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- 2022~2024年度経済見通し
2023年01月11日
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1―経済の正常化には距離がある
2022年7-9月期の実質GDPは、前期比▲0.2%( 年率▲0.8%)と2四半期ぶりのマイナス成長となった。輸入が前期比5.2%の高い伸びとなり、輸出の伸び(同2.1%)を大きく上回ったことから、外需寄与度が前期比▲0.6%と成長率を大きく押し下げたことがマイナス成長の主因である。高水準の企業収益を背景に設備投資は前期比1.5%の高い伸びとなり、物価高や新型コロナウイルスの感染拡大という逆風を受けながらも、民間消費が前期比0.1%と増加を確保するなど、国内需要は堅調だったが、外需の落ち込みをカバーするには至らなかった。
2022年7-9月期の実質GDPはコロナ前の2019年10-12月を0.9%上回っているが、直近のピーク(2019年7-9月期)を▲1.9%下回っている。経済の正常化までにはかなりの距離がある。
2022年7-9月期の実質GDPはコロナ前の2019年10-12月を0.9%上回っているが、直近のピーク(2019年7-9月期)を▲1.9%下回っている。経済の正常化までにはかなりの距離がある。
2―海外経済の減速が鮮明に
世界経済は、ここにきて減速傾向が鮮明となっている。2022年7-9月期は米国、ユーロ圏ともにプラス成長となったが、グローバルPMI(企業の景況感)は低下傾向が続き、足もとでは中立水準の50を下回っている。米国、ユーロ圏ともに、高インフレとそれを抑制するための金融引き締めの影響で、景気後退局面入りする公算が大きい。また、中国経済はロックダウンの影響で急速に落ち込んだ2020年春からの持ち直しが続くものの、ゼロコロナ政策による下振れリスクの高い状況が続く公算が大きい。
日本の輸出ウェイトで加重平均した海外経済の成長率は、2021年の6%程度から2022年に3%程度へと大きく減速した後、2023年は2%台後半へとさらに伸びが低下するだろう。2023年の実質GDPは、米国、ユーロ圏ともにほぼゼロ成長となることが予想されるためである。
2024年は中国の実質GDPが2023年に続き5%台の成長を維持する中、米国、ユーロ圏がそれぞれ1.5%、1.0%に持ち直すため、日本から見た海外経済の成長率は3%台前半へと若干高まるが、引き続き1980年以降の平均成長率の4%程度を下回るだろう[図表1]。
日本の輸出は2021年度に前年比12.4%の高い伸びとなった後、2022年度に同3.1%と伸びが鈍化し、2023年度は同▲1.5%と3年ぶりに減少することが予想される。2024年度は同3.1%と増加に転じるが、景気の牽引役となるには力不足だろう。
日本の輸出ウェイトで加重平均した海外経済の成長率は、2021年の6%程度から2022年に3%程度へと大きく減速した後、2023年は2%台後半へとさらに伸びが低下するだろう。2023年の実質GDPは、米国、ユーロ圏ともにほぼゼロ成長となることが予想されるためである。
2024年は中国の実質GDPが2023年に続き5%台の成長を維持する中、米国、ユーロ圏がそれぞれ1.5%、1.0%に持ち直すため、日本から見た海外経済の成長率は3%台前半へと若干高まるが、引き続き1980年以降の平均成長率の4%程度を下回るだろう[図表1]。
日本の輸出は2021年度に前年比12.4%の高い伸びとなった後、2022年度に同3.1%と伸びが鈍化し、2023年度は同▲1.5%と3年ぶりに減少することが予想される。2024年度は同3.1%と増加に転じるが、景気の牽引役となるには力不足だろう。
3―物価高でも消費は堅調を維持
個人消費は物価高という逆風下でも持ち直しが続いている。コロナ禍における行動制限によって大幅に上昇した貯蓄率を引き下げることによって物価高の悪影響が相殺されているためである。
家計貯蓄率は、緊急事態宣言に伴う消費の急激な落ち込みと、特別定額給付金の支給が重なった2020年4-6月期に22.1%へと急上昇した。その後、行動制限の緩和によって消費が持ち直したことなどから、2022年4-6月期の貯蓄率は5.4%まで低下したが、平常時に比べると水準は高い。
