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- インデックス・ファンドの選別進む~2020年8月の投信動向~
コラム
2020年09月04日
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全体的に資金流入が鈍化
2020年8月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、外国株式を中心にファンド全体に1,100億円の資金流入があったが、7月の6,100億円の資金流入から大幅に減少した。
資産クラスごとにみても、ファンドの販売が国内債券以外で鈍化したことがうかがえる。外国株式への流入金額は3,400億円と金額自体は大きかったが、新設ファンドによって流入金額が膨らんでいた7月の6,100億円と比べると鈍化した【図表1】。その他に7月に資金流入があったバランス型、国内REIT、外国REITでも8月に資金流入が鈍化、もしくは止まった。さらに7月に資金流出していた国内株式、外国株式、国内債券については、国内債券こそSMA専用ファンドを中心に資金流入があったため資金流入に転じたが、国内株式と外国債券では8月に資金流出が加速した。
資産クラスごとにみても、ファンドの販売が国内債券以外で鈍化したことがうかがえる。外国株式への流入金額は3,400億円と金額自体は大きかったが、新設ファンドによって流入金額が膨らんでいた7月の6,100億円と比べると鈍化した【図表1】。その他に7月に資金流入があったバランス型、国内REIT、外国REITでも8月に資金流入が鈍化、もしくは止まった。さらに7月に資金流出していた国内株式、外国株式、国内債券については、国内債券こそSMA専用ファンドを中心に資金流入があったため資金流入に転じたが、国内株式と外国債券では8月に資金流出が加速した。
投信市場でESGは定着するのか
8月は世界的に株価が上昇する中で、国内株式を中心に株式ファンドでは利益確定の売却が膨らんだ様子である。外国株式でも一部のテーマ型ファンドなどでは大規模な資金流出があった。それでも外国株式は、7月と比べると鈍化したとはいえ2カ月連続の大規模な資金流入となり、販売が堅調であったといえよう。
外国株式の販売を牽引したのは、7月と同様に新規設定ファンドであった。8月に新規設定された外国株式ファンド(うち2本が赤太字)に900億円を超える資金流入があり、さらに7月に新規設定された外国株式ファンド(うち2本が黄太字)にも1,700億円の資金流入があった【図表2】。外国株式への流入金額3,400億円のうち2,700億円、実に8割が7月以降に新規設定されたファンドへの資金流入であった。
8月に新規設定された外国株式ファンドで、特に投資家の人気を集めたものが「野村ブラックロック循環経済関連株投信」(赤太字)である【図表2】。このファンドは、環境保護に注目したテーマ型ファンドである。7月に新規設定さたにも関わらず純資産残高が8月末時点で5,000億円を超えた「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド」と同様にESG(環境:Environment、社会:Social、企業統治:Governance)関連ファンドとみることができる。
ESGについては年金基金といった機関投資家の間で数年前から関心が寄せられていたが、7月、8月のESG関連ファンドの爆発的な売れ行きを見ると、ついに個人投資家が中心の投信市場にもESG(投資)が波及してきたのかもしれない。当然、個人投資家がESG(投資)に本当に熱心になってきているというよりは、ESG関連ファンドの新規設定に合わせて取り扱う販売会社が大々的にプロモーションすることによって、個人投資家にESG(投資)が認知されてきた面が強いだろう。
過去の投信市場を振り返ると、ESGと似たSRI(Socially Responsible Investment:社会的責任投資)やCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)といったテーマが注目を集め、関連するファンドが相次いで設定される時期もあった。そのようなファンドは現在でも償還されず運用されているものも多いが、それらのファンドに対する投資家の関心や人気はあまり長続きしなかった。今回のESGも、投信市場で一過性のいわゆるブームで終わってしまうのか、それとも定着していくのか、個人投資家の関心は移ろいやすいだけに見極めていきたい。
