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2025年11月11日

東京オフィス賃料は上昇基調が強まる。REIT市場は6カ月連続で上昇-不動産クォータリー・レビュー2025年第3四半期

金融研究部 上席研究員 吉田 資

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(2) 賃貸マンション
東京23区のマンション賃料は、全ての住居タイプで前年同期比プラスとなった。三井住友トラスト基礎研究所・アットホームによると、2025年第2四半期はシングルタイプが+7.7%、コンパクトタイプが+7.5%、ファミリータイプが+12.0%であった(図表-12)。

一方で、総務省によると、2025年1-9月累計の東京23区における転入超過数は+ 44,149人となり、前年同期比▲27%減少した。昨年8月以降、14カ月連続で前年同月を下回っており、都心部への人口流入は鈍化傾向にある。
図表-12 東京23区のマンション賃料
(3) 商業施設・ホテル・物流施設
商業セクターでは、インバウンド消費の落ち込みなどを背景に百貨店の売上が減少していたが、足もとでは快方に向かっている。商業動態統計などによると、2025年7-9月の小売販売額(既存店、前年同期比)は百貨店が▲1.1%、スーパーが+2.3%、コンビニエンスストアが+1.8%となった。9月単月では、百貨店が+1.4%(2カ月連続のプラス)、スーパーが+2.1%(11カ月連続のプラス)、コンビニエンスストアが+1.2%(7カ月連続のプラス)となっている(図表-13)。
図表-13 百貨店・スーパー・コンビニエンスストアの月次販売額(既存店、前年比)
ホテル市場では、日本人による宿泊需要の低迷やインバウンド需要の鈍化6を受けて、第3四半期の宿泊者数は前年同期比でマイナスに転じた。宿泊旅行統計調査によると、2025年7-9月累計の延べ宿泊者数は前年同期比▲1.0%(2019年同期比+7.9%)、このうち日本人が同▲1.7%(同+0.5%)、外国人が同+1.3%(同+43.1%)となった(図表-14)。一方、2025年1-9月累計の訪日外国人客数は約3,165万人(前年同期比+17.7%)となり、過去最速のペースで3,000万人を突破した。
図表-14 延べ宿泊者数の推移(2019年同月比、2020年1月~2025年9月)
物流賃貸市場は、首都圏では外縁部を中心に空室率が高止まりしている。シービーアールイー(CBRE)によると、2025年第3四半期の首都圏における大型マルチテナント型物流施設の空室率は10.4%(前期比▲0.5ポイント)となった(図表-15)。今期の新規供給物件(3棟・11.8万坪)の竣工時稼働率は5割弱にとどまり、空室率は3四半期連続で10%を上回った。もっとも、今後の新規供給は外環道エリアで増加するものの、圏央道エリアでは減少するため、空室率は緩やかに低下する見通しとのことである。一方、近畿圏の空室率は5.0%(前期比▲0.6ポイント)に低下した。今期の新規供給は3四半期連続で10万坪を超える11.3万坪となったが、新規需要は過去最大の12.2万坪に達し、良好な需給バランスを維持している。

また、一五不動産情報サービスによると、2025年7月の東京圏の募集賃料は4,620円/月坪(前期比▲1.1%)となり、5四半期連続で下落した。
図表-15 大型マルチテナント型物流施設の空室率
 
6 「日本で災害が発生する」との情報がSNS等で拡散したことが影響した。

4.J -REIT(不動産投信)市場

4.J -REIT(不動産投信)市場

2025年第3四半期の東証REIT指数(配当除き)は6月末比+8.0%上昇した。業種別では、オフィスが+7.5%、住宅が+10.6%、商業・物流等が+7.6%と総じて堅調に推移するなか、これまで出遅れていた住宅が相対的に良好なパフォーマンスであった(図表-16)。9月末時点のバリュエーションは、純資産12.2兆円に保有物件の含み益6.0兆円を加えた18.2兆円に対して、市場時価総額は16.6兆円でNAV倍率7は0.91倍、分配金利回りは4.6%、10年国債利回りに対するイールドスプレッドは3.0%となっている。
図表-16 東証REIT指数の推移(2024年12月末=100)
J-REITによる第3四半期の物件取得額(引渡しベース)は3,255億円(前年同期比▲11%)、1-9月累計では9,008億円(同▲19%)となった(図表-17)。アセットタイプ別の取得割合は、オフィス(35%)・ホテル(32%)・住宅(17%)・物流施設(9%)・商業施設(4%)・底地ほか(2%)の順となり、今後の賃料上昇期待が高いオフィス・ホテル・住宅で全体の8割超を占めている。

J-REIT市場は年初来の上昇率が16.2%に達し、上昇スピードへの警戒感があるものの、好調な不動産賃貸市況や米国での利下げ再開、海外投資家の買い越しなど需給環境の改善を背景に、今後は市場全体のNAV倍率が1倍の水準を回復できるかが注目される。
図表-17 J-REITによる物件取得額(四半期毎)
 
7 NAV倍率は、市場時価総額がリートの解散価値(NAV:Net Asset Value)の何倍で評価されているかを表わす指標。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年11月11日「不動産投資レポート」)

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金融研究部   上席研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴
  • 【職歴】
     2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
     2018年 ニッセイ基礎研究所
     2025年7月より現職

    【加入団体等】
     一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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