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わが国の不動産投資市場規模(2024年)~「収益不動産」の資産規模は約315.1兆円(前回比+25.7兆円)。すべての用途が前回調査から拡大

金融研究部 主任研究員 吉田 資
株式会社価値総合研究所 不動産投資調査事業部 事業部長 主任研究員 室 剛朗

株式会社価値総合研究所 不動産投資調査事業部 研究員 藤野 玲於奈

株式会社価値総合研究所 不動産投資調査事業部 研究員 宮野 慎也
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1.はじめに
不動産投資市場の将来を見通すにあたり、投資対象となる「収益不動産」の資産規模がどれくらいであるのか、また、その内訳を「用途別」や「エリア別」に継続して把握することは重要だと考えられる。
そこで、ニッセイ基礎研究所と価値総合研究所は共同で、2021年1に開始し、今回で4回目となる「わが国の不動産投資市場規模」に関する調査を実施した。
1 吉田資・室 剛朗『わが国の不動産投資市場規模(1)』(ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2021 年3 月12 日)
吉田資・室 剛朗『わが国の不動産投資市場規模(2)』(ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2021 年4 月19日)
吉田資・室 剛朗『わが国の不動産投資市場規模(3)』(ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2021 年5 月20日)
2. 「収益不動産ストック」の推計
本調査では、事業者や個人に物件を賃貸することで、賃料収入を獲得できる不動産(以下、「収益不動産」)を調査対象とした。また、「収益不動産ストック」の内訳を把握するため、
(1)一定水準以上の面積基準や築年基準を満たす「収益不動産」
(2)機関投資家の投資意欲が特に強いスペックや立地要件を満たす「投資適格不動産」
(3)主要政令指定都市に立地するハイクラスオフィスである「コア投資不動産」
のカテゴリーに分類し、推計を実施した。
推計方法は、過去の調査と同様に、収益還元法に基づく「ボトムアップ・アプローチ」を採用した(図表―1)。まず、「着工床面積の積算」と「レンタブル比」のデータをもとに「賃貸可能床面積」を推計した。次に、推計した「賃貸可能床面積」と、「平均賃料」や「平均稼働率」のデータをもとに、「総収入」を推計した。続いて、推計した「総収入」と「平均コスト比率」をもとに、「NOI:営業純収益、Net Operating Income」を推計した。最後に、推計した「NOI」を「キャップレート」で除して、「収益不動産の総額」を求めた。
今回の調査では、「収益不動産」の資産規模は約315.1兆円(前回比+25.7兆円、+8.9%)、「投資適格不動産」の資産規模は約194.6兆円(前回比+15.6兆円、+8.7%)と推計された。前述の国土交通省の調査によれば、証券化の対象となった不動産の資産総額は、約59.8兆円である。この数値によれば、「収益不動産(315.1兆円)」の約19%、「投資適格不動産(194.6兆円)」の約31%が既に証券化されていることになる。
(1) 「収益不動産」
「収益不動産(315.1兆円)」を用途別にみると、「オフィス」が約109.7兆円と最も大きく、次いで「賃貸住宅」が約83.2兆円、「商業施設」が約69.7兆円、「物流施設」が約35.5兆円、「ホテル」が約17.0兆円と推計された(図表―2)。
「オフィス」は前回比+6%、「賃貸住宅」は同+8%、「商業施設」は同+3%、「物流施設」は同+12%、「ホテル」は同+71%となり、すべての用途が前回調査から拡大した(図表―3)。
資産規模の推移を確認すると、「オフィス」、「賃貸住宅」、「物流施設」、「ホテル」は過去最高水準を更新した。一方、コロナ禍の影響で大きく縮小した「商業施設」は、順調に回復しているものの、2021年調査の資産規模には届いていない。
年金運用等の資産運用においては、基本となる資産構成割合(基本ポートフォリオ)を定めて、定期的にリバランスを行い運用するほうが、良いリターンを獲得できるとされる。公的年金等の資産運用では、各アセットクラス(市場ポートフォリオ)のリスク・リターンなどを考慮したうえで、積立金運用の基本ポートフォリオを定めている。そのため、基本ポートフォリオに不動産を組み入れる際には、不動産投資における「市場ポートフォリオ」の特性を把握することが重要である。
投資信託協会によれば、2024年3月時点の「J-REIT」のセクター比率は「オフィス37%」、「物流施設21%」、「賃貸住宅16%」、「商業施設14%」、「ホテル8%」である(図表―4)。「J-REIT」は「市場ポートフォリオ」と比較して、「賃貸住宅」と「商業施設」の比率が低い一方、「物流施設」の比率が高い。また、不動産証券化協会と三井住友トラスト基礎研究所の調査によれば、「不動産私募ファンド」のセクター比率は「オフィス37%」、「賃貸住宅21%」、「商業施設15%」、「物流施設13%」、「ホテル6%」である(図表―4)。「不動産私募ファンド」は「賃貸住宅」と「商業施設」の比率が低いと言える。
続いて、資産規模推計の基礎データとなる(1)建築着工床面積、(2)NOI、(3)キャップレートについて、その動向を確認する。
(2024年12月27日「不動産投資レポート」)
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