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- さらに進行するアルコール離れ-若者で増える、あえて飲まない「ソバ―キュリアス」
2022年12月07日
コロナ禍3年目の忘年会シーズンがやってきた。今年は久しぶりに、という話も増えているのではないだろうか。
ところで、「ソバーキュリアス」という言葉をご存じだろうか。自分の身体や心の健康を考えて、あえてアルコールを飲まない、飲むとしても少しだけ楽しむライフスタイルのことで、数年前から欧米の若者を中心に広がっている。
日本でも「若者のアルコール離れ」が言われて久しい。日本人の飲酒習慣率を20年ほど前と比べると、確かに20・30代の男女で低下しているが、男性では全ての年代で低下している[図表1]。
中高年男性でもアルコール離れが進んだ背景には、健康志向の高まりや景気低迷による会合の減少などがあるのだろう。
ところで、「ソバーキュリアス」という言葉をご存じだろうか。自分の身体や心の健康を考えて、あえてアルコールを飲まない、飲むとしても少しだけ楽しむライフスタイルのことで、数年前から欧米の若者を中心に広がっている。
日本でも「若者のアルコール離れ」が言われて久しい。日本人の飲酒習慣率を20年ほど前と比べると、確かに20・30代の男女で低下しているが、男性では全ての年代で低下している[図表1]。
中高年男性でもアルコール離れが進んだ背景には、健康志向の高まりや景気低迷による会合の減少などがあるのだろう。
一方で興味深いのは、40・50代の女性の飲酒習慣率が20代の男性を、やや上回っていることだ。今の40・50代は働く女性が増えてきた世代だ。男性と同じように会食の機会を持ち、アルコールを楽しむ女性が増えているのだろう。
とはいえ、女性の飲酒習慣率は、最も高い50歳代でも2割に満たない。また、若い世代では女性でも男性と同様に低下傾向を示しており、あえて飲まないソバ―キュリアスの存在感は増している。
飲酒の頻度のデータを見ると、アルコールを飲めないわけではないが「ほとんど飲まない」・「やめた」との回答は若いほど多く、20代では男女とも約27%を占める[図表2]。さらに、これに「飲まない(飲めない)」との回答をあわせると、20代の男性の約半数、女性の約6割は日頃、アルコールから離れた生活を送っていることになる。
とはいえ、女性の飲酒習慣率は、最も高い50歳代でも2割に満たない。また、若い世代では女性でも男性と同様に低下傾向を示しており、あえて飲まないソバ―キュリアスの存在感は増している。
飲酒の頻度のデータを見ると、アルコールを飲めないわけではないが「ほとんど飲まない」・「やめた」との回答は若いほど多く、20代では男女とも約27%を占める[図表2]。さらに、これに「飲まない(飲めない)」との回答をあわせると、20代の男性の約半数、女性の約6割は日頃、アルコールから離れた生活を送っていることになる。
若い世代ほどアルコール離れをしている理由としては、リスク回避志向の高まりや娯楽の多様化などがあげられる。
筆者は日頃、世代による消費行動や価値観の違いを分析しているのだが、景気低迷の中で生まれ育った世代は、経済不安から「失敗したくない」との気持ちが強い印象がある。また、デジタルネイティブ世代であることも、この傾向に拍車をかけているのだろう。何につけても、ネットやSNS上に流れる大量の情報から、より適切な方法を選びながら成長してきた。コスパやタイパ(タイムパフォーマンス)を重視する傾向は強い。
もはや若者にとって飲酒は効率の悪い娯楽でしかないのかもしれない。酔って楽しい気分になる、コミュニケーションしやすくなるといったメリットに対して、健康への悪影響、時間やお金などのコスト、酔うことによる失敗行動のリスクといったデメリットが上回ると判断されているのだろう。さらに、いつも友人とSNSでつながっているために、わざわざ会って飲んだりしなくても、コミュニケーションが取れている環境もある。
このような中、最近では「微アルコール」が注目を集めている。微アルコールとは、アルコール度数が1%未満で税法上は清涼飲料水と同じ扱いになる飲料だ。これまでのノンアルコールは、休肝日や運転前、妊娠中など、日頃、飲酒をする人の飲めない時の代用品として想定され、パッケージに「アルコール0.00%」と表示するなど、アルコールが徹底的に排除されていることに価値があった。
一方で微アルコールは、アルコールが微量含まれていることに価値があり、「酔わない程度に楽しみたい」というソバ―キュリアスや「体質的に弱いけれどアルコール気分を楽しみたい」という、これまで手つかずであった消費者層に評判が良いようだ。
また、微アルコールは、コロナ禍で浸透したテレワークとも相性が良いだろう。残業タイムの気分転換にはうってつけだ。
このような世の流れを見て、昔ながらの酒好きは寂しく感じるかもしれない。しかし、アルコールに強い人も弱い人も、酔って楽しみたい人も酔わずに楽しみたい人も、それぞれが好きな形でアルコールとつき合える、ダイバーシティ時代が到来したと考えてはどうだろうか。
多様な価値観を尊重することは、サステナビリティ、地球環境や社会の持続可能性を高めていくという近年の流れにも沿うものだ。
筆者は日頃、世代による消費行動や価値観の違いを分析しているのだが、景気低迷の中で生まれ育った世代は、経済不安から「失敗したくない」との気持ちが強い印象がある。また、デジタルネイティブ世代であることも、この傾向に拍車をかけているのだろう。何につけても、ネットやSNS上に流れる大量の情報から、より適切な方法を選びながら成長してきた。コスパやタイパ(タイムパフォーマンス)を重視する傾向は強い。
もはや若者にとって飲酒は効率の悪い娯楽でしかないのかもしれない。酔って楽しい気分になる、コミュニケーションしやすくなるといったメリットに対して、健康への悪影響、時間やお金などのコスト、酔うことによる失敗行動のリスクといったデメリットが上回ると判断されているのだろう。さらに、いつも友人とSNSでつながっているために、わざわざ会って飲んだりしなくても、コミュニケーションが取れている環境もある。
このような中、最近では「微アルコール」が注目を集めている。微アルコールとは、アルコール度数が1%未満で税法上は清涼飲料水と同じ扱いになる飲料だ。これまでのノンアルコールは、休肝日や運転前、妊娠中など、日頃、飲酒をする人の飲めない時の代用品として想定され、パッケージに「アルコール0.00%」と表示するなど、アルコールが徹底的に排除されていることに価値があった。
一方で微アルコールは、アルコールが微量含まれていることに価値があり、「酔わない程度に楽しみたい」というソバ―キュリアスや「体質的に弱いけれどアルコール気分を楽しみたい」という、これまで手つかずであった消費者層に評判が良いようだ。
また、微アルコールは、コロナ禍で浸透したテレワークとも相性が良いだろう。残業タイムの気分転換にはうってつけだ。
このような世の流れを見て、昔ながらの酒好きは寂しく感じるかもしれない。しかし、アルコールに強い人も弱い人も、酔って楽しみたい人も酔わずに楽しみたい人も、それぞれが好きな形でアルコールとつき合える、ダイバーシティ時代が到来したと考えてはどうだろうか。
多様な価値観を尊重することは、サステナビリティ、地球環境や社会の持続可能性を高めていくという近年の流れにも沿うものだ。
(2022年12月07日「基礎研マンスリー」)
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経歴
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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