2022年02月16日

英国雇用関連統計(22年1月)-年末の休業者増は限定的にとどまる

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:失業率は横ばいで推移

2月15日、英国国家統計局(ONS)は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【22年1月】
失業保険申請件数1前月(187.28万件)から3.19万件減の184.09万件となった(図表1)。
申請件数の雇用者数に対する割合は4.6%となり、前月(同4.6%)と同じだった。
給与所得者数2前月(2938.2万人)から10.8万人増の2848.9万人となった。
増減数は前月(+13.1万人)から減少、市場予想3(+13.3万人)を下回った。

【12月(10-12月の3か月平均)】
失業率は4.1%で前月(4.1%)と同じ、市場予想(4.1%)とも一致した(図表1)。
就業者は3248.5万人で3か月前の3252.3万人から3.8万人の減少となった。
増減数は前月(+6.0万人)から減少に転じたが、市場予想(▲5.8万人)を上回った。
週平均賃金は、前年同期比4.3%で前月(4.2%)から加速、市場予想(3.8%)を上回った(図表2)。

(図表1)英国の失業保険申請件数、失業率/(図表2)賃金・労働時間の推移
 
1 求職者手当(JSA:Jobseekerʼs Allowance)、国民保険給付(National Insurance credits)を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット(UC)を受給している者の推計数の合算。なお、UCはJSAより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ONSは失業保険等申請件数について公式統計とはしておらず実験統計という位置付けで公表している。ただし、公表日の前月のデータを入手できるため、速報性の高さという利点がある。
2 歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した統計。直近データは利用可能な情報の85%ほどを集計して算出。
3 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:休業者の増加は限定的にとどまる

まず、1月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、求人数は21年11-22年1月の平均で129.8万件となり7か月連続で調査開始後の最高記録を更新した(図表4)。また、1月単月でも122.2万件と増加し、21年10月(129.2万件)をピークに迫った4

給与所得者データでは、給与所得者数の増加が続いている(図表4)。産業別には、最近増加傾向にある事務サービスや居住・飲食業が堅調だった。一方、12月に大きく増加した製造業や建設業は1月には減少に転じている。月あたり給与額(中央値)については前年同月比6.3%で12月(5.9%)から伸び率を加速させている(図表4・5)。
(図表3)求人数の変化(要因分解)/(図表4)給与取得者データの推移
次に12月までのデータ(労働力調査)を確認すると、10-12月期の失業率は前月から4.1%で横ばいとなった(前掲図表1)。前月比で見て失業者がやや減少、就業者がやや増加、非労働力人口がやや減少という形だった。労働参加率も63.1%と前月から横ばいだった。コロナ禍前(19年12月-20年2月)と比較して、失業者が1.0万人多く、就業者は58.8万人少なく、非労働力人口が68.8万人多い状況となっている。なお、就業者の伸び悩みは自営業者の減少が主因となっている。

労働時間は31.6時間(前年同期差+1.5時間)、フルタイム労働者で36.2時間(同+1.4時間)と横ばい圏でコロナ禍前の水準まではやや距離がある状態になっている(前掲図表2)。

10-12月の名目平均賃金は前年同期比4.3%と高い伸び率が続いている。一方、高インフレ率の影響で実質値は急減速しており、前年比では▲0.1%と20年8月以来のマイナスの伸び率となった。なお、コロナ禍の影響を除いた2年前比で見ると実質の伸び率も高めと言える(図表5)。
(図表5)賃金・給与所得の推移〔2年前比〕/(図表6)英国の雇用統計(週次データ)
最後に週次データを確認すると(図表6)、休業者が11月以降にやや増加したが、増加傾向はとまったと見られる。9月末で終了した政府の雇用維持政策による休業者への影響は限定的と考えられる。
 
4 単月データは未季節調整値であり、例年10月は求人が多い季節性がある。なお、3か月平均のデータは季節調整値。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年02月16日「経済・金融フラッシュ」)

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