GDP統計の実質家計消費支出の伸びを要因分解すると、2021年4-6月期以降、物価要因(家計消費デフレーターの上昇)が消費の下押し要因となり、2022年度入り後は押し下げ幅が拡大しているが、貯蓄率低下による押し上げ効果がそれを上回り、消費の底堅さをもたらしている[図表2]。先行きについても、新型コロナウイルスの感染症の拡大時に行動制限を課すことがなければ、貯蓄率が平常時に近い水準に戻ることによって消費の回復基調は維持される可能性が高い。
家計貯蓄率は、緊急事態宣言に伴う消費の急激な落ち込みと、特別定額給付金の支給が重なった2020年4-6月期に22.1%へと急上昇した。その後、行動制限の緩和によって消費が持ち直したことなどから、2022年4-6月期の貯蓄率は5.4%まで低下したが、平常時に比べると水準は高い。
GDP統計の実質家計消費支出の伸びを要因分解すると、2021年4-6月期以降、物価要因(家計消費デフレーターの上昇)が消費の下押し要因となり、2022年度入り後は押し下げ幅が拡大しているが、貯蓄率低下による押し上げ効果がそれを上回り、消費の底堅さをもたらしている[図表2]。先行きについても、新型コロナウイルスの感染症の拡大時に行動制限を課すことがなければ、貯蓄率が平常時に近い水準に戻ることによって消費の回復基調は維持される可能性が高い。
4―実質GDP成長率の見通し
2022年7-9月期は2四半期ぶりのマイナス成長となったが、10-12月期は海外経済の低迷を受けて輸出が減少に転じる一方、全国旅行支援による押し上げ効果もあり民間消費が高めの伸びとなること、高水準の企業収益を背景に設備投資が堅調を維持することなどから、前期比年率2.4%のプラス成長となることが予想される。しかし、2023年1-3月期は、欧米ともにマイナス成長となる中で、輸出の減少幅が拡大すること、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて民間消費が再び停滞することから、前期比年率▲0.4%と小幅なマイナス成長になるだろう。
2023年度も輸出が景気の牽引役となることは期待できないものの、特別な行動制限がなければ、高水準の家計貯蓄や企業収益を背景とした民間消費、設備投資の増加を主因として、プラス成長が続くことが予想される。
現時点では、米国、ユーロ圏の景気後退は軽微にとどまり、日本は景気回復基調が維持されることをメインシナリオとしている。しかし、米国、ユーロ圏の景気後退が深刻化した場合は、日本も景気後退が避けられなくなるだろう。ゼロコロナ政策継続による中国経済の下振れ、冬場の電力不足による経済活動の制限、新型コロナウイルス感染拡大時の政策対応の不確実性、なども景気の下振れリスクとして挙げられる。
実質GDP成長率は、2022年度が1.4%、2023年度が1.0%、2024年度が1.6%と予想する[図表3]。2023年度は民間消費、設備投資などの国内需要は底堅く推移するものの、海外経済の減速を背景に輸出が減少に転じることを主因として成長率は低下する。2024年度は海外経済の持ち直しを受けて輸出が増加に転じることから、成長率は高まるだろう。
2023年度も輸出が景気の牽引役となることは期待できないものの、特別な行動制限がなければ、高水準の家計貯蓄や企業収益を背景とした民間消費、設備投資の増加を主因として、プラス成長が続くことが予想される。
現時点では、米国、ユーロ圏の景気後退は軽微にとどまり、日本は景気回復基調が維持されることをメインシナリオとしている。しかし、米国、ユーロ圏の景気後退が深刻化した場合は、日本も景気後退が避けられなくなるだろう。ゼロコロナ政策継続による中国経済の下振れ、冬場の電力不足による経済活動の制限、新型コロナウイルス感染拡大時の政策対応の不確実性、なども景気の下振れリスクとして挙げられる。
実質GDP成長率は、2022年度が1.4%、2023年度が1.0%、2024年度が1.6%と予想する[図表3]。2023年度は民間消費、設備投資などの国内需要は底堅く推移するものの、海外経済の減速を背景に輸出が減少に転じることを主因として成長率は低下する。2024年度は海外経済の持ち直しを受けて輸出が増加に転じることから、成長率は高まるだろう。
5―消費者物価の見通し
