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- ユーロ圏消費者物価(5月)-ゼロ%近辺まで低下
2020年06月01日
1.結果の概要:前月比で下落
5月29日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
【総合指数】
・前年同月比は+0.1%、市場予想1(+0.1%)通りで、前月(+0.4%)から減速(図表1)
・前月比は▲0.1%、予想(▲0.1%)通りで、前月(同+0.3%)から減速
【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2】
・前年同月比は+0.9%、予想(+0.8%)より上振れ、前月(同+0.9%)から加速(図表2)
・前月比は+0.0%、前月(+0.7%)から減速した
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料もの除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。
2.結果の詳細:エネルギーがそれ以外の物価上昇を相殺する構図
まず、5月のHICPの品目別成長率を「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」「エネルギー」「食料品(アルコール含む)」の3区分に分けて見る
コア部分の「エネルギーと飲食料を除く総合」は前年同月比で加速に転じており、内訳としては「エネルギーを除く財」が若干減速3、「サービス」は若干加速となった(図表3)。ただし、前月比ベースで見ると、「エネルギーと飲食料を除く総合」もその内訳である「エネルギーを除く財」、「サービス」も+0.0%の伸び率となり、4月(それぞれ前月比+0.7%、+0.6%、+0.8%)まで見られた上昇圧力が5月に入ってほとんど見られなくなったと言える。
次に「エネルギー」を見ると、5月も下落基調が続いており、前年同月比▲12.0%、前月比▲1.7%となっている。その結果、前年同月比寄与度では、▲1.26%ポイントまでマイナスを拡大させている(前掲図表1・2)。
一方、「飲食料(アルコール含む)」は前年同月比+3.3%とやや高めの上昇が続いている(図表3)。ただし、上昇ペースは減速しており、前月比では、前月比+0.2%(4月は前月比+1.1%)の上昇にとどまっている。内訳を見ると、加工食品・アルコールが若干加速しているものの、4月にかけ急上昇していた未加工食品が落ち着いた(前月比で4月3.4%→5月+0.1%)要因が上昇ペースの減速要因として大きい。
全体としてみると、「コア部分」と「飲食料」の上昇ペースが緩やかになるなかで、「エネルギー」が引き続き下落する構図となった。その結果、総合指数は前月比ベースで若干下落している。
次に「エネルギー」を見ると、5月も下落基調が続いており、前年同月比▲12.0%、前月比▲1.7%となっている。その結果、前年同月比寄与度では、▲1.26%ポイントまでマイナスを拡大させている(前掲図表1・2)。
一方、「飲食料(アルコール含む)」は前年同月比+3.3%とやや高めの上昇が続いている(図表3)。ただし、上昇ペースは減速しており、前月比では、前月比+0.2%(4月は前月比+1.1%)の上昇にとどまっている。内訳を見ると、加工食品・アルコールが若干加速しているものの、4月にかけ急上昇していた未加工食品が落ち着いた(前月比で4月3.4%→5月+0.1%)要因が上昇ペースの減速要因として大きい。
全体としてみると、「コア部分」と「飲食料」の上昇ペースが緩やかになるなかで、「エネルギー」が引き続き下落する構図となった。その結果、総合指数は前月比ベースで若干下落している。
5月の国別のHICP上昇率を見ると(図表4・5)、未公表のオーストリアを除く18カ国中12カ国で前年同月比マイナスとなった。5月はウェイトの大きいイタリアがマイナスに転じている。ウェイトで最大のドイツは4月に続きプラス圏にとどまっているものの、上昇圧力は強くない(前年同月比+0.5%、前月比では+0.0%)。その他プラス圏となっている国も物価上昇圧力がある国はほとんど見られなくなっていると言える。
世界的には原油価格には下げ止まりの兆候が見えるものの、ユーロ圏ではこれまで物価上昇要因となってきた生活必需品の食料品価格の上昇圧力も一服している。今後も、エネルギーとそれ以外の価格の綱引きが続く構図になると見られるが、経済活動に制限がかかるなかで財・サービスの価格には上昇圧力が生じにくく、インフレ率はしばらくゼロ%近辺での推移となるだろう。
世界的には原油価格には下げ止まりの兆候が見えるものの、ユーロ圏ではこれまで物価上昇要因となってきた生活必需品の食料品価格の上昇圧力も一服している。今後も、エネルギーとそれ以外の価格の綱引きが続く構図になると見られるが、経済活動に制限がかかるなかで財・サービスの価格には上昇圧力が生じにくく、インフレ率はしばらくゼロ%近辺での推移となるだろう。
3 飲食料も除く。
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経歴
- 【職歴】
2002年 東京工業大学入学(理学部)
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
(2020年06月01日「経済・金融フラッシュ」)
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