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- 現在の景況感は良好だが、先行きに関して悲観的な見方が強まる-第19回不動産市況アンケート結果
2023年04月07日
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ニッセイ基礎研究所では、不動産市況の現状および今後の方向性を把握すべく、不動産分野の実務家・専門家を対象に「不動産市況アンケート」( 第19回)を実施した(回答者数116名、回収率;58.0%)。
1―不動産投資市場の景況感
*1 「景況見通しDI」の算出式;(「やや良くなる」+「良くなる」)-(「やや悪くなる」+ 「悪くなる」)単位は回答割合(%)]
2―投資セクター選好
1│概況
「今後、価格上昇や市場拡大が期待できる投資セクター(証券化商品含む)」について質問したところ、「ホテル」(45%)との回答が最も多く、次いで、「賃貸マンション」(39%)、「物流施設」(38%)、「産業関係施設(データセンターなど)」(36%)との回答が多かった。
「ホテル」に関して、宿泊旅行統計調査によると、政府の旅行支援再開を受けて日本人の宿泊者数は2022年10月以降、2019年同月の水準を上回っている。外国人の宿泊者数についても水際制限の解除によって急速に回復しており、ホテルへの関心が高まっている。
「賃貸マンション」に関しては、安定したキャッシュフローが期待できるセクターとして海外資金を中心に投資需要が強い。ニッセイ基礎研究所と価値総合研究所の調査によれば、「賃貸住宅」の「収益不動産」は約72.0兆円で、市場規模の観点からも投資対象としての優位性は高いと言える*2。
*2 吉田資・室 剛朗『わが国の不動産投資市場規模(2022年)』(ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2022年9月9日)
「今後、価格上昇や市場拡大が期待できる投資セクター(証券化商品含む)」について質問したところ、「ホテル」(45%)との回答が最も多く、次いで、「賃貸マンション」(39%)、「物流施設」(38%)、「産業関係施設(データセンターなど)」(36%)との回答が多かった。
「ホテル」に関して、宿泊旅行統計調査によると、政府の旅行支援再開を受けて日本人の宿泊者数は2022年10月以降、2019年同月の水準を上回っている。外国人の宿泊者数についても水際制限の解除によって急速に回復しており、ホテルへの関心が高まっている。
「賃貸マンション」に関しては、安定したキャッシュフローが期待できるセクターとして海外資金を中心に投資需要が強い。ニッセイ基礎研究所と価値総合研究所の調査によれば、「賃貸住宅」の「収益不動産」は約72.0兆円で、市場規模の観点からも投資対象としての優位性は高いと言える*2。
*2 吉田資・室 剛朗『わが国の不動産投資市場規模(2022年)』(ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2022年9月9日)
2│前回調査との比較 [期待が高まった(後退した)投資セクター]
前回調査から回答割合が10%以上増加した投資セクター(期待が高まった投資セクター)は「、ホテル(」13%→45%)、「賃貸マンション」(29%→39%)であった。一方、前回調査から回答割合が10%以上減少した投資セクター(期待が後退した投資セクター)は、「物流施設」(67%→38%)、「産業関係施設(データセンターなど)」(59%→36%)、「エネルギー関連施設(太陽光発電施設など)」(28%→17%)であった[図表4]。
「物流施設」に関して、首都圏では空室率が上昇基調で推移している。EC事業者を中心にテナント需要は底堅いものの新規供給の増加によりリーシングの進捗ペースが鈍化している。引き続き、投資家の期待が高いセクターではあるが、前回調査から順位を下げる結果となった。
前回調査から回答割合が10%以上増加した投資セクター(期待が高まった投資セクター)は「、ホテル(」13%→45%)、「賃貸マンション」(29%→39%)であった。一方、前回調査から回答割合が10%以上減少した投資セクター(期待が後退した投資セクター)は、「物流施設」(67%→38%)、「産業関係施設(データセンターなど)」(59%→36%)、「エネルギー関連施設(太陽光発電施設など)」(28%→17%)であった[図表4]。