なお、ESG自体は比較的、新しいテーマであり、本当に高い投資収益と相反しないのか、現時点では専門家の間でも意見が分かれている。そのため、足元で人気を集めているESG関連ファンドがこれからどのようなパフォーマンスを上げていくのか、長期的に市場平均を上回るようなパフォーマンスを上げることができるのかにもファンドの人気の動向と合わせて注目すべきであろう。
外国株式の販売を牽引したのは、7月と同様に新規設定ファンドであった。8月に新規設定された外国株式ファンド(うち2本が赤太字)に900億円を超える資金流入があり、さらに7月に新規設定された外国株式ファンド(うち2本が黄太字)にも1,700億円の資金流入があった【図表2】。外国株式への流入金額3,400億円のうち2,700億円、実に8割が7月以降に新規設定されたファンドへの資金流入であった。
8月に新規設定された外国株式ファンドで、特に投資家の人気を集めたものが「野村ブラックロック循環経済関連株投信」(赤太字)である【図表2】。このファンドは、環境保護に注目したテーマ型ファンドである。7月に新規設定さたにも関わらず純資産残高が8月末時点で5,000億円を超えた「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド」と同様にESG(環境:Environment、社会:Social、企業統治:Governance)関連ファンドとみることができる。
ESGについては年金基金といった機関投資家の間で数年前から関心が寄せられていたが、7月、8月のESG関連ファンドの爆発的な売れ行きを見ると、ついに個人投資家が中心の投信市場にもESG(投資)が波及してきたのかもしれない。当然、個人投資家がESG(投資)に本当に熱心になってきているというよりは、ESG関連ファンドの新規設定に合わせて取り扱う販売会社が大々的にプロモーションすることによって、個人投資家にESG(投資)が認知されてきた面が強いだろう。
過去の投信市場を振り返ると、ESGと似たSRI(Socially Responsible Investment:社会的責任投資)やCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)といったテーマが注目を集め、関連するファンドが相次いで設定される時期もあった。そのようなファンドは現在でも償還されず運用されているものも多いが、それらのファンドに対する投資家の関心や人気はあまり長続きしなかった。今回のESGも、投信市場で一過性のいわゆるブームで終わってしまうのか、それとも定着していくのか、個人投資家の関心は移ろいやすいだけに見極めていきたい。
なお、ESG自体は比較的、新しいテーマであり、本当に高い投資収益と相反しないのか、現時点では専門家の間でも意見が分かれている。そのため、足元で人気を集めているESG関連ファンドがこれからどのようなパフォーマンスを上げていくのか、長期的に市場平均を上回るようなパフォーマンスを上げることができるのかにもファンドの人気の動向と合わせて注目すべきであろう。
インデックス・ファンドの選別が進む
外国株式では、新規設定ファンド以外に一部の米国株式ファンド(青太字)も投資家の人気を集めた【図表2】。米国株式は8月にS&P500種株価指数が過去最高値を更新するなど、ハイテク株を中心に株価が急速に回復してきたこともあり、米国株式に期待する投資家が多いのかもしれない。
8月に資金流入が大きかった米国株式ファンド(青太字)を詳しくみると、アクティブ・ファンドに交じってインデックス・ファンドである「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」にも100億円を超える資金流入があった。その他にも50億円を超える資金流入があった米国株式のインデックス・ファンドが2本(青太字)あった【図表3:上段】。
その一方で、外国株式インデックス・ファンドの中で流出金額が最大のファンドでも純流出がたった26億円と少額であった。しかし、流出額が大きいファンド上位はいずれもダウ工業株30種平均に連動する米国株式のインデックス・ファンドばかりであった【図表3:下段】。このように8月は一言で米国株式のインデックス・ファンドといっても、大規模な資金流入しているファンドがある一方で資金流出しているファンドもあった。
