2024年12月24日

気候変動:死亡率シナリオの作成-気候変動の経路に応じて日本全体の将来死亡率を予測してみると…

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也

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5|年齢群団別 : 高齢層は温暖化の影響を受けやすい
続いて、死亡数の推移を年齢群団別に見てみよう。90~94歳、70~74歳、50~54歳、30~34歳、10~14歳の5つの年齢群団を比較する。年齢ごとの死亡率の水準が異なることを考慮して、各経路のSSP1-2.6との差ではなく、SSP1-2.6からの増減率の推移を表示してみると、次の図のとおりとなった。

男性については、70-74歳や10-14歳では、SSP5-8.5の SSP1-2.6からの増減率が2050年代より徐々に上昇し、2100年には8%程度となった。一方、50-54歳や30-34歳では、同増減率が2100年にはマイナスとなるなど、年齢群団ごとに傾向の大きな違いが見られた。47

図表15-1-1. 男性90—94歳 死亡率増減推移 <SSP1-2.6からの増減率> (日本全体・5年平均)/図表15-1-2. 男性70—74歳 死亡率増減推移/図表15-1-3. 男性50—54歳 死亡率増減推移/図表15-1-4. 男性30—34歳 死亡率増減推移/図表15-1-5. 男性10—14歳 死亡率増減推移

女性については、70-74歳では、SSP5-8.5の SSP1-2.6からの増減率が2050年代より徐々に上昇し、2100年には4%程度となった。一方、10-14歳では、同増減率はゼロパーセント近辺。50-54歳や30-34歳では、同増減率が2100年にはマイナスとなり、特に30-34歳ではマイナス4%程度に低下した。30-34歳の年齢群団で比較すると、男性よりも女性のほうが、同増減率は低い様子がうかがえる。48

図表15-2-1. 女性90—94歳 死亡率増減推移 <SSP1-2.6からの増減率> (日本全体・5年平均)/図表15-2-2. 女性70—74歳 死亡率増減推移/図表15-2-3. 女性50—54歳 死亡率増減推移/図表15-2-4. 女性30—34歳 死亡率増減推移/図表15-2-5. 女性10—14歳 死亡率増減推移
 
47 SSP1-2.6とSSP5-8.5の差異を死因別に見ると70-74歳は異常無(老衰等)、10-14歳は外因(熱中症含)などとなっている。
48 SSP1-2.6とSSP5-8.5の差異を死因別に見ると90-94歳は異常無(老衰等)、70-74歳は新生物や異常無(老衰等)、30-34歳はその他の死因などとなっている。
6|季節別 : 温暖化は男性には夏季の死亡率上昇、女性には夏季以外の死亡率上昇をもたらす
続いて、死亡率の推移を季節別に見てみよう。季節ごとの死亡率の水準が異なることを考慮して、各経路のSSP1-2.6との差ではなく、SSP1-2.6からの増減率の推移を表示してみると、次の図のとおりとなった。男性90-94歳は、SSP5-8.5の SSP1-2.6からの増減率は夏季にプラス、冬季にマイナスとなっており、夏季のほうが影響が大きい結果となった。49

図表16-1-1. 春季 死亡率増減推移<SSP1-2.6からの増減率>男性90—94歳(日本全体・5年平均)/図表16-1-2. 夏季 死亡率増減推移/図表16-1-3. 秋季 死亡率増減推移/図表16-1-4. 冬季 死亡率増減推移

女性90-94歳は、SSP5-8.5の SSP1-2.6からの増減率は春季、秋季、冬季にプラスとなり、夏季にはゼロ近辺で推移している。男性と女性で、温暖化が季節ごとの死亡率に与える影響が異なる結果となった。

図表16-2-1. 春季 死亡率増減推移<SSP1-2.6からの増減率>女性90—94歳(日本全体・5年平均)/図表16-2-2. 夏季 死亡率増減推移/図表16-2-3. 秋季 死亡率増減推移/図表16-2-4. 冬季 死亡率増減推移

なお、こうした季節別の傾向は、どの年齢群団でも同じというわけではない。年齢群団によって、傾向が異なる可能性がある点に留意する必要がある。
 
49 季節と月の関係について、例えば2024年の春季は3~5月、夏季は6~8月、秋季は9~11月、冬季は2023年12月~2024年2月、としている。

(2024年12月24日「基礎研レポート」)

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保険研究部   主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務

経歴
  • 【職歴】
     1992年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所へ

    【加入団体等】
     ・日本アクチュアリー会 正会員

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