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男女別にみたミドル(40代後半~50代前半)の転職状況~厚生労働省「雇用動向調査」(2023年)より~

生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子
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1――はじめに
1 坊美生子(2025)「男女別にみた転職市場の状況~中高年男女でも正規雇用の転職や転職による賃金アップが増加」(基礎研レポート)
2 「男女別にみたシニア(50代後半~60代前半)の転職状況~厚生労働省「雇用動向調査」(2023年)より~」(基礎研レポート)
2――ミドルの就業状況
ミドルの転職状況について分析する前に、現状でのミドルの就業状況を確認しておきたい。この世代の最大の特徴は、年間出生数が200万人を超えていた「団塊ジュニア世代」が、50代前半に含まれているため、他の世代に比べて就業者数が多いことである(図表1)。総務省の「労働力調査」(2024年)によると、「50~54歳」の就業者数は、男女合わせると841万人で、すべての年齢階級の中で最大である。また、より上の世代に比べると、女性の社会進出が進み、女性の就業率が上昇したことも特徴である。男女別、年齢階級別のミドルの就業者数や就業率などは図表2に示した。
因みに、年間出生数が120万人前後に低下した「25~29歳」の階級だと、就業率は「50~54歳」と大きな差はないが、就業者数は男女合わせて572万人に減少する。このような急激な少子化が、各産業に人手不足をもたらし、ミドルシニアに対する採用拡大につながっていると言える。
次に、ミドルが就いている具体的な職種を確認する。同じく総務省の「労働力調査」(2024年)より、「45~49歳」と「50~54歳」の就業者数を職業別にランキング(「45~49歳」の就業者数による順位付け)したものが図表3である。なお、「就業者」には、自営業者や企業の役員なども含まれる。
まず男性について見ると、「45~49歳」では就業者420万人のうち、「専門的・技術的職業従事者」(開発・設計など)と「生産工程従事者」(生産工程で行われる仕事)と「事務従事者」がいずれも全体の2割弱で、ほぼ肩を並べている。トップの「専門的・技術的職業従事者」の内訳を見ると、「技術者」、「保健医療従事者」(医師や看護師、理学療法士など)、「教員」、「その他の専門的・技術的職業従事者」(研究者、弁護士、保育士など)の4分類のうち、「技術者」が半数以上を占めている。
4位は「販売従事者」であり、その内訳を見ると、「商品販売従事者」(販売店員など)、「販売類似職業従事者」(不動産仲介など)、「営業職業従事者」(金融・保険営業職業従事者、医薬品営業職業従事者など)の3分類のうち、「営業職業従事者」が大部分である。
次に「50~54歳」を見ると、首位が入れ替わって「事務従事者」が最大の82万人に上る。次いで「生産工程従事者」、3位が「専門的・技術的職業従事者」である。この三つは男性全体でも三大職業であり、ミドル男性でもやはり三大職業である。
就業者数に対する各職業の構成割合は、「45~49歳男性」も「50~54歳男性」も大きな違いはないが、「管理的職業従事者」に関しては「50~54歳」の方が、構成割合が0.7ポイント高い3.3%である。因みに、男性の中で最も「管理的職業従事者」の割合が高くなる年齢階級別は「60~64歳」(5.4%)である。また、タクシー運転手を含む「輸送・機械運転従事者」も「45~49歳」よりも「50~54歳」の方が1.3ポイント上昇して7.0%となる。因みにタクシー運転手は、役職定年や定年退職後に入職する男性も多く、年齢階級別でみると「輸送・機械運転従事者」の構成割合は「65~69歳」で最も高い9.4%となる。
次に女性について見ると、「45~49歳」では就業者358万人のうち、最大の119万人が「事務従事者」であり、全体の3割を超える。事務は、女性の25歳から60歳未満のすべての年齢階級で3割前後を占めており、女性の最大の職業であるが、中でも就業数に占める構成割合が最大となるのが「45~49歳」の33.2%である。2位は「専門的・技術的職業従事者」だが、内訳を見ると、男性と違って、半数近くが「保健医療従事者」(医師や看護師、理学療法士など)、3割強が「その他の専門的・技術的職業従事者」(研究者、弁護士、保育士など)であり、「技術者」は1割未満だった。
女性の「50~54歳」でも、やはり「事務従業者」がトップで、全体の3割以上を占める。その内訳を見ると、「一般事務従事者」、「会計事務従事者」、「その他の事務従事者」の3分類のうち、「一般事務従事者」の構成割合は「45~49歳」より下がるが、「会計事務従事者」は上がる。同じ事務職の中でも、「一般事務」に就く女性の方が、離職が早いと言えそうだ。「50~54歳女性」の職業の2位も「45~49歳」と同様に、「専門的・技術的職業従事者」であり、やはり、内訳は「保健医療従事者」と「その他の専門的・技術的職業従事者」が多い。
就業者数に対する各職業の構成割合を、「45~49歳」と「50~54歳」で比較すると、「50~54歳」の方が、「専門的・技術的職業従事者」が2.2ポイント低下するのに対し、介護サービス職業従事者などの「サービス職業従事者」は1.5ポイント上昇する。
次に、就業者から自営業者などを除いた「雇用者」(役員を含む)の人数について、産業別に順位付けしたものが図表4である。まず男性は、「45~49歳」では雇用者384万人のうち「製造業」が4分の1を占める。これに「卸売業,小売業」と「建設業」が続いている。「50~54歳」でも上位の順位は変わらないが、全雇用者に占める構成割合を見ると、「製造業」では「45~49歳」より「50~54歳」の方が9.0ポイント小さい。
次に女性は、「45~49歳」では雇用者336万人のうち「医療、福祉」が3割弱を占める。すべての年齢階級を合わせても、「医療、福祉」の雇用者は4人のうち3人が女性であり、女性中心の産業であるが、ミドルの雇用者数に関しても同様の傾向だった。2位以下は「卸売業,小売業」と「製造業」が続いている。女性の場合も、「50~54歳」でも「45~49歳」と上位は変わらないが、トップの「医療、福祉」の内訳を見ると、「45~49歳」よりも「50~54歳」の方が、「医療業」はやや減少し、「社会保険・社会福祉・介護事業」がやや増加している。「社会保険・社会福祉・介護事業」は、年齢階級別にみると、「50~54歳」の雇用者数が最大である。
(2025年03月31日「基礎研レポート」)

03-3512-1821
- 【職歴】
2002年 読売新聞大阪本社入社
2017年 ニッセイ基礎研究所入社
【委員活動】
2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
2023年度 日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員
坊 美生子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/03/31 | 男女別にみたミドル(40代後半~50代前半)の転職状況~厚生労働省「雇用動向調査」(2023年)より~ | 坊 美生子 | 基礎研レポート |
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