- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 不動産 >
- REIT(リート) >
- Jリート市場の分配金はコロナ禍前の水準を上回る。今後は「巡行利益」の回復が課題に
コラム
2023年09月08日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
2023年4-6月期の実質GDP(一次速報値)は前期比年率6.0%の高成長となり、コロナ禍前のピーク水準を上回った。社会経済活動の正常化が進捗するなか、Jリート(不動産投資信託)市場の予想1口当たり分配金(以下、DPU)についてもコロナ禍前の水準を超えて回復している。
東証REIT指数のDPU(2019年末=100)の推移をみると、「19年末100⇒20年末93⇒21年末94⇒22年末96⇒現在101」となり、今年に入りホテル市況の改善を追い風にコロナ禍前の水準を上回った(図表1)。一方、東証REIT指数は価格の回復が遅れており2019年末対比で▲12%下落し、この間、分配金利回りは3.6%から4.1%へ上昇している(8月末時点)。
東証REIT指数のDPU(2019年末=100)の推移をみると、「19年末100⇒20年末93⇒21年末94⇒22年末96⇒現在101」となり、今年に入りホテル市況の改善を追い風にコロナ禍前の水準を上回った(図表1)。一方、東証REIT指数は価格の回復が遅れており2019年末対比で▲12%下落し、この間、分配金利回りは3.6%から4.1%へ上昇している(8月末時点)。
不動産価格の上昇を背景に、Jリート市場全体の不動産含み益は5.3兆円に拡大し、これは年間分配金の約8.2倍に相当する。Jリート各社は、現在の市場環境を好機と捉えて含み益の一部を売却益として実現し、投資家への利益還元を強化している。
もちろん、売却益を活用した分配政策は投資家の期待に沿うと考えられるが、あくまで売却益は一過性の利益である。仮に、現在の売却益を維持できず通常の水準に戻った場合、DPUは潜在的に▲5%程度減少する可能性がある。
今後のDPUについては、本来のメインドライバーである「巡行利益」の回復が重要な課題となりそうだ。
もちろん、売却益を活用した分配政策は投資家の期待に沿うと考えられるが、あくまで売却益は一過性の利益である。仮に、現在の売却益を維持できず通常の水準に戻った場合、DPUは潜在的に▲5%程度減少する可能性がある。
今後のDPUについては、本来のメインドライバーである「巡行利益」の回復が重要な課題となりそうだ。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年09月08日「研究員の眼」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1858
経歴
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
2005年 ニッセイ基礎研究所
2019年4月より現職
【加入団体等】
・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
岩佐 浩人のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/03/21 | J-REIT市場の動向と収益見通し。財務負担増加が内部成長を上回り、今後5年間で▲7%減益を見込む~シナリオ別のレンジは「▲20%~+10%」となる見通し~ | 岩佐 浩人 | 基礎研レポート |
2025/02/07 | Jリート市場回復の処方箋 | 岩佐 浩人 | 基礎研マンスリー |
2025/01/24 | Jリート市場回復の処方箋 | 岩佐 浩人 | 研究員の眼 |
2024/12/04 | Jリートの不動産運用で問われる「インフレ対応力」 | 岩佐 浩人 | ニッセイ年金ストラテジー |
新着記事
-
2025年05月01日
日本を米国車が走りまわる日-掃除機は「でかくてがさつ」から脱却- -
2025年05月01日
米個人所得・消費支出(25年3月)-個人消費(前月比)が上振れする一方、PCE価格指数(前月比)は総合、コアともに横這い -
2025年05月01日
米GDP(25年1-3月期)-前期比年率▲0.3%と22年1-3月期以来のマイナス、市場予想も下回る -
2025年05月01日
ユーロ圏GDP(2025年1-3月期)-前期比0.4%に加速 -
2025年04月30日
2025年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【Jリート市場の分配金はコロナ禍前の水準を上回る。今後は「巡行利益」の回復が課題に】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
Jリート市場の分配金はコロナ禍前の水準を上回る。今後は「巡行利益」の回復が課題にのレポート Topへ