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- グローバル株式市場動向(2025年2月)-国・地域によりまちまちな展開
2025年03月10日
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1――米国の関税引き上げにより多くの国が悪影響を受ける一方で欧州や中国は上昇
2025年2月、世界の株式市場は米国や日本の株式市場が下落した一方で、欧州や中国が上昇し地域によりまちまちな結果となった。トランプ大統領により他国への関税引き上げが次々と行われた。これにより米国自身を含む多くの国での貿易・経済の懸念材料となった。一方で欧州の好調な企業決算や金利低下、中国での当局による民間企業支援といった要因で上昇する国もあった。代表的な世界株指数(含む新興国)であるMSCI All Country World Index (MSCI ACWI)の騰落率1は2025年2月▲0.7%、過去1年(2024年3月-2025年2月)では+13.4%となっている(図表1)。
先進国と新興国を比べると、先進国が下落する一方で、新興国は上昇した。先進国(MSCI World Index)が▲0.8%、新興国(MSCI Emerging Markets Index)が+0.4%となった(図表2)。
先進国と新興国を比べると、先進国が下落する一方で、新興国は上昇した。先進国(MSCI World Index)が▲0.8%、新興国(MSCI Emerging Markets Index)が+0.4%となった(図表2)。
1 以下、特に断りのない限り騰落率は米ドル建、配当を除いた指数値の変化率を示す。
2――国・業種別の動向
国別の動向はまちまちであった(図表5)。主要国について見ると、米国(▲1.7%)、中国(+11.7%)、ドイツ(+3.4%)、日本(▲1.2%)となった。騰落率が高かった国・地域はアイルランド(+12.5%)、中国(+11.7%)、スペイン(+9.3%)だった。一方で、インドネシア(▲15.7%)、アルゼンチン(▲11.7%)、タイ(▲9.6%)の騰落率が低かった。
米国では、トランプ大統領が相互関税を導入すると発表したことから貿易戦争の懸念が高まり下落した2。また、2月7日に公表された雇用統計が市場予想を下回ったことも下落要因となった。
日本では、金利上昇により円高が進行するとともに長期金利が上昇した。これにより株式市場は円建てでは下落したが、円高によりドル建てでは上昇となった。市場では日銀の政策金利のターミナルレート(利上げ到達点)は1%程度との見方が多かったが最近の日銀関係者の発言や経済・物価状況から中長期的に1.5%まで利上げされるとの見方が広がっており今後の動向が注目される。
中国では、習近平国家主席が電子商取引大手アリババの創業者の馬雲(ジャック・マー)氏など民間起業家との座談会を開き、当局が民間セクターを支援する姿勢を示したことから上昇した3。習氏がこうした民間との座談会を行うことは珍しい。また、中国当局は上場企業に対して、配当や自社株買いの強化などにより資本効率の向上を促すことで株価浮揚を図っている。
欧州では、堅調な企業決算や金利低下による景気回復期待からアイルランド、スペインをはじめ多くの国が上昇した。また、ウクライナでの停戦協議の進展期待が株式市場を後押しした。
インドネシアでは、米国の関税引き上げによる貿易への懸念や通貨安から下落した4。インドネシアルピアは昨年9月から対ドルで下落が続いている。インドネシアの通貨安は貿易の経常赤字による資金流出や相対的に高金利である米ドルへの投資資金の流出などが背景となっている5。
米国では、トランプ大統領が相互関税を導入すると発表したことから貿易戦争の懸念が高まり下落した2。また、2月7日に公表された雇用統計が市場予想を下回ったことも下落要因となった。
日本では、金利上昇により円高が進行するとともに長期金利が上昇した。これにより株式市場は円建てでは下落したが、円高によりドル建てでは上昇となった。市場では日銀の政策金利のターミナルレート(利上げ到達点)は1%程度との見方が多かったが最近の日銀関係者の発言や経済・物価状況から中長期的に1.5%まで利上げされるとの見方が広がっており今後の動向が注目される。
中国では、習近平国家主席が電子商取引大手アリババの創業者の馬雲(ジャック・マー)氏など民間起業家との座談会を開き、当局が民間セクターを支援する姿勢を示したことから上昇した3。習氏がこうした民間との座談会を行うことは珍しい。また、中国当局は上場企業に対して、配当や自社株買いの強化などにより資本効率の向上を促すことで株価浮揚を図っている。
欧州では、堅調な企業決算や金利低下による景気回復期待からアイルランド、スペインをはじめ多くの国が上昇した。また、ウクライナでの停戦協議の進展期待が株式市場を後押しした。
インドネシアでは、米国の関税引き上げによる貿易への懸念や通貨安から下落した4。インドネシアルピアは昨年9月から対ドルで下落が続いている。インドネシアの通貨安は貿易の経常赤字による資金流出や相対的に高金利である米ドルへの投資資金の流出などが背景となっている5。
2 ロイター通信、「米国株式市場=下落、貿易戦争巡る懸念で 精彩欠く雇用統計も嫌気」、2025年2月8日
