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成約事例で見る東京都心部のオフィス市場動向(2024年上期)-「オフィス拡張移転DI」の動向
基礎研REPORT(冊子版)11月号[vol.332]

金融研究部 主任研究員 佐久間 誠
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1―東京のオフィス市況は回復局面へ
一方、東京のオフィス市場はすでに調整を脱し、回復局面を迎えている。コロナ禍が収束し、企業業績が堅調に推移する中、リーシング活動は一層活発化している。三幸エステートの公表データによると、2024年上期の東京都心5区のオフィス成約面積は45.9 万坪(前年同期比+6.3%)と前年から増加した[図表1]。新築ビルの供給減少に伴い、未竣工ビルの成約面積は6.4万坪( 前年同期比▲25.3%)と減少したが、竣工済ビルは39.5万坪(同+14.1%)と増加した。
* DIはDiffusion Index(ディフュージョン・インデックス)の略、変化の方向性を示す指標のである。DIの代表例としては、経済分野では日本銀行の全国企業短期経済観測調査(日銀短観)や内閣府の景気動向指数、また不動産分野では土地総合研究所が公表する不動産業業況等調査(不動産業業況指数)がある。なお、オ フィス拡張移転DIは、オフィス移転後の賃貸面積が移転前と比較して拡張、同規模、縮小した件数を集計することによって算出している。
2―オフィス拡張移転DIは底堅い推移を維持
3―ビルクラス間のオフィス拡張移転DIの差は縮小傾向
4―製造業のオフィス拡張移転DIが急回復
5―おわりに
その中で、
(1) オフィス拡張移転DIは、コロナ禍前と比較すると低い水準にあるものの、底堅く推移している
(2) ビルクラス間の差は縮小傾向にあり、いずれのクラスにおいても底堅い需要が見られる
(3) 製造業では、これまでオフィス需要に停滞感が見られていたが、円安などによる企業業績の拡大を背景にオフィス拡張移転DIが急回復している
(4) 情報通信業では、全体としてオフィス需要は底堅く推移しているものの、ハイブリッドワークの普及に伴う縮小移転が一定数見られ、これがコロナ禍前の力強さが欠ける要因となっている
ことを確認した。
以上のように、2024年上期のオフィス需要は、コロナ禍前ほどの強さはないものの、底堅く推移している。新築ビルの供給が小幅にとどまることもあり、オフィス市場は改善傾向にある。今後は、物価上昇が定着しつつあるとの期待が高まる中で、オフィス市場の改善が明確な賃料上昇にまで至るかどうかに注目が集まっている。2025年には新築ビルの供給が増加する見込みであり、まだ楽観はできないが、明るい材料が増えている。これらのオフィス市場における変化を正確に捉えるためには、今後もデータを丹念に分析していくことが重要である。
(2024年11月08日「基礎研マンスリー」)
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- 【職歴】 2006年4月 住友信託銀行(現 三井住友信託銀行) 2013年10月 国際石油開発帝石(現 INPEX) 2015年9月 ニッセイ基礎研究所 2019年1月 ラサール不動産投資顧問 2020年5月 ニッセイ基礎研究所 2022年7月より現職 【加入団体等】 ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター ・日本証券アナリスト協会検定会員
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