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、エネルギーや食料の価格上昇を主因として、2022年10月に前年比3.6%となり、1982年2月以来、40年8ヵ月ぶりの高い伸びとなった。
食料を中心に原材料価格の上昇を価格転嫁する動きはしばらく続くものの、円安、原油高の一巡を受けて、2023年度入り後には財価格の上昇ペースは鈍化することが予想される。一方、足もとではほぼゼロ%の伸びとなっているサービス価格は、賃上げ率の高まりを受けて、緩やかに上昇するだろう。
今後の物価動向を大きく左右するのは、物価高対策によるエネルギー価格の大幅な変動だ。エネルギー価格は2022年1月以降、燃料油価格激変緩和措置によってガソリン、灯油価格が抑制されてきたが、2023年1月以降は電気代、ガス代の抑制が加わることにより、物価高対策によるエネルギー価格の抑制効果は大きく拡大する。
当研究所の試算によれば、物価高対策に伴うエネルギー価格の抑制によるコアCPI上昇率の押し下げ効果は2022年7-9月期の▲0.7%程度、10-12月期の▲0.6%程度から、2023年1-3月期には▲1.5%程度まで急拡大する。
2022年10-12月期のコアCPI上昇率は3.8%と予想しているが、物価高対策がなければ4%台となる。2023年1-3月期は物価高対策による押し下げ効果を主因としてコアCPI上昇率は2.7%と大きく低下する可能性が高い。
物価高対策による押し下げ効果は2023年4-6月期以降、徐々に縮小し、2024年1-3月期以降はその反動でエネルギー価格の前年比は押し上げられることになる。物価高対策によるコアCPI上昇率への影響を年度ベースでみると、2022年度が▲0.8%、2023年度が▲0.4%、2024年度が+0.3%となる。物価高対策は補助を縮小しながらも2024年度末まで継続することを想定しているが、物価高対策によって物価の基調が見極めにくくなることには注意が必要だ。
コアCPI上昇率は、2022年度が前年比2.9%、2023年度が同1.9%、2024年度が1.1%と予想する[図表4]。
食料を中心に原材料価格の上昇を価格転嫁する動きはしばらく続くものの、円安、原油高の一巡を受けて、2023年度入り後には財価格の上昇ペースは鈍化することが予想される。一方、足もとではほぼゼロ%の伸びとなっているサービス価格は、賃上げ率の高まりを受けて、緩やかに上昇するだろう。
今後の物価動向を大きく左右するのは、物価高対策によるエネルギー価格の大幅な変動だ。エネルギー価格は2022年1月以降、燃料油価格激変緩和措置によってガソリン、灯油価格が抑制されてきたが、2023年1月以降は電気代、ガス代の抑制が加わることにより、物価高対策によるエネルギー価格の抑制効果は大きく拡大する。
当研究所の試算によれば、物価高対策に伴うエネルギー価格の抑制によるコアCPI上昇率の押し下げ効果は2022年7-9月期の▲0.7%程度、10-12月期の▲0.6%程度から、2023年1-3月期には▲1.5%程度まで急拡大する。
2022年10-12月期のコアCPI上昇率は3.8%と予想しているが、物価高対策がなければ4%台となる。2023年1-3月期は物価高対策による押し下げ効果を主因としてコアCPI上昇率は2.7%と大きく低下する可能性が高い。
物価高対策による押し下げ効果は2023年4-6月期以降、徐々に縮小し、2024年1-3月期以降はその反動でエネルギー価格の前年比は押し上げられることになる。物価高対策によるコアCPI上昇率への影響を年度ベースでみると、2022年度が▲0.8%、2023年度が▲0.4%、2024年度が+0.3%となる。物価高対策は補助を縮小しながらも2024年度末まで継続することを想定しているが、物価高対策によって物価の基調が見極めにくくなることには注意が必要だ。
コアCPI上昇率は、2022年度が前年比2.9%、2023年度が同1.9%、2024年度が1.1%と予想する[図表4]。
(2023年01月11日「基礎研マンスリー」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
斎藤 太郎のレポート
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