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年代別に見たコロナ禍の行動・意識の特徴~不安・心理編~偏見への不安は高年齢で強い傾向。従来の消費行動への欲求は全年代に広がる~

生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子
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3――消費行動の変化の状況
まず、買い物手段については、「デパートやショッピングモール」や「スーパー」、「コンビニエンスストア」、「ドラッグストア」などリアル店舗の利用が減少している。特に、高年齢ほど減少割合が大きい。これに対し、「キャッシュレス決済」や「ネットショッピング」などデジタル手段の利用が増加しており、リアルな買い物手段からデジタル手段への一部行動変容が見られる。ただし、9月時点の調査結果を6月時点と比べると、リアル店舗の利用は、業態によって温度差があるものの、やや回復していた。
次に、食事サービスの利用については、「飲食店の店内での飲食」が大きく減少している。これに対し、「テイクアウトサービス」や「デリバリーサービス」などの中食手段が増加している。特に、20歳代、30歳代を中心に、若い世代ほど中食の増加割合が強く、外食から中食へと一部行動変容が見られる。ただし、9月時点の調査結果を6月時点と比べると、飲食店の店内での飲食は若干、回復している。
次に、移動手段については、「電車やバス」「タクシー」といった公共交通機関と飛行機の利用が、60歳代を筆頭に、大きく減少している。これに対し、「自家用車」や「自転車」などパーソナルな移動手段は増加しており、一部で、公共交通機関からパーソナルな移動手段への行動変容がみられる。ただし、9月時点の調査結果を、6月時点の調査結果と比べると、「電車やバス」「タクシー」「飛行機」の利用者層はやや回復している。また、移動については、買い物、食事など様々なジャンルにおいて、移動を伴わないデジタル行動が増えていることが、移動量の減少につながっていると考えられる。
5 ニッセイ基礎研究所「2020年度特別調査『第2回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査』 (2020年10月)、久我尚子「年代別に見たコロナ禍の行動・意識の特徴~食生活編」(ニッセイ基礎研究所、同年12月)、同「年代別に見たコロナ禍の行動・意識の特徴~買い物手段編」(同)、坊美生子「年代別に見たコロナ禍の行動・意識の特徴~移動手段編」(同)。
4――消費行動への制約が続くことに対する不安~行動変容は定着するのか~
次に、アフターコロナの消費行動を予測するため、2でみてきた様々な消費行動の制約が続くことに対し、消費者が不安を抱えているか否かについてみていきたい。
まず、「感染リスクから、店舗での買い物がしにくくなる」ことへの不安は、全体平均では「不安」48.6%、「どちらともいえない」27.1%、「不安ではない」22.4%で、「不安」が「不安ではない」を26.2ポイント上回った(図表6)。買い物手段のデジタルシフトが進んでいる一方で、店舗に足を運んで買い物を楽しみたいという心理を抱いている人も多いことが分かる。年代別でも大きな違いは見られず、このような心理がいずれの世代でも見られることが分かった。
年代別では、60歳代で「不安」が全体を5.7ポイント上回る34.8%、「不安ではない」が全体を5.5ポイント下回る13.5%となるなど、飛行機を利用したいという心理が他の年代に比べて強いことが分かった。60歳代の職業内訳を見ると、「無職」と「専業主婦・主夫」を合計した割合が大きいことから、定年退職した世帯が、飛行機を利用した旅行への欲求を持っていると考えられる6。
6 本調査では、「無職」と「専業主婦・主夫」の合計が全体に占める割合は、20歳代18.7%、30歳代20.6%、40歳代21.8%、50歳代23.1%、60歳代52.7%だった。
これまで見てきたように、新型コロナの影響によって、従来型のリアルな消費行動への制約や、デジタル行動等による代替が続くことに対しては、いずれの年代でも不安が広がっていることが分かった。逆に言えば、デジタルネイティブと言われる20歳代を含め、あらゆる年代において、デジタル行動に満足せず、リアルな消費行動への欲求が大きいことを示している。
従って、「行動変容」とみられてきた変化についても、アフターコロナにおいては、一部、元の手段へ回帰することが予想される。2でみたように、9月時点の調査結果を6月時点と比べると、買い物、飲食、移動のいずれについても、元の行動手段がやや回復していることが、これを裏付けている。
5――おわりに
一方で、消費行動をデジタル手段などで置き換える「行動変容」については、筆者は定着すると考えていたが、調査結果を見ると、そうは言い切れない。消費者が新たな生活様式に満足している訳ではなく、同じ状況が続くことに不安を抱いていることが分かったからである。デジタル手段は便利で効率的ではあるが、寧ろ、20歳代を含めた全年代において、リアルな消費行動への欲求が広がっていると言える。例えば買い物であれば、実際に店舗に足を運び、多くの商品を目で見て確かめたり、従業員と会話したりしてモノを買うことへの意欲である。これらは、買い物の目的が「モノの調達」だけではなく、「楽しみ」であることを示している。アフターコロナでは、元の消費行動への揺り戻しが来るだろう。
また、外食や交通手段を利用した移動、旅行等への制約が続くことへの不安も、移動を伴う消費行動への意欲が強いことを示している。移動には、楽しみの要素を含む「お出かけ」の側面がある。特に、定年を迎えた60歳代ではこれらの意欲が旺盛である。感染不安が強い高年齢の消費者に、このような大きなニーズがあることから、アフターコロナでは、安心してお出かけできる移動サービスや旅行プランへのニーズが高まるだろう。
(2021年01月12日「基礎研レター」)

03-3512-1821
- 【職歴】
2002年 読売新聞大阪本社入社
2017年 ニッセイ基礎研究所入社
【委員活動】
2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
2023年度 日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員
坊 美生子のレポート
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