2024年02月07日

行き場を失う日本の廃プラスチック

基礎研REPORT(冊子版)2月号[vol.323]

金融研究部 准主任研究員・ESG推進室兼任 原田 哲志

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我々は生活の中で、ペットボトルやレジ袋など多くのプラスチック製品を利用し使い捨てている。プラスチックはコストが安く、成形しやすく軽くて丈夫、密閉性も高い非常に便利な素材であり様々な製品に使われている。しかし、使い捨てられたプラスチックは廃プラスチックとして、海洋への流出など様々な問題を引き起こしている。

日本は、従来国内で発生する廃プラスチックを海外に輸出し処分してきた[図表1]。しかし、近年ではそうした輸出による廃プラスチックの処分が難しくなっている。廃プラスチックの輸出先の国々などで輸入を禁止する流れとなっているためだ。
[図表1]日本からのプラスチックくずの輸出量の推移
2017年に中国は廃プラスチックの輸入を禁止した。続いて2018年にはタイ、ベトナム、マレーシアが輸入を規制、2019年にはインドが廃プラスチックの輸入を禁止した*1。また、有害廃棄物の国境を越える移動や処分についての国際的な枠組みであるバーゼル条約が改正され、2021年から廃プラスチックを輸出する際には事前に輸入国の同意が必要となった。

廃プラスチックの輸出が難しくなる中、国内でのプラスチックの回収やリサイクルが従来以上に求められている。プラスチックのリサイクルには大きく分けて(1)マテリアルリサイクル、(2)ケミカルリサイクル、(3)サーマルリサイクルの三つの方法が存在している。

廃プラスチックのマテリアルリサイクルでは、廃プラスチックを洗浄した後、粉砕、粒状化したものを原料として用いることで再製品化する。マテリアルリサイクルは資源を再度活用できるメリットがある一方で、廃棄物を原料として繰り返し使用するため、異物混入や品質低下が課題となる。ケミカルリサイクルは廃棄物に化学的な処理を施すことで他の物質に転換してから再利用することを指す。廃プラスチックのケミカルリサイクルでは、廃プラスチックを化学的な処理によって再度石油などに戻して再利用する。

サーマルリサイクルは廃プラスチックを燃焼させ、近隣の施設の暖房や温水プールなどの熱源として用いることを指す。

日本での廃プラスチックの有効利用率は2005年の58%から2021年には87%まで上昇した。ただし、処理の内訳を見ると、サーマルリサイクルが多くを占めていることが分かる[図表2]。サーマルリサイクルは、廃プラスチックを燃焼させるため、新たな製品の原料として循環させることができないという問題点がある。
[図表2]廃プラスチックの総排出量・有効利用料・有効利用率の推移
プラスチックリサイクルで先行するEUは、近年ではケミカルリサイクルを推進している。新品の素材と同等の品質の再生リサイクル材が得られ資源循環につながることや焼却・熱回収に比べて二酸化炭素排出量を約50%削減できるといったメリットがあるためだ*2

日本でも資源循環体制の構築にはケミカルリサイクルの普及・活用が求められる。ただし、廃プラスチックの再利用の義務化は事業者の負担となり得る。また、新しく産業廃棄物処理の施設を作るには、周辺住人の理解が必要となるという課題点もある。

静岡県御前崎市では、産廃処理大手の大栄環境が産業廃棄物処理施設「御前崎リサイクルエネルギープラザ」の建設を計画していたが、住民投票での反対により計画は中止された*3。住民投票では投票の約9割が建設反対であった。産業廃棄物処理施設の建設に周辺住民の理解を得ることは容易ではない。

プラスチックのリサイクルには様々な課題があるが、原油などの化石資源は限りがあることや自然環境の汚染を防止するためには資源を消費、廃棄していくのではなく、循環型社会へ移行していくことが求められている。
 
*1 日本貿易振興機構、「東南アジア諸国が廃プラスチック輸入規制を強化、日本の輸出量は減少」
*2 日本貿易振興機構、「欧州委の研究機関、廃プラ処理は焼却よりリサイクルを推奨する報告書発表」
*3 日本経済新聞、「静岡県御前崎市の産廃施設、事業者の大栄環境が撤退表明」
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金融研究部   准主任研究員・ESG推進室兼任

原田 哲志 (はらだ さとし)

研究・専門分野
資産運用、オルタナティブ投資

(2024年02月07日「基礎研マンスリー」)

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