3 ロイター通信、「中国主席が馬雲氏ら招き座談会主宰、ディープシーク創業者も出席か」、2025年2月17日
4 Bloomberg、「インドネシア中銀、ルピア支援-株価指数は弱気相場入りの方向」、2025年2月28日
5 ロイター通信、「インドネシア経常赤字、24年は対GDP比0.6%に拡大」、2025年2月20日
3――世界の主要企業の株価動向
世界の主要な企業の株価はまちまちとなった (図表7)。時価総額上位30位までの企業では、アッヴィ(+19.6%)、テンセント・ホールディングス(+19.5%)、イーライリリー(+14.6%)のリターンが高かった。一方で、テスラ(▲26.4%)、アルファベット(▲12.8%)、ユナイテッドヘルス・グループ(▲12.4%) のリターンが低かった。
米国のバイオ医薬品大手アッヴィは2024年第4四半期の決算が市場予想を上回ったことから株価が上昇した。自己免疫疾患治療の画期的新薬である「スキリージ」と「リンヴォック」の好調な売れ行きが業績を押し上げた。
テスラはCEOのイーロン・マスク氏がトランプ政権に加わったことで同氏の企業への政策の支援が期待され、前月まで上昇していたが今月は反落に転じた。マスク氏の極右政党支持といった政治的発言への反発によってテスラへの不買運動が広がっている6。また、テスラが手掛ける電気自動車事業にとってトランプ氏が掲げる米国の関税引き上げや電気自動車への補助金廃止といった政策が逆風となることが懸念されている。
米国のバイオ医薬品大手アッヴィは2024年第4四半期の決算が市場予想を上回ったことから株価が上昇した。自己免疫疾患治療の画期的新薬である「スキリージ」と「リンヴォック」の好調な売れ行きが業績を押し上げた。
テスラはCEOのイーロン・マスク氏がトランプ政権に加わったことで同氏の企業への政策の支援が期待され、前月まで上昇していたが今月は反落に転じた。マスク氏の極右政党支持といった政治的発言への反発によってテスラへの不買運動が広がっている6。また、テスラが手掛ける電気自動車事業にとってトランプ氏が掲げる米国の関税引き上げや電気自動車への補助金廃止といった政策が逆風となることが懸念されている。
6 日本経済新聞、「テスラ株急落 欧州は販売半減、政治発言でマスク氏離れ」、2025年2月26日
4――今後の見通しと注目されるテーマ
世界の株式市場は米国のトランプ大統領の政策に左右される状況が続いている。カナダ、メキシコ、中国への関税引き上げが実施されたことで、これらの国は報復として米国への関税引き上げを行っており、貿易・経済の見通しが不透明な状況となっている。
米国や欧州の金利はこれまで下落傾向が続いていた。しかし、足元では上昇に転じている。米国では関税引き上げの実施、欧州では加盟国の防衛やウクライナ支援を目的とした約8000億ユーロ(約125兆円)の再軍備計画が公表されたことが背景となっている7。防衛支出の増加による財政赤字の拡大が懸念され、国債の下落(金利上昇)につながった。
また、日本でも政策金利の見通しが変化することで為替や株式市場が変動する状況が続いている。
今後は関税引き上げなどトランプ政権の政策動向やウクライナの停戦協議、米欧など主要国の物価・金利動向が世界の株式市場に影響していくだろう。主要国・地域での今後の政治・経済日程としては3月18日、19日に日銀政策決定会合、19日に米国のパウエルFRB議長記者会見、20日にEU首脳会議などが予定されている。これらのグローバル株式市場への影響に引き続き注目したい。
7 日本経済新聞、「EU、ウクライナ支援へ「再軍備計画」 125兆円規模めざす」、2025年3月4日
米国や欧州の金利はこれまで下落傾向が続いていた。しかし、足元では上昇に転じている。米国では関税引き上げの実施、欧州では加盟国の防衛やウクライナ支援を目的とした約8000億ユーロ(約125兆円)の再軍備計画が公表されたことが背景となっている7。防衛支出の増加による財政赤字の拡大が懸念され、国債の下落(金利上昇)につながった。
また、日本でも政策金利の見通しが変化することで為替や株式市場が変動する状況が続いている。
今後は関税引き上げなどトランプ政権の政策動向やウクライナの停戦協議、米欧など主要国の物価・金利動向が世界の株式市場に影響していくだろう。主要国・地域での今後の政治・経済日程としては3月18日、19日に日銀政策決定会合、19日に米国のパウエルFRB議長記者会見、20日にEU首脳会議などが予定されている。これらのグローバル株式市場への影響に引き続き注目したい。
7 日本経済新聞、「EU、ウクライナ支援へ「再軍備計画」 125兆円規模めざす」、2025年3月4日
(2025年03月10日「基礎研レター」)
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経歴
- 【職歴】
2008年 大和証券SMBC(現大和証券)入社
大和証券投資信託委託株式会社、株式会社大和ファンド・コンサルティングを経て
2019年 ニッセイ基礎研究所(現職)
【加入団体等】
・公益社団法人 日本証券アナリスト協会 検定会員
・修士(工学)
原田 哲志のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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