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 - ユーロ圏消費者物価(1月)-5か月連続のマイナスからプラスに転じる
 
2021年02月04日
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1.結果の概要:2020年7月以来のプラスに
                                                                        2月3日、欧州委員会統計局(Eurostat)は12月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
 
            【総合指数】
・前年同月比は+0.9%、市場予想1(+0.6%)から上振れ、前月(▲0.3%)から上昇(図表1)
・前月比は+0.2%、予想(▲0.1%)から上振れ、前月(+0.3%)から減速
【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2】
・前年同月比は+1.4%、予想(+0.9%)から上振れ、前月(同+0.2%)から加速(図表2)
・前月比は▲0.5%、前月(+0.4%)から下落
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。
2.結果の詳細:高インフレは独VAT引き下げ終了のほか、一時的な要因も
                                            1月のHICP上昇率(前年同月比)は、全体で+0.9%の伸び率となり、5か月連続のマイナスからプラスに転じた。特に「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」は+1.4%と2020年7月以来となる1%超えとなり、総合指数もコア部分もいずれも予想を上回っている。
以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。
まず、コア部分の「エネルギーと飲食料を除く総合」(前年同月比+1.4%)の内訳を見ると、「エネルギーを除く財3」は12月の▲0.5%から1月には+1.4%に急増している。「サービス」も12月+0.7%から1月は1.4%である。後述するように、ドイツのVAT引き下げが終了したことが影響していると言える。また、特に財価格の上昇幅が大きいが、これは冬の値下げシーズンの後倒しによって衣類価格の減速が抑えられている影響と見られる。
            以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。
まず、コア部分の「エネルギーと飲食料を除く総合」(前年同月比+1.4%)の内訳を見ると、「エネルギーを除く財3」は12月の▲0.5%から1月には+1.4%に急増している。「サービス」も12月+0.7%から1月は1.4%である。後述するように、ドイツのVAT引き下げが終了したことが影響していると言える。また、特に財価格の上昇幅が大きいが、これは冬の値下げシーズンの後倒しによって衣類価格の減速が抑えられている影響と見られる。
                                                        コア以外の部分では「エネルギー」が、10月▲8.2%→11月▲8.3%→12月▲6.9%→1月▲4.1%マイナス幅の縮小ペースを加速させている。前月比で見ると1月は+3.8%の上昇(12月は+1.6%)となった。エネルギーの前年同月比寄与度は、1月には▲0.42ポイント程度と見られインフレ率の押し下げる効果はかなり弱まっている(前掲図表1・2)。一方「飲食料(アルコール含む)」については、1月は前年同月比で+1.5%(12月+1.3%)となった。このうち加工食品が+1.3%(12月+1.1%)、未加工食品は+1.9%(12月+2.1%)となった。ややインフレ率は加速したが、コア部分よりは緩慢な上昇であった(図表3)。
                                                                        
                            国別のHICP上昇率を見ると(図表4・5)、1月は前年同月比で未公表のオーストリアとスロベニアを除く17か国中16か国でインフレ率が加速し、13か国がプラス圏となっている。
経済大国でウェイトが最も大きいドイツでは、コロナ禍で時限的に導入していたVAT引き下げが12月に終了したことで4、1月には前年同月比+1.6%(12月は▲0.7%)まで上昇した。その他の大国でも、スペイン・フランス・イタリアはマイナス圏からプラス圏に転じている。ただし、前月比で見ればインフレ率が大きく加速している国はドイツとルクセンブルグのみで、他の国では冬の値引きシーズンが後倒しになったことなどにより、例年1月に見られる価格下落が強くなかったことが、前年同月比伸び率を押し上げた要因と言える。後者はごく一時的なものであるため、インフレ率の基調としては、総合指数やコア部分の数値に見られるほど高くないと言えるだろう。 
3 飲食料も除く。
4 ドイツではVAT引き下げを実施しており、インフレ率が押し下げられている。具体的には7月から税率で19%→16%(軽減税率は7%→5%)への引き下げを12月まで実施した。
                                                            
            経済大国でウェイトが最も大きいドイツでは、コロナ禍で時限的に導入していたVAT引き下げが12月に終了したことで4、1月には前年同月比+1.6%(12月は▲0.7%)まで上昇した。その他の大国でも、スペイン・フランス・イタリアはマイナス圏からプラス圏に転じている。ただし、前月比で見ればインフレ率が大きく加速している国はドイツとルクセンブルグのみで、他の国では冬の値引きシーズンが後倒しになったことなどにより、例年1月に見られる価格下落が強くなかったことが、前年同月比伸び率を押し上げた要因と言える。後者はごく一時的なものであるため、インフレ率の基調としては、総合指数やコア部分の数値に見られるほど高くないと言えるだろう。
3 飲食料も除く。
4 ドイツではVAT引き下げを実施しており、インフレ率が押し下げられている。具体的には7月から税率で19%→16%(軽減税率は7%→5%)への引き下げを12月まで実施した。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2021年02月04日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
                            - 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員 
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