2020年05月01日

ユーロ圏消費者物価(4月)-エネルギー価格下落で減速が続く

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:減速傾向が続く

4月30日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数】
前年同月比は+0.4%、予想1(+0.1%)より上振れ、前月(+0.7%)から減速(図表1)
前月比は+0.3%、予想(+0.1%)より上振れ、前月(同+0.5%)から減速

【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2
前年同月比は+0.9%、予想(+0.7%)より上振れ、前月(同+1.0%)から減速(図表2)
前月比は+0.9%、前月(+1.0%)から減速した

(図表1)ユーロ圏のHICP上昇率/(図表2)ユーロ圏のHICP上昇率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料もの除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。

2.結果の詳細:エネルギーが大幅下落する一方、飲食料には上昇圧力

図表2を見ると、4月のHICPの品目別成長率(前年同期比)は、3月に続いて「サービス」「エネルギーを除く財」「エネルギー」でいずれも減速したことがわかる。特に、新型コロナウィルス(COVID-19)の影響により、原油需要が低下したことによるエネルギー価格の下落幅は大きい(前年同期比▲9.6%、前月比▲4.8%)。また、その他の財・サービスに対しても引き続き、低下圧力がかかっている。
(図表3)ユーロ圏の飲食料価格の上昇率と内訳 一方外出制限がなされる中で、むしろ需要が増えると考えられる飲食料については、図表3からわかるように、上昇圧力が生じている。加工食品・アルコールで前年同月比+2.4%(前月比+0.5%)、未加工食品では前年同月比+7.7%(前月比+3.5%)と比較的高い上昇率を記録した。飲食料全体(アルコール含む)では、前年同月比3.6%(前月比+1.2%)となり、エネルギー価格の下落を打ち消すほどではないものの、2015年基準指数では最も高い上昇率を記録した。
国別のHICP上昇率では、図表4の通り4月のデータが開示されている17カ国の中では、マルタとオランダを除いて前年同期比減速している。前月比上昇率ではマルタとオランダで高い(図表5)がこれらはいずれも季節的な要因によるものであり、足元での物価上昇圧力とは言えない。多くの国でインフレ率は低下傾向にある。

今後についても、生活必需品である食料品価格には上昇圧力がかかるが、原油価格の低迷と行動制限による需要低下が多くの財・サービスで続くと予想されるため、全体として見るとしばらくは低インフレでの推移が続くとみられる。
(図表4)ユーロ圏HICP上昇率(前年同月比)/(図表5)ユーロ圏HICP上昇率(前月比)
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2020年05月01日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

     ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
      アドバイザー(2024年4月~)

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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