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米国商業用不動産は調整も二極化。今後はリファイナンスに注視
 
                                                佐久間 誠
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商業用不動産は市場全体として調整しているが、セクター間の二極化が顕著である。2023年第3四半期のセクター別のトータルリターンは前年比で、ホテル+12.0%、商業施設▲1.4%、物流施設▲5.3%、賃貸住宅▲7.6%、オフィス▲17.1%と、ホテルはコロナ禍からの回復に伴い堅調に推移する一方、オフィスは大幅なマイナスを記録している(図表1)。ただし、米国では不動産市場の多様化が進んでおり、オフィスセクターが実物不動産に占める割合は23%、REITに占める割合は5.5%にとどまる2。そのため、オフィス市場が低迷しても、商業用不動産が全体として危機的な状況に陥ることはないとの楽観論もある。
米国では在宅勤務が浸透し、ハイブリッドな働き方が主流になっている。マンハッタンでは、一部でオフィス回帰が進み、フルリモートで働く人の割合は2022年4月の28%から2023年9月の6%まで減少した(図表2)。しかし、フル出社した人は8%から12%に増加したに過ぎず、コロナ禍前の働き方に戻っているわけではない。週3日出社した人が17%から44%に増加したように、ハイブリッドな働き方が定着しつつある。今後もコロナ禍前の働き方に戻る可能性は低く、新たな成長ドライバーが現れない限り、オフィス需要の早期回復は難しいだろう。
尚、オフィス市場のなかでも二極化が進んでいる。「Flight to Quality(質への逃避)」の動きにより、築年が浅く、グレードの高いビルのオフィス需要が高まる一方で、老朽化・陳腐化したオフィスは苦戦している。マンハッタンの市況全体は低迷しているが、トロフィーオフィスと呼ばれる最上位のビルは高稼働を維持し、賃料も安定している。しかし、築50年以上のビルがオフィスストックの60%以上を占め、これらのオフィス需要回復は未だ不透明である4。
今後の焦点は商業用不動産のリファイナンスが滞りなく行われるかになる。現在はドライパウダー(投資待機資金)が高水準にあり、リーマンショック時の教訓から貸し手が「Pretend and Extend(目をつぶって返済期限を延長)」しているため、資金繰りに窮して不動産の投げ売りを強いられる例はまだ多くない。しかし、米FRBによる大幅な利上げにより、借入金利は急上昇し、米シリコンバレーバンクの破綻で顕在化した中小銀行の経営問題も依然として残っている。そのため、苦境が続くオフィス市場を中心に、商業用不動産は金融危機の潜在的な火種になりうるリスクとして、今後も注視が必要であろう。
1 MSCI Real Capital Analytics
2 実物不動産はNCREIF Property Indexのオフィス割合、REITはMSCI US REIT Indexのオフィス割合
3 CBRE,“San Francisco Office Figures Q3 2023, 9 October 2023.
4 Colliers,“The Future of Office - 2023”, 27 January 2023.
(2024年01月09日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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