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2023年度生命保険会社決算の概要(速報)

保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩
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2023年度は、また当期利益の使途でもふれたように、オンバランス自己資本(貸借対照表の資本、危険準備金、価格変動準備金などの合計)が増加したが、それに加えて、その他有価証券の含み益が大きく増加したことで、マージン(=分子)は増加した。
一方、リスク(=分母)の方では、資産運用リスクが増加している(さらなる詳細は不明だが、有価証券の時価上昇によるリスク対象資産額の増加によるものか)。こうしてマージンとリスクがともに増加して、ソルベンシー・マージン比率は、ほぼ横ばいで高水準を維持している。
これまで現行方式によるソルベンシー・マージン比率の内訳をみることにより、保有リスクとそれに対する準備金等の対応状況は、ある程度窺い知ることができていたが、前回2022年度の決算発表から、経済価値ベースのソルベンシー指標(ESR :Economic Solvency Ratio)を、大手4社グループなど一部の会社が開示し始めている。
これは新たな算出方法(例えば資産、負債とも経済価値、いわば時価ベースで評価するなど)による、会社のリスク量に対する自己資本の率である。開示された大手社の数値はおよそ200%~250%程度で前年度から大きな変動はみられない。全社が開示するのは2025年度とされている。
かんぽ生命の資産運用は、有価証券については、国債・地方債・社債がほとんどを占めており、中でも国債の構成比が有価証券全体の76%となっている(前年度は74%)。株式への投資は、もともとほぼゼロであったものが、近年構成比を高めているが、まだ小さい。こうした点は、他の伝統的な大手中堅生保とは異なっており、安全性を重視した運用ポートフォリオとなっている(一方、9社計では、有価証券中の国債の構成比は近年40%程度)。
そうしたこともあり、基礎利回りが低い反面、ソルベンシー・マージン比率については、2021年度は1,016.80%と若干上昇し、高水準である(前年度は1,003.7%)。こうした高水準は、リスク性資産の構成割合が従来から低いことに加え、内部留保が厚いことに起因する。例えば、民営化前の旧簡易保険契約(貯金・簡易生命保険管理機構からかんぽ生命が受再している形態)を含め約1.7兆円の危険準備金を保有している。かんぽ生命を除く民間生保約40社の合計額が、ここ数年増加してきてはいても6.0兆円程度であることからも、水準の厚さがうかがえる。また逆ざやに備えるための追加責任準備金が累計で4.9兆円と、引き続き厚い水準にある。
(2024年07月08日「ニッセイ基礎研所報」)

03-3512-1833
- 【職歴】
1987年 日本生命保険相互会社入社
・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
2012年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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