2022年12月28日

鉱工業生産22年11月-生産は3ヵ月連続の低下、先行きも弱い動きが続く見通し

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.生産は3ヵ月連続の低下

鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 経済産業省が12月28日に公表した鉱工業指数によると、22年11月の鉱工業生産指数は前月比▲0.1%(10月:同▲3.2%)と3ヵ月連続で低下し、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲0.3%、当社予想は同▲0.7%)通りの結果となった。出荷指数は前月比▲0.5%と3ヵ月連続の低下、在庫指数は前月比0.3%と2ヵ月ぶりの上昇となった。

11月の生産を業種別に見ると、化学(除く無機・有機化学・医薬品)は前月比5.7%の高い伸びとなったが、汎用・業務用機械(前月比▲7.9%)、生産用機械(同▲5.7%)が大きく落ち込んだほか、半導体不足などの供給制約の影響で不安定な動きが続く自動車が前月比▲0.8%(10月:同5.6%)と2ヵ月ぶりに低下した。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は22年7-9月期の前期比13.1%の後、10月が前月比▲4.2%、11月が同▲3.5%となった。一方、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は22年7-9月期の前期比▲2.5%の後、10月が前月比0.2%、11月が同▲0.2%となった。
財別の出荷動向 22年10、11月の平均を7-9月期と比較すると、資本財(除く輸送機械)は▲6.9%、建設財は▲1.8%低い水準となっている。

GDP統計の設備投資は、22年4-6月期の前期比2.0%に続き、7-9月期も同1.5%と高めの伸びとなった。高水準の企業収益を背景に設備投資は持ち直しの動きが続いているが、鉱工業指数の出荷動向を踏まえると、10-12月期は伸びが大きく低下する可能性がある。

消費財出荷指数は22年7-9月期の前期比4.9%の後、10月が前月比0.1%、11月が同1.0%となった。11月は耐久消費財が前月比6.9%、非耐久消費財が前月比1.0%となった。

22年7-9月期のGDP統計の民間消費は、物価高や新型コロナウイルスの感染拡大という逆風を受けながらも、特別な行動制限がなかったことから、前期比0.1%の増加となった。10-12月期の民間消費は全国旅行支援による押し上げ効果もあり、伸びを高めることが予想される。

2.海外経済減速の影響で弱い動きが続く見通し

製造工業生産予測指数は、22年12月が前月比2.8%、23年1月が同▲0.6%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(11月)、予測修正率(12月)はそれぞれ▲1.7%、▲1.3%であった。

予測指数を業種別にみると、輸送機械は12月が前月比0.1%、23年1月が同▲1.6%と弱めの計画となっており、依然として部品不足などの供給制約が解消されていないことを示している。

一方、世界的な半導体関連需要の低迷を受けて弱い動きが続いている電子部品・デバイスは、11月の実現率が3.9%、12月の予測修正率が13.3%と上振れし、12月の計画が前月比7.4%(1月は同▲2.4%)の高い伸びとなるなど、持ち直しの兆しが見られる。出荷・在庫バランスが最悪期を脱していることも明るい材料といえる。
輸送機械の生産、在庫動向/電子部品・デバイスの出荷・在庫バランス
22年11月の予測指数を12月の予測指数で先延ばしすると、22年10-12月期の生産は前期比▲2.4%となり、2四半期ぶりの減産となることが確実となった。

個人消費を中心に国内需要が底堅さを維持していることが下支えとなるものの、欧米を中心とした海外経済の悪化を背景に輸出が低迷する可能性が高いこと、供給制約が完全に解消されるまでには時間を要することなどから、生産は当面弱い動きが続くことが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2022年12月28日「経済・金融フラッシュ」)

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