「物流施設」に関して、首都圏では空室率が上昇基調で推移している。EC事業者を中心にテナント需要は底堅いものの新規供給の増加によりリーシングの進捗ペースが鈍化している。引き続き、投資家の期待が高いセクターではあるが、前回調査から順位を下げる結果となった。
3―投資エリア選好
4―不動産投資市場のリスク要因
1│概況
「不動産投資市場への影響が懸念されるリスク」について質問したところ、「国内金利」(67%)との回答が最も多く、次いで、「建築コスト」(40%)、「国内景気」(39%)、「欧米経済」(33%)との回答が多かった。
「不動産投資市場への影響が懸念されるリスク」について質問したところ、「国内金利」(67%)との回答が最も多く、次いで、「建築コスト」(40%)、「国内景気」(39%)、「欧米経済」(33%)との回答が多かった。
2│前回調査との比較 [懸念が高まった(後退した)リスク要因]
前回調査から回答割合が10%以上増加したリスク要因は、「国内金利」(32%→67%)、「建築コスト」(22%→40%)、「地政学リスク(ウクライナ情勢、北朝鮮など)」(8%→25%)であった[図表6]。
「国内金利」に関して、昨年12月に日銀は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和(イールドカーブコントロール)」の許容幅を±0.50%へ拡大し、10年国債利回りの上昇を容認した。今年4月からは植田新総裁のもと大規模緩和の見直しに着手することが想定され、不動産投資市場への影響が懸念されている。
また、「建築コスト」に関して、資材価格の高騰や労務費の上昇などに伴い、建築コストの上昇リスクが意識されているようだ。
「地政学リスク」に関して、資源価格の高騰に伴う物価上昇や企業業績への影響が懸念されるなか、不動産投資市場のリスク要因として指摘する回答が増加した。
一方、前回調査から回答割合が10%以上減少したリスク要因は、「新型コロナ拡大」(34%→1%)、「ニューノーマル(デジタル化の進展、人々の行動変容など)」(23%→5%)、「脱炭素対応(コスト負担増、環境投資など)」(17%→5%)であった[図表6]。
新型コロナ感染拡大の社会的な影響が徐々に和らぐなか、「新型コロナ拡大」や「ニューノーマル」への懸念が後退したものと考えられる。
前回調査から回答割合が10%以上増加したリスク要因は、「国内金利」(32%→67%)、「建築コスト」(22%→40%)、「地政学リスク(ウクライナ情勢、北朝鮮など)」(8%→25%)であった[図表6]。
「国内金利」に関して、昨年12月に日銀は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和(イールドカーブコントロール)」の許容幅を±0.50%へ拡大し、10年国債利回りの上昇を容認した。今年4月からは植田新総裁のもと大規模緩和の見直しに着手することが想定され、不動産投資市場への影響が懸念されている。
また、「建築コスト」に関して、資材価格の高騰や労務費の上昇などに伴い、建築コストの上昇リスクが意識されているようだ。
「地政学リスク」に関して、資源価格の高騰に伴う物価上昇や企業業績への影響が懸念されるなか、不動産投資市場のリスク要因として指摘する回答が増加した。
一方、前回調査から回答割合が10%以上減少したリスク要因は、「新型コロナ拡大」(34%→1%)、「ニューノーマル(デジタル化の進展、人々の行動変容など)」(23%→5%)、「脱炭素対応(コスト負担増、環境投資など)」(17%→5%)であった[図表6]。
新型コロナ感染拡大の社会的な影響が徐々に和らぐなか、「新型コロナ拡大」や「ニューノーマル」への懸念が後退したものと考えられる。
5―不動産価格のピーク時期
(2023年04月07日「基礎研マンスリー」)
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03-3512-1861
経歴
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
吉田 資のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
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