政府消費がGo To トラベル事業による押し上げから前期比2.0%の高い伸びとなったことも成長率を押し上げた。
 
名目GDPは前期比2.5%(前期比年率10.5%)と2四半期連続の増加となったが、実質の伸びは下回った。GDPデフレーターは前期比▲0.5%(7-9月期:同0.2%)、前年比0.2%(7-9月期:同1.2%)であった。
 
2020年10-12月期の1次速報と同時に基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから過去の成長率も遡及改定され、2020年7-9月期の実質GDP成長率は、外需の下方修正を主因として前期比年率22.9%から同22.7%へと下方修正された。

この結果、2020年(暦年)の実質GDP成長率は▲4.8%(2019年は0.3%)、名目GDP成長率は▲3.9%(2019年は0.9%)となり、リーマン・ショック後の2009年(実質▲5.7%、名目▲6.2%)以来の大幅マイナス成長となった。
<需要項目別結果>
<需要項目別の動き>
民間消費は前期比2.2%と2四半期連続で増加した。経済活動の制限が緩和される中で、「Go To Eat」、「Go To トラベル」による後押しもあり、高めの伸びとなった。ただし、新型コロナウイルスの陽性者数増加を受けたGo To キャンペーン事業の一時停止、飲食店の営業時間短縮要請の影響から年末にかけては弱い動きとなった。

実質家計消費の内訳を形態別にみると、被服・履物、家具などの半耐久財(前期比▲2.0%)、食料品などの非耐久財(同▲0.5%)は減少したが、自動車、家電製品などの耐久財が前期比9.2%の高い伸びとなったほか、Go To キャンペーン事業の後押しで、交通、外食、旅行、宿泊などのサービスが同3.0%の増加となった。

雇用者報酬は名目・前年比▲2.7%(7-9月期:同▲2.3%)、実質・前年比▲2.1%(7-9月期:同▲3.1%)と、いずれも3四半期連続のマイナスとなった。雇用者数の減少幅は若干縮小したが、年末賞与の大幅減少を主因に一人当たり賃金の減少幅が拡大した。
 
住宅投資は前期比0.1%と2四半期ぶりに増加した。新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は90万戸台の推移が続いていたが、消費税率が引き上げられた2019年10-12月期に80万戸台半ば、新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化した2020年4-6月期に80万戸程度へと水準を大きく切り下げた後、7-9月期以降は一進一退の動きとなっている。先行きについては、雇用所得環境の悪化が下押し要因となるため、住宅投資の低迷は長期化する可能性が高い。
 
設備投資は前期比4.5%と3四半期ぶりに増加した。輸出、生産が持ち直していることや企業収益の悪化に歯止めがかかったことを受けて増加に転じたが、2021年入り後は緊急事態宣言再発令の影響で経済活動が落ち込むことから、設備投資は再び弱い動きとなることが見込まれる。
 
政府消費は前期比2.0%の増加となった。7-9月期に続き、医療機関の受診抑制が和らいだことに加え、Go Toキャンペーン事業の政府負担分が押し上げ要因となった。
 
公的固定資本形成は、災害復旧や国土強靭化工事の進捗を反映し、前期比1.3%と6四半期連続で増加した。
 
外需寄与度は前期比1.0%(前期比年率4.3%)と2四半期連続のプラスとなった。海外経済の持ち直しを背景に財貨・サービスの輸出が前期比11.1%の高い伸びとなる一方、国内需要の回復ペースの鈍さを反映し輸入が前期比4.1%と7-9月期の大幅減少(前期比▲8.2%)の後としては低い伸びにとどまったことから、7-9月期に続き外需が成長率を大きく押し上げた。
20211-3月期は再びマイナス成長へ)
2020年10-12月期は7-9月期に続く高成長となり、過去最大のマイナス成長となった4-6月期の落ち込みの9割強を2四半期で取り戻した。ただし、日本経済は新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化する前に、消費税率引き上げの影響で落ち込んでいた。直近のピークである2019年7-9月期と比較すると、2020年10-12月期の実質GDPは▲2.9%、民間消費は▲5.3%低い水準にとどまっており、経済活動の正常化にはまだ距離がある。

また、四半期で見れば高成長となったものの、月次ベースでは新型コロナウイルス陽性者数の増加を受けた営業時間短縮要請、Go Toキャンペーン事業の一時停止の影響などから、年末にかけて持ち直しの動きが一服している。さらに、緊急事態宣言の再発令によって、年明け以降の個人消費は、旅行、宿泊などの対面型サービス消費を中心に大きく落ち込んでいる。

2021年1-3月期は民間消費の落ち込みを主因として再びマイナス成長となる可能性が高い。ただし、前回の緊急事態宣言時と比べて対象地域や行動制限の範囲が限られていることに加え、世界的な生産活動の回復を背景に輸出が増加基調を維持することが見込まれるため、成長率のマイナス幅は前回の緊急事態宣言時を大きく下回る可能性が高い。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2021年02月15日「Weekly エコノミスト・レター」)

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