2025年08月07日

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1.はじめに

仙台のオフィス市場では、立地改善や設備のグレードアップを図るオフィス需要が旺盛であり、空室率は低下し、成約賃料は堅調に推移している。本稿では、仙台オフィス市場の現況を概観した上で、2029年までの賃料予測を行う。

2.仙台オフィス市場の現況

2.仙台オフィス市場の現況

2-1.空室率および賃料の動向
三幸エステートによると、仙台市の空室率(2025年7月時点)は6.0%となり、前年から▲0.3ppt低下した(図表-1)。人材確保や従業員満足度の向上などを目的に、立地改善や建物設備のグレードアップを図るオフィス需要が旺盛であることが主因と考えられる。

空室率をビルの規模1別にみると、「小型9.4%(前年比+1.1ppt)」と「大型4.8%(同+0.1ppt)」が上昇した一方、「中型6.6%(同▲0.6ppt)」と「大規模5.9%(同▲0.7ppt)」は低下した(図表-2)。
図表-1 主要都市のオフィス空室率/図表-2 仙台オフィスの規模別空室率
需給環境の改善に伴い、成約賃料は堅調に推移している。2024年下期の仙台市の成約賃料は、前年比+4.4 %、前期比▲1.2%となった(図表-3)。
図表-3 主要都市のオフィス成約賃料(オフィスレント・インデックス)
2024年の空室率と成約賃料の動き(前年比)を主要都市で比較すると、空室率は、東京都心5区、名古屋市、福岡市で低下し、仙台市は概ね横ばい、大阪市と札幌市はやや上昇となった。また、成約賃料は、札幌市が概ね横ばい、その他の都市は上昇となった(図表-4)。

賃料と空室率の関係を表した仙台市の賃料サイクル2は、「空室率低下・賃料上昇」の局面を経て、「空室率上昇・賃料上昇」の局面に移行しつつあったが、足元では空室率が低下している(図表-5)。
図表-4 2023年の主要都市のオフィス市況変化/図表-5 仙台オフィス市場の賃料サイクル
 
1 三幸エステートの定義による。大規模ビルは基準階面積200坪以上、大型は同100~200坪未満、中型は同50~100坪未満、小型は同20~50坪未満。
2 賃料サイクルとは、縦軸に賃料、横軸に空室率をプロットした循環図。通常、(1)空室率低下・賃料上昇→(2)空室率上昇・賃料上昇→(3)空室率上昇・賃料下落→④空室率低下・賃料下落、と時計周りに動く。
2-2.オフィス市場の需給動向
三鬼商事によると、仙台ビジネス地区では、「T-PLUS仙台」などの大型ビルが竣工したことに伴い、2024年末の賃貸可能面積(総供給面積)は 48.8万坪(前年比+0.3万坪)に増加した。一方、2024年末のテナントによる賃貸面積(総需要面積)は46.0万坪(前年比+0.5万坪)となり、空室面積は2.9万坪(前年比▲0.2万坪)と前年比▲5%減少した(図表-6)。
図表-6 仙台ビジネス地区の賃貸可能面積・賃貸面積・空室面積
図表-7 仙台ビジネス地区の賃貸可能面積・賃貸面積・空室面積の増減
2-3.空室率と募集賃料のエリア別動向
2024年末時点で「賃貸可能面積」が最も大きいエリアは、「駅前地区(36.7%)」で、次いで「一番町周辺地区(30.6%)」、「駅東地区(15.0%)」、「県庁・市役所周辺地区(12.5%)」の順となっている(図表-8)。

賃貸可能面積は、「駅前地区」(前年比+2.4千坪)と「駅東地区」(同+1.2千坪)で増加した一方、「県庁・市役所周辺地区」(同▲0.3千坪)で減少し、合計+3.3千坪の増加となった。

これに対して、テナントによる「賃貸面積」は、「駅前地区」(前年比+3.3千坪)や「一番町周辺地区」(同+1.1千坪)、「駅東地区」(同+0.5千坪)等で増加し、合計+5.0千坪の増加となった。

この結果、空室面積は、「駅東地区」(前年比+0.6千坪)等で増加した一方、「一番町周辺地区」(同▲1.1千坪)や「駅前地区」(同▲0.9千坪)、「県庁・市役所周辺地区」(同▲0.4千坪)で減少し、仙台ビジネス地区全体で▲1.7千坪の減少となった(図表-9)。
図表-8 仙台ビジネス地区の地区別オフィス面積構成比(2024年)/図表-9 仙台ビジネス地区の地区別オフィス需給面積増分(2024年)
エリア別の空室率(2025年6月時点)を確認すると、「駅東地区8.9%」(前年比▲0.2ppt)、「駅前地区6.0%」(同▲0.1ppt)、「一番町周辺地区4.8%」(同▲0.7ppt)が低下した一方、「周辺オフィス地区8.0%」(同+1.0ppt)と「県庁・市役所周辺地区6.0%」(同+0.5ppt)は上昇した(図表-10左図)。

募集賃料は、「県庁・市役所周辺地区(前年比▲0.2%)」を除く全ての地区で上昇し、「周辺オフィス地区(同+2.6%)」と「駅東地区(同+1.8%)」の上昇率が大きくなっている(図表-10右図)。
図表-10 仙台ビジネス地区の地区別空室率・募集賃料の推移(月次)

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年08月07日「不動産投資レポート」)

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金融研究部   上席研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴
  • 【職歴】
     2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
     2018年 ニッセイ基礎研究所
     2025年7月より現職

    【加入団体等】
     一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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