米国株式のインデックス・ファンドで資金流入しているもの(上段)と資金流出しているもの(下段)とでは、参照している米国株式指数の違いや つみたてNISAで購入可能かどうかなどの違いがある。ダウ工業株30種平均はS&P500種株価指数などの時価総額型の株価指数と比べて米国株式を牽引しているハイテク株が組み入れられている割合が低いこともあり、投資家から敬遠されている可能性がある。さらに資金流出しているファンドのほとんどが つみたてNISA口座から購入できないため、つみたてNISAからの資金流入がないことも影響しているかもしれない。
ただ、それ以上に信託報酬の違いが資金動向に大きく影響していると思われる。資金流入しているファンドでは米国株式によらず信託報酬が年間で0.2%以下であるのに対して、資金流出している米国株式インデックス・ファンドはすべて0.5%を超えており、0.3%以上の差がある。
つまり、外国株式インデックス・ファンドは全体でみると2020年に入ってから以前よりも大規模な資金流入が続き販売は好調であるが、外国株式インデックス・ファンドでも相対的に高コストなファンドには新規の資金が入りにくくなってきているのかもしれない。そのため、8月のように株価が上昇し利益確定の売却が出やすいタイミングでは、新規資金が細っているだけに利益確定売りに押されて資金流出に転じたのではないだろうか。8月に資金流入が大きかったインデックス・ファンドでも利益確定の売却があったと思われるが、それ以上に新規の資金が集まっているため、大規模な資金流入になっていると推察される。
そのことは、8月に限らず1-7月の資金動向からもうかがえる。8月に資金流出が大きかったファンドでも1-7月は資金流入していたが、流入金額は8月に資金流入が大きかったファンドと比べて、やはり少額であった。
その一方で、外国株式インデックス・ファンドの中で流出金額が最大のファンドでも純流出がたった26億円と少額であった。しかし、流出額が大きいファンド上位はいずれもダウ工業株30種平均に連動する米国株式のインデックス・ファンドばかりであった【図表3:下段】。このように8月は一言で米国株式のインデックス・ファンドといっても、大規模な資金流入しているファンドがある一方で資金流出しているファンドもあった。
米国株式のインデックス・ファンドで資金流入しているもの(上段)と資金流出しているもの(下段)とでは、参照している米国株式指数の違いや つみたてNISAで購入可能かどうかなどの違いがある。ダウ工業株30種平均はS&P500種株価指数などの時価総額型の株価指数と比べて米国株式を牽引しているハイテク株が組み入れられている割合が低いこともあり、投資家から敬遠されている可能性がある。さらに資金流出しているファンドのほとんどが つみたてNISA口座から購入できないため、つみたてNISAからの資金流入がないことも影響しているかもしれない。
ただ、それ以上に信託報酬の違いが資金動向に大きく影響していると思われる。資金流入しているファンドでは米国株式によらず信託報酬が年間で0.2%以下であるのに対して、資金流出している米国株式インデックス・ファンドはすべて0.5%を超えており、0.3%以上の差がある。
つまり、外国株式インデックス・ファンドは全体でみると2020年に入ってから以前よりも大規模な資金流入が続き販売は好調であるが、外国株式インデックス・ファンドでも相対的に高コストなファンドには新規の資金が入りにくくなってきているのかもしれない。そのため、8月のように株価が上昇し利益確定の売却が出やすいタイミングでは、新規資金が細っているだけに利益確定売りに押されて資金流出に転じたのではないだろうか。8月に資金流入が大きかったインデックス・ファンドでも利益確定の売却があったと思われるが、それ以上に新規の資金が集まっているため、大規模な資金流入になっていると推察される。
そのことは、8月に限らず1-7月の資金動向からもうかがえる。8月に資金流出が大きかったファンドでも1-7月は資金流入していたが、流入金額は8月に資金流入が大きかったファンドと比べて、やはり少額であった。
株式ファンドのパフォーマンスが総じて好調
(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
(2020年09月04日「研究員の眼」)
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経歴
- 【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)
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