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「避難指示」に一本化、「避難勧告」は廃止-災害対策基本法の改正~災害・防災、ときどき保険(15)
                                                保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩
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1―はじめに
2―最新版の避難指示と警報などの対応
1 避難情報に関するガイドライン(令和3年5月 内閣府(防災担当))
http://www.bousai.go.jp/oukyu/hinanjouhou/r3_hinanjouhou_guideline/pdf/hinan_guideline.pdf
また以下のような自然現象については、上記の警戒レベルなどは用いられない。
津波:
災害の切迫度が段階的に上がる災害ではないため、警戒レベルは用いられないが、避難指示のみは発表される。
暴風:
警戒レベルは用いられないが、避難指示は発令される場合はある。
竜巻・雷・急な豪雨:
短時間で局所的に発生することが特徴であり、発生する場所や時刻を予測し避難を呼びかけることが困難なため、警戒レベルの対象になっていない。
噴火:
火山ごとに、噴火警戒レベルという別の指標で公表される。
地震:
(予知できる現象ではないこともあり、今回の避難情報とは別物)
3|その他の改正
上記の他、今回の災害対策基本法は以下のような改正も含まれている。
(1) 個別避難計画(仮称)の作成(市長村)
これまでにも「避難行動要支援者名簿」の作成が2013年に作成義務化されており、ほとんどの市町村におきて作成されている。しかし、いまだ災害により多くの高齢者が被害を受けているという課題がある。そうした避難行動要支援者の円滑かつ迅速な避難を図るため、個別の避難計画についても市町村に作成を努力義務化することとなった。
(2) 国の災害対策本部を設置できるタイミングを早期化
災害発生の「おそれがある」、という早い段階で、国は災害対策本部を設置できることとし、市町村は他の市町村への避難者の受入れ要請や交通機関への運送要請ができることととした。
3―おわりに(私見も含めて)
わかりにくい原因は、以下のようなものであろうか。
〇用語が難しい(漢字が多く長い?)。
避難情報は「空振り」に終わることもあろうから、あとで責任の所在を問われた際に用語の定義や発令基準を明確にしておくことは重要だろう。しかし高齢者・子どもにも理解すべき情報は、何をおいても「あぶないから、はやくにげろ!」の一点であろう。そういえば「指示」と「勧告」はどちらがより緊迫感があるかははっきりしなかったような気がするし、その点では今回の改正はいいとしても、すべての住民への発表としてはまだ用語が難しいとも思える。
〇災害の種類によって避難情報の発表の仕方が異なるなど、情報が多すぎること
例えば先日も、「線状降水帯」の情報提供が始まったばかりである。今後も情報を受け取る側からの要望はあれもこれもということになるだろうが、かえって混乱することもあろう。自然現象や災害の種類によって状況は異なるので無理もないとはいえ、その整理が課題であるとも認識されているので、今後も変更されていくだろう。
〇国、市町村、気象庁の役割分担がわかりにくいこと
これは、国全体の体制としてしっかり整備され役割がはっきりしていれば、受け取る側にしてみれば、どうでもいいかもしれない。誰が言ってもいいから「あぶないから、はやくにげろ!」である。
この改正が施行された5月20日以降、実際に大雨が何度かあって、こうした避難情報がニュース等でとりあげられていたが、これで以前より迅速に避難できたのだろうかと気になる。今後も改善されていくに違いない。今後も変更があれば、取り上げていくことにしたい。
(2021年06月01日「基礎研レター」)
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                                        03-3512-1833
- 【職歴】
1987年 日本生命保険相互会社入社
・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
2012年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・日本証券アナリスト協会 検定